■企業が業務委託をする理由
少子化で人材不足の時代、業務の一部や多くをアウトソーシングする場合や海外の業者にダブルチェック業務を任せるなど業務委託するケースが増えています。
ルーティーンワークや専門性を要する仕事を外注することで、主要業務に集中できる、顧客対応などに時間が割けるとアウトソーシングを推進する企業も少なくありません。
人材の確保が難しい時代に、自社で採用コストをかけて人材を採用し、一人前になるまで教育するコストや時間をかけたにもかかわらず、すぐに離職してしまうかもしれないことを考えれば、アウトソーシングのほうが低コストという場合もあります。
アウトソーシング費用は一見高いように思えますが、自社で雇用して社会保険料やボーナスなどを払うよりは安いというのが理由です。
業務の縮小など様々な事情で人員削減をする場合にも、採用した正社員はすぐに切れないのに対し、アウトソーシングなら必要がなければ契約解除もでき、費用効率も良いのです。
■デメリットはないのか
人手不足問題の解決やコスト負担の軽減に役立ちながら、業務も効率化するとなれば、業務委託はメリットばかりのように思えます。
本当にデメリットはないのでしょうか。
業務委託において問題となりやすいでデメリットについて、見ていきましょう。
・情報漏洩や不正利用による損害や信頼喪失のリスク
近年、ニュースなどでも問題となっているケースが、アウトソーシング先での顧客情報や取引先情報、委託した企業の重要な情報などの流出です。
外注先の社員やアルバイトスタッフが故意に情報を転売するようなケースをはじめ、ハッキングなどで狙われて流出されるケースもあります。
外注先の社員が顧客のクレジットカードで高額な商品を購入することや資金横領をするリスクもあります。
クレジットカード情報の流出で顧客に損害を与えるケースをはじめ、実際の損害が出なくても、アウトソーシングを委託した企業が謝罪会見を開き、情報流出に伴う賠償や謝罪料、お詫びの品などを用意するケースは少なくありません。
企業として信頼を失うとともに、費用負担などの損害も発生します。
防ぐためにはセキュリティ体制の整った外注先を選ぶことが求められますが、大手企業や官公庁からも業務を請け負っていた業者でもセキュリティ体制が脆弱といった問題も発生しているので、アウトソーシング業者選びは大変難しい問題です。
・品質低下や顧客離れのリスク
これまで自社で担っていた業務を単純作業だからとか、同じようにできるだろうと任せても、必ずしもそうはいきません。
いかに優れたノウハウを持つ外注先だとしても、自社とすっかり同じやり方はできないのが一般的です。
より品質が向上する期待もあるものの、一方では長年の顧客や取引先から何かが違ってしまったと言われるケースも少なくありません。
特に食品製造などのケースでは味が変わった、硬さやふくらみ、風味が変わったと言われ、顧客離れを起こすケースもあります。
契約書のチェックや検品、梱包や配送などさまざまな外注が考えられますが、品質が維持できているか、顧客や取引先からクレームが入っていないかを、アウトソーシング後もしっかりと確認していく必要があります。
品質の低下があれば、指導を行うことや自社で再チェックを行う手間が生じるほか、別のアウトソーシング先を探し直すなどの手間や時間、コストが発生するデメリットも生じかねません。
・ノウハウ流出や人材が育たないリスク
アウトソーシングといっても、その業者のやり方に任せるのではなく、企業のやり方をマニュアル化し、指導して行ってもらうケースもあるでしょう。
これにより、自社で培ってきたノウハウや業務のやり方が外注先に伝わり、そこから他社からの委託業務に使用されることや広く伝わるリスクも発生します。
それは承知のうえで外注したとしても、これまでのように自社でノウハウを受け継ぐ人がいなくなり、人材が育たないリスクや外注先の仕事をチェックできる人材がいなくなるリスクも考えられるのです。
一方、アウトソーシング業者ではさまざまな企業のノウハウを享受でき、自社のスタッフのスキルアップやキャリア形成につながるメリットがあります。
仕事を任せたつもりが、主従が逆転し、アウトソーシング業者が競争力を高めて成長企業への道を突き進んでいくかもしれません。
■アウトソーシング業者の選び方は慎重に
情報漏洩や品質低下などのデメリットを避けるうえでは、アウトソーシング業者の選び方がとても重要になります。
セキュリティ体制や財務状態、どのような人材を雇い、どのような立場で、どう育成しているのか、過去の実績やトラブル事例など、細かくチェックしないとリスクを防げません。
もっとも、いかに事前調査して信頼できる業者を選んだとしても、思わぬトラブルや損失、信頼喪失のリスクもあり得ます。
万が一、トラブルや損害が発生したとき、どう対処するのか、外注先からの損害賠償の条項や違約金などの定め、トラブル時の解約条項など、企業法務部門がしっかりと精査して、業務委託契約の内容はしっかりと定めておくことが必要です。
それとあわせて、賠償責任保険に加入するなど万が一の補償も備えなくてはなりません。