コラム

中小企業だから関係ないは大間違い!コンプライアンスの重要性

■大企業でないから見逃されるわけではない

中小企業の経営者や法務、総務、人事担当などマネジメントや管理を担う部門のコンプライアンス意識はどの程度、徹底されているでしょうか。
企業の風土や個々人によっても温度差があるかもしれません。
会社として守るべきことは徹底しているところもあれば、従業員数が少ないから問題ないとか、体制作りまで間に合わないといった会社も少なからずあるはずです。
中には所詮小さな企業だから監督官庁から目をつけられることもないと、新しい法律が施行される、法改正が行われても無関心というケースもあることでしょう。
確かに小さな企業は無数にあることから、万が一法制度を守っていないとしても目をつけられることは稀かもしれません。
だからといって、大企業だけがターゲットになるわけではありません。
日本全体の企業の割合を見た場合、大企業はわずか0.3%に過ぎず、中小企業が99.7%を占めています。
中でも従業員が5名以下の小規模企業は全企業の9割弱を占めており、日本の全雇用割合の4分の1を占めています。
つまり、国や地方自治体における各行政監督庁としては、企業の規模だけでなく、日本の多くの割合を占める中小企業だからこそ、コンプライアンスを徹底してもらわねば、企業としての秩序や公正で公平な経済活動が成り立たず、労働者や消費者などの保護もできないとの認識があります。
きちんと守っていかないと、どこで調査が入るか分かりません。

 

■いつどこからリークされるか分からない時代

かつての時代なら企業内の内輪で済まされた問題でも、今の時代は企業の内外からすぐに情報が漏れたり、告発が行われたり、思わぬルートで情報が伝わってしまう時代です。
例えば、残業代の未払いやサービス残業、パワハラやセクハラなどが発生した場合、情報が豊富でネットなども簡単に使える時代ですから、すぐに告発されるケースも少なくありません。
労働基準監督署に相談されるケースをはじめ、アルバイトや派遣社員であっても専用のユニオンなどに相談して弁護団が結成されるといったケースも増えています。
SNSなどで勤めた会社がブラック企業だなどと発言されれば、一気に広まり、炎上して取引先の信頼を失うおそれもあるのです。
一方、SNSなどを通じて従業員がうっかり顧客の個人情報を漏洩させるケースをはじめ、故意に業務上知り得た情報を転売するような事件も現れています。
個人情報保護法の徹底とともに、それを守るためのセキュリティ対策も講じる必要があり、小さな企業でも気が抜けないのです。

 

■規模が小さいからこそ損害は大きい

コンプライアンスを徹底していなかったばかりに、ブラック企業のレッテルを貼られる場合や個人情報が流出するようなトラブルを起こせば、大企業に比べて耐えられる体力がないので、規模の小さな企業ほど注意しなくてはなりません。
取引先や消費者の信頼を失って取引を停止された場合や不買運動が起こって売り上げが減った場合、大企業であれば一時的な打撃で済むかもしれませんが、小さな企業ではそれによって経営破綻するケースさえ考えられます。
個人情報の流出などで損害賠償を払わなければならないとすれば、それだけで経営が傾く場合もあります。
つまり、こうした信用失墜や損失拡大のリスクを防ぐためにも、中小企業こそコンプライアンスを徹底させ、公正で適正な健全な企業経営を行っていくことが大切なのです。

 

■守っていきたい法制度やルール

適用対象となるあらゆる法制度をはじめ、社会や地域のルール、企業内で定めた就業規則や製造品質を守るためのマニュアルなど、あらゆるルールを経営陣から従業員に至るまで、正社員か非正規社員を問わず、守っていかなくてはなりません。
中でもしっかり守っておきたい法制度には、どのようなものがあるでしょうか。
代表的なところをチェックしておきましょう。

 

■労働法令の数々

労働基準法や労働安全衛生法をはじめ、雇用者や労働者の権利を保障し、保護する法令は徹底して守る必要があります。
これらの法令に基づいて定める就業規則の内容の取り決めをはじめ、定めた内容をしっかり守っていくことも重要です。
また、法制度の改正や新たなルールが導入されるときには、すぐにキャッチアップして守っていきましょう。
残業代の未払い、サービス残業、オーバーワークをはじめ、育児休業や産休、介護休暇などの取得に制限を加えたり、パワハラやセクハラ、マタニティハラスメントなども起こらないように徹底する必要があります。

 

■個人情報保護法など情報セキュリティ関連

中小企業であっても、多くの企業が何らかの顧客情報を扱います。
小さなネットショップでも顧客の住所や氏名、クレジットカード情報などが入ってきます。
必ずプライバシーポリシーを定めるとともに、こうした情報の管理を徹底していかなくてはなりません。

 

■粉飾決算や脱税などの不正会計

粉飾決算とは不正な会計処理によって実際とは異なる決算書を作成し、財務状況や経営状態を良く見せる法令違反行為です。
債権者や株主その他のステークホルダーに誤った認識を与えてしまうだけでなく、本来は赤字なのに黒字に見せかけることで、発覚した際には倒産するなど、関係者や従業員にも影響を与えるリスクがあります。
脱税をすればニュースなどで報道されるうえ、追徴課税などが課されます。
ルールを守って支払っていれば済んだ金額よりも、大幅な負担を払うことになり、良いことはありません。
粉飾決算や脱税は刑事上・民事上・行政上の責任も問われるので、リスクが非常に大きいコンプライアンス違反行為です。

 

■助成金や補助金・報酬などの不正受給

不正受給は偽った申告により、国や自治体からの助成金や補助金を不正に受給する違反行為です。
医療機関における診療報酬や介護事業者における介護報酬の不正受給もよく問題になる違反事例となっています。
報酬の不正受給は一度始めて発覚しないと、どんどん続けてしまい、見つかったときには多額のペナルティを課せられることがあるリスキーな行為です。
助成金や補助金の不正受給にはさまざまな事例がありますが、たとえば、企業内の非正規雇用者の人材育成に取り組んだ事業主を助成する厚生労働省によるキャリアアップ助成金制度の事例では、実際には雇用していない人物名でキャリアアップ助成金を申請し、合計1,200万円の助成金をだまし取り、行政処分を受けたケースがあります。

 

■情報の不正使用

情報の不正使用のコンプライアンス違反としては、インサイダー取引や営業秘密侵害などが挙げられます。
インサイダー取引は企業の内部者情報を知り得る立場にある者が会社の重要な内部情報が公表される前に会社の株式などを売買して利益を得る行為で、役員や社員をはじめその家族などもその対象となり、金融商品取引法違反に問われるものです。
営業秘密侵害としては、転職にあたって従来の勤務先から顧客データを持ち出し、転職後の会社の営業活動で使用した事例で、営業秘密侵害として不正競争防止法違反の罪に問われたケースがあります。
企業だけでなく、個々の社員や個人でも、コンプライアンス違反によるペナルティが発生するのです。

 

■製品偽装

製品偽装は近年、大きな問題となっているコンプライアンス違反の一つです。
食品の原産地や品質を偽って表示することや商品の品質を実際より優れたものとして宣伝する行為をはじめ、耐震基準を偽るようなケースも該当します。
輸入牛肉を国産と偽って販売して利益を得ることや建築基準法上の耐震基準を満たしていないにもかかわらず、基準を満たしていると偽装した設計図を作成して建築した物件を販売した事例では、不正競争防止法違反などの罪に問われています。

 

■情報漏洩

顧客情報などの個人情報や企業の機密情報など重要データが外部に洩れ、顧客や企業経営などに影響を与えることや企業の信頼が損なわれることです。
故意の流出をはじめ、誤操作や外部からの不正アクセス、顧客リストやデータが入ったパソコンなどの紛失や置き忘れ、USBメモリなどによる持ち出しや自宅のパソコンへのメール転送など幅広い行為が情報漏洩リスクにつながります。
情報漏洩により個人情報保護法違反として損害賠償をするリスクが生じる場合や取引先から秘密保持義務違反を訴えられるリスクもあります。

 

■不適切な労務管理

労働基準法違反や最低賃金法違反などが代表的で、賃金や残業代、退職金の未払いやオーバーワークなど労働時間や休日取得の規定違反などを行うことです。
社会的に信用を落とすことやブラック企業のレッテルが貼られ、人材不足の時代に人材が集まらないという大きなリスクを抱えることになります。

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