■もし破産になっても再建型なら返済してもらえる可能性が高い
もし売掛金をまだ回収していないのに取引先が倒産してしまったら、自社とってもピンチを感じてしまうでしょう。
本来入ってくるはずのお金が入ってこないというのは、会社にとって大変な問題です。
倒産になってしまうと回収が難しい場合もありますが、もしかしたら可能な場合もあるかもしれませんので手を尽くしましょう。
会社をなくしてしまうのではなく、営業を続けながら再建をすることを再建型と言いますので、まだ経営を続けるため回収できる可能性が高いです。
会社更生や民事再生などがこれにあたりますが、今後取引をするのかなども視野に入れながら、まだ売掛金回収できていない分も少しずつ返済してもらえるように計画を立てていけます。
しかし破産や特別清算などで会社自体をおしまいにしてしまう場合は、今後支払停止する旨を伝えられる場合や連絡すら取れなくなってしまうケースもあるので注意しましょう。
清算型の場合は売掛金の時効というものもあり、原則5年となります。
速やかに回収対応しないとそのまま原則の5年が過ぎてしまい、何も回収できなかったという事態も考えられます。
■取引先での倒産がわかったらすること
急遽倒産したとわかったときには、まず今どのような状況なのかを確かめる必要が出てきます。
倒産の事実や会社更生なのか特別清算などの破産なのか、金額、代表者の所在、そのほかにも確認することがあります。
電話がつながらないことも考えられますので、その際は取引先に直接行って事実を確認しましょう。
とにかく早くどんな状況になっているのか、話を聞くことが重要です。
■状況がわかったら売掛金回収できそうな方法がないか探る
もし取引先に売掛金があったとしても買掛金も同時にある場合は、その債権と相殺ができますので、同じくらいの金額があれば会社にとって損は少ないかなくなります。
ただこの場合いつ対応しても良いのではなく、破産手続き中か民事再生などを選択している場合は債権届出期間中に行わなければいけません。
ただ相殺したいと伝えるだけでは無効になってしまうかもしれないので、法的に有効な文章を作らなければなりません。
通知を送る際には、こういった状況に詳しい専門家の話を聞いてから、法的にも有効な通知を送るようにしましょう。
了承を得ることができれば、商品の引き上げをすることも可能です。
事前に取り決めがあり商品代金を完済するまでは所有権を取引先には渡さないなどと文言で交わしていれば、それを理由に商品の引き上げもできます。
取り決めがなくても、代金を全額返してもらっていないということを理由に契約解除も可能です。
この場合も書面など証拠が大きいので、作成するようにしましょう。
■担保権の実行や差し押さえ、動産売買先取特権の活用という方法もある
事前に取引先の財産に対し抵当権などの担保権を設定していれば、競売などで売ったお金で相殺ができます。
ただ何もしないでできるわけではなく、昔取引したときに担保に入れたということを証明する書類や申立書を準備する必要があります。
すべての書類が揃ったら、裁判所に提出する流れです。
差し押さえに関してでも、事前に公正証書を作成し交わしていることが条件で可能になります。
そして文言にも、未回収の債権が発生したときには差し押さえを強制執行するという旨が書かれていないと、差し押さえが有効になりません。
ただ取引先が破産の法的な手続きを行ったときには、差し押さえが難しくなり効力自体がなくなってしまいます。
ほかの方法で、何とか売掛金回収の方法を考えなければいけません。
動産を取引先へ売却している場合、破産手続きなどによる影響の受けない動産売買先取特権を使うことができます。
売買した際に債権者が多数いる場合、優先的に売掛金回収が可能です。
このままでいけば売掛金回収が難しいであろうと感じた場合には、債権回収会社に債権譲渡するのも一つの手です。
買取額は少なくなってしまっても、債権をなくすことで見込みのない債権に対し無駄な時間をかける必要もなくなります。
■どんなに頑張っても売掛金回収が難しい場合もある
難しいとわかっている場合もいくつか対応方法があるので紹介します。
未回収の売掛金であっても残念ながら税金が発生してしまうのですが、この負担を売掛金放棄することで少なくできます。
権利を放棄する場合は、債権放棄通知書というものを作り知らせることが必要です。
税金について「あれ?」と思うことがあれば、自己判断せずに弁護士に相談しましょう。
売掛金回収できると思っていなかったものができなくなってしまうわけですから、自社の経営も苦しくなってしまうでしょう。
困難を感じたときには、取引企業倒産対応資金の活用もおすすめです。
使える条件に該当すれば融資が可能で、返済は必要ですが8年以内に返せれば問題ありません。
一時的に自社としても難を乗り越えたいときには、有効な手段です。
■いざというときには事前対策と弁護士に相談を
今はそこまで取引先が危ない雰囲気ではなくても、もしかしたらというのはどの企業にもあることです。
中小企業だけでなく、大手企業でも突然のトラブルに見舞われるとあっという間に傾いてしまう場合もあります。
万が一に備えて、事前に契約書の作成などをするようにしましょう。
この際に素人同士で契約書を作成したり口約束で進めてしまったりしてしまうと、困ったときにその話をしても無効になってしまいます。
確実に効力がある契約書を作り、いざというときにはすぐに出せるようにしておきましょう。
そのためにも自分たちの判断だけで行わずに、事前に弁護士などの専門家に相談をすると安心です。
売掛金回収が困難だと感じたときにもまずは弁護士に相談できますし、専門家に聞いて作った書類には効力を発揮するための事項が網羅されていますので有効です。
ほかにも万が一のために相殺権の確保をし、弁済期が来る前でも相殺できるよう相殺予約もできるように契約書に付け足しておきましょう。
完全に倒産してからではどんなに頑張っても売掛金回収が見込めなくなってしまう可能性もありますので、取引先の雰囲気が変だと感じたらすぐに弁護士に相談しましょう。