■残業代の未払い問題
近年、残業代の未払いが問題となっています。
大手のコンビニエンスストアでも、アルバイトの残業代の一部が適切に支払われていなかったことでニュースとなりました。
残業代の計算はややこしいので、うっかりミスしてしまうこともあるかもしれません。
とはいえ、従業員へ支払うべき残業代をきちんと払っていないと、従業員へ負担をかけてしまうだけではありません。
企業のイメージを大きく損ねることにもなってしまい、売り上げなどにも大きな影響が出てしまう場合もあります。
■現在は残業代請求の時効は2年間だが、今後は延長になる可能性がある
残業代の未払いがあった場合には、後からでも請求することができます。
現在の労働基準法115条では、2年以内であれば、未払いの残業代を請求できると定められているからです。
この期間内であれば、その会社をすでに辞めてしまった場合であっても、未払いの残業代を請求することは可能です。
この時効をいつから計算するのについては、相手に請求できる状態になったときからとなります。
つまり、給与の支払日から2年間、従業員は企業に対して、未払いの残業代を請求することができるのです。
例えば、2018年の4月20日が給料日だった場合には、未払い残業代の請求の時効は2020年の4月20日までとなります。
もしも、2020年の5月20日に残業代の未払いに気が付いたとしても、すでに時効となってしまっているので、請求することはできません。
■2020年の法改正によって残業代未払いの請求期間が延長される?
しかし、2020年に法律が見直されることになったため、残業代未払いの請求期間が2年間よりも長くなる可能性が出てきました。
当初は、5年間になるのではといわれていましたが、その場合、企業への負担が大きくなってしまうということで、まずは3年間となるようです。
その後、見直しを行った上で、最終的には5年間を目指していくとのことです。
■残業代の未払いの請求期間が延長になると従業員にはメリットが大きい
法律の改正によって、残業代の未払いの請求期間が3年間や5年間に延長された場合には、従業員にとってはメリットが大きくなります。
例えば、2018年の4月20日分支払い給与の未払いの残業代に対する時効は、2020年に法律が改正されることで、2021年の4月20日まで請求できるようになるからです。
未払いの残業代の請求可能期間が長ければ長くなるほど、うっかり請求し忘れていた場合であっても、取り戻せる可能性は広がります。
■延長されると企業の負担が大きくなる
残業代の未払い請求期間の延長は、従業員にとってはメリットですが、企業側にとっては、大きな負担となってしまいます。
未払いの残業代の金額が多ければ多いほど、後から支払わなければならない金額も増えてしまいますので、多額の費用を工面しなくてはなりません。
また、未払いとなっていた残業代を計算するといった仕事も増えてしまいますので、労務や法務といった関連部署の負担も大きくなってしまうデメリットもあります。
■残業代の未払い問題は企業イメージも左右するのできちんと対応すべき
ですが、未払いの残業代は、本来であればきちんと従業員に支払うべきものですから、雇い入れた企業は責任を持ってきちんと対処しなくてはなりません。
先にも述べたように、残業代の未払い問題は、従業員に迷惑をかけるだけでなく、企業のイメージにも悪い影響を与えることになってしまいます。
近年は、インターネットの利用率が高くなったことで、長時間労働や残業代未払いといった問題が表面化しやすくなっています。
FacebookやTwitterなどSNSなどに投稿されてしまうと、あっという間に広まってしまうこともあります。
一度、ブラック企業だというイメージが付いてしまうと、求人も難しくなってしまい、優秀な人材が確保できなくなることにもなりかねません。
■残業代未払い防止のために企業ができることとは?
そのようなことにならないためにも、これからの企業は、労働管理をより一層徹底して行う姿勢が求められています。
未払いのトラブル防止のために、従業員の給料や残業代の計算を信頼できる業者に外注したり、自社内で残業代に関するチェック部門を設けたりなど、さまざまな対策を講じておくほうが良いかもしれません。
日本では、まだまだサービス残業が当たり前と考えている会社も少なくありません。
そのような考えでいると、残業代未払い問題が発生しやすくなってしまいます。
サービス残業の習慣をなくす努力も企業には求められます。
週に何度かのノー残業デーを取り入れるなど、残業を減らす努力をしている企業も増えてきました。
そもそも残業自体がなくなれば、未払いの問題も起こりませんし、従業員にとっても働きやすい環境となることでしょう。
残業に対して、どのように取り組んでいくのかも、これからの企業に求められている重要な課題といえます。