知的財産には権利があり、特許権や実用新案権などさまざまな種類があります。
漠然と理解しているが具体的にどのように権利を守れば良いかわからないという経営者は少なくありませんが、権利を侵害されたときには弁護士へ相談するのが一番です。
■知的財産権とは何か
知的財産権には種類があり、特許権や実用新案権、著作権など比較的知られている権利のほか、馴染みのある商標権や意匠権、あまり聞き覚えのない育成者権などもあります。
これらはすべて知的財産に関して法令で定められた権利であり、法律で保護される権利です。
ただ認められるには細かい規定があり、侵害されていても判断がつかないケースも少なくありません。
またそれぞれには登録手続きが必要であり、そこには法的な専門知識が必要です。
知的財産権は3つに大別することが可能で、産業財産権と著作権、そのほかの権利とに分けて判断することになります。
まずはこの3つについて解説しましょう。
・産業財産権
産業財産権の内容は、商標権、意匠権、特許権のほか実用新案という権利があります。
主に製品を製造する過程やシステム構築技術などを守ったり、商品やサービスのデザインや名称を守ったりする目的で据えられた権利です。
企業が研究開発にコストを費やし、消費者の購買意欲を向上させたり、商品やサービスのクオリティを上げたりする努力を保護するためにあります。
権利を得るためには届出が必要で、登録されても永続的な独占権は与えられておらず、商標権を除いた産業財産権には保有期間に限りがあります。
商標権だけは権利保有期間が10年と定めがあるものの、更新することが可能です。
意匠権と特許権は20年、実用新案権は10年の限りがあり、権利が切れたら更新は不可で、誰もが自由に同じ技術を利用することができます。
・著作権
著作権は耳にすることの多い権利ですが、文学や芸術分野の創作物を守る権利で、産業財産権のように登録は不要です。
創り出したそのときに自動的に権利が発生しますが、権利を主張するために文化庁へ登録する人も少なくありません。
・その他の権利
その他の権利に含まれるのは、商号権や不正競争防止法、肖像権、そして回路配置利用権です。
回路配置利用権には10年の期限がありますが、ほかの3つにはなく永続する権利となります。
まず商号権ですが、これは企業が企業名を守るための権利です。
第三者が他社の商号を勝手に使うことができないよう定められた権利で、登記の際、すでに登記されているほかの商号は使えないことにも紐づいています。
不正競争防止法は法律なので権利というのとは少々異なりますが、ノウハウや顧客リストを盗用したり、類似品を作ったりすることを規制する法律のため、権利を守る存在です。
肖像権は誰もが知っている、人の姿形を守る権利となっています。
誰かを無断で撮影したり、メディアに記録した映像を公開したり利用したりすることを禁じたもので、国民全員が漏れなく持っている権利です。
そして回路配置利用権は10年という期間があり、半導体集積回路の配置等を保護するためにあります。
設計を行うメーカーにとっては重要な権利です。
■侵害されるもするも重大な問題
知的財産権は企業が事業を行ううえで確実に必要なものであり、関わらないで運営できる企業はありません。
会社のロゴマーク一つとっても権利を守る必要がありますが、正しくルールを理解していないと大変な落とし穴があります。
たとえば、本来商標登録を行わなければならないものを、著作権で勝手に守られると勘違いし何も対処せずにいたとします。
もしこの状態で他者に使われてしまったとしても、しかるべき登録手続きを一切行っていなければ、いくら主張しても侵害にはあたらないことになってしまうのです。
相手に悪意があろうがなかろうが、どうすることもできません。
裁判を起こしても敗訴してしまうおそれもあるのです。
反対に、正しい知識を持たずに企業運営することで、知らないうちに誰かの権利を侵害する側になってしまう場合もあります。
訴訟を起こされ敗訴し、自社が加害者として大きな社会的損失を負う羽目にもなりかねません。
すぐれた発明やデザインはもちろん守られるべきですし、その権利を活用することで社会的信用を得て、業績を上げ事業を成功させることもできるでしょう。
ただそこには正しい法理解が必要であり、その知識を得るためには専門に強い弁護士など士業のバックアップを得ることも考える必要があります。
たとえば企業においてなんらか新しい発明や商品・サービスの開発が行われたとき、顧問弁護士に依頼してしかるべき権利を押さえておくことはとても重要です。
また、万が一既存の知的財産権に抵触するような要素があれば、公にする前に十分な回避策を講じることもできるでしょう。
知的財産権に関する訴訟は世界中で今も多数の事例があり、解釈も複雑で長期化することも少なくありません。
自社の発明をフル活用するためにもリスクヘッジのためにも、やはり弁護士の力を借りる判断は必要です。
■知的財産権は複雑で理解が困難
多岐にわたりさまざまな種類の権利が総称されているのが知的財産権です。
保護する対象はそれぞれ異なり、登録の必要性や保管期間など細かな規定があるので専門知識を必要とします。
企業が自社の有する権利を侵害されるのも大問題ですが、知らずに他者の権利を侵害してしまうことにも大変なリスクがあるのです。
知らなかったでは済まされないことですので、懸念がある場合は弁護士に相談し、確実にクリアしておく必要があります。