■コロナ解雇は可能なのか?
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、企業の経営にも大きな打撃が生じています。
営業自粛や外出自粛の影響をはじめ、国内外の移動が厳しく制限されることで、売上が9割減、まったくなくなるといった業種も出てきました。
売上が上がらなくても事務所や店舗を維持し、従業員の雇用を維持し続けるのは大変なことです。
倒産する企業も増える中、倒産を回避するために従業員の解雇をすることは可能なのでしょうか。
非常事態ゆえに本来のルールに沿わない方法でのリストラができるかが問題となります。
■コロナだからといって特別扱いはされない
国の見解では新型コロナウイルスによって経営が悪化したから、従業員をリストラする正当な理由にはならないとしています。
政府では、社会的に見て雇用の維持は極めて重要であり、感染拡大による需要の急減で経営が悪化しても、事業主は雇用継続のための努力を行うことが求められ、政府が助成金などを通じて支援していくとの方針を打ち出しています。
司法的な観点からは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇は無効というのが原則です。
現在のところ、新型コロナウイルスだからと従来の見解が緩和されてはいません。
そのため、業績悪化によるリストラに客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることが必要です。
また、政府としては、やむを得ずリストラを断行せざるを得ない場合には、原則として少なくとも30日前に雇い止めの予告をするか、もしくは、解雇予告手当として、30日分以上の平均賃金を支払わなくてはならないとの見解を示しています。
■雇用維持のために受けられる支援
いかに新型コロナウイルスという、想定外の事態であっても、簡単にリストラが認められるものではありません。
現実問題として、リストラを行おうとした企業において、従業員は反発し、労働基準監督署に訴えるケースや裁判を起こそうとする動きも発生しました。
資金が底をつき倒産しかないといった場合は別ですが、基本的にはまずは雇用を維持できないかを検討する必要があります。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、事業主の支援としてどのようなものがあるか見ていきましょう。
■雇用を維持しながら労働者を休業させた場合
客が来ない、開店休業状態などの場合に、そのまま従業員を働かせ続ければ、仕事もなく、売上もないのに給料を支払わなくてはなりません。
これでは、いっそう経営が悪化してしまいます。
そこで、従業員を休業させることが考えられます。
この場合、事業主は休業手当を支給しなければなりません。
原則として、休業前3ヶ月の平均賃金×60%以上の支払いが必要です。
事業主が受けられる支援として、雇用調整助成金が用意されています。
令和2年4月8日以降は特例措置が施されており、リストラをせずに雇用を維持する中小企業のうち、都道府県知事が行う要請に伴い休業し、営業時間の短縮を求められた施設を運営する事業主が、要請に協力して休業をしている場合には、休業手当の最大100%を雇用調整助成金として助成してもらうことができます。
また、休業要請を受けておらず、自主的に休業をしている場合でも、対象労働者1人1日あたり8,330円を上限に、最大94%を助成する特例措置が講じられている点に着目することが大切です。
助成額は前年度に雇用していたすべての雇用保険被保険者の賃金総額を基に算定されますので、直近で仕事がなくなり、賃金額の減少していたとしても、十分な休業手当を支払うことが可能です。
いきなりリストラを断行するのではなく、まずは、従業員の休業と雇用調整助成金の利用でしのげないかを検討しましょう。
■資金繰りの支援
事業主が売上が減少する中で、従業員への休業手当を支払うために十分な手元資金を得ることができるよう、中小・小規模事業者等への資金繰り対策も実施されています。
金融機関から最大3,000万円まで融資が受けられ、実質的に無利子・無担保で、かつ、元本返済は最大5年据置きとなるので、当面をしのぐために活用しやすいです。
また、売上が前年同月比50%以上減少するなど、大幅に減少した中小・小規模事業者等に対しては事業の継続を下支えし、事業を継続、復活させていくための資金として、最大200万円の持続化給付金の給付も受けることが可能です。
また、政府は金融機関に既存債務の条件変更を働きかけていますので、すでに背負っている負債の返済が苦しく、従業員の雇用が維持できないほど経営状況が悪化している場合には、まずは金融機関への相談も行いましょう。
■それでも難しい場合
各種支援を受けてもなお、従業員の雇用維持が難しい場合には、労務的な観点から解雇予告手当など資金的な手当てを施すとともに、従業員が次の仕事を得ることができるよう、支援することが大切です。
取引先などに就職できないかをあたる、ハローワークなどと連携するなどして、仕事が得られるよう情報提供などを行い、従業員に納得してもらうことが求められます。