■ホワイトマーク(安全衛生優良企業認定)とは
ホワイトマーク(安全衛生優良企業認定)は、ホワイト企業として公的に認められたという証明になる認定マークで、これを付与することにより、企業の労働環境を公表する制度です。
ホワイトマークは『安全衛生優良企業』として厚生労働省が労働安全衛生規則の基準を満たす企業に優良企業と認定して授与します。
従来、企業における労働環境は閉鎖的であり、たとえ劣悪な労働環境であったとしても実際に就職してみなければわからない部分が多く、ブラック企業を助長する一因となっていました。
反対に、法令を遵守し従業員が健康に働ける環境づくりに取り組んでいる企業であったとしても、求職者の信用を得るためには、ホワイトな職場であることを証明する明確な指標が必要です。
その対策として導入されたホワイトマークは、第三者機関が介入することにより客観的な指標を作り、その情報を公に開示します。
労働環境における指標を満たしている企業だと公表することは、就労者が入社する前に劣悪な環境で働く危険性を回避できるという大きなメリットがあります。
■取得方法
ホワイトマークを取得するためには、厚生労働省に申請して認定を受ける必要があります。
実際にホワイトマークを取得する際の流れは以下の通りです。
【申請前】
①自己診断
厚生労働省の自己診断サイトで自社の安全衛生に対する取り組みのレベルを客観的に把握します。
『厚生労働省ホームページ安全衛生優良企業公表制度』
②書類の作成
自己診断の結果が安全衛生優良企業の基準をクリアしている場合、ホワイトマークの基準となる各項目を満たしていること証明するための書類を作成します。
③申請
作成した書類を添え、各都道府県の労働局へ申請します。
【申請後】
④書類審査
労働局が書類を確認し、申請した企業が一定の基準をクリアしていることを審査します。
⑤ヒアリング調査
労働局が企業に対して直接ヒアリング調査を行い、安全衛生優良企業の基準を満たしているかどうかを審査します。
以上の書類審査とヒアリング調査の結果、安全衛生優良企業の基準を満たしていると認定されるのです。
認定を受けた企業は、厚生労働省のホームページ上に優良企業として3年間企業名が記載されます。
■取得するメリット
厚生労働省に優良企業として認定され、ホワイトマークを取得すると以下のメリットがあります。
・採用力が強化される
ホワイトマークを取得する最大のメリットは、就活生や求職者に対して優良な労働環境で従業員を大切にしている企業であることを示すPRになります。
経済産業省が2016年度に行った調査によると、『従業員の健康や働き方に配慮している企業を望む』と回答した学生は4割を超えており、その企業で安心して長期間働けるかという点は、就活生にとって大きな関心があることがわかります。
興味深いのは、『従業員の健康や働き方に配慮している企業を望む』と答えた学生の数が、企業の知名度や規模、給与水準が高いといった条件よりも大きく上回っていることです。
大企業でなくとも、従業員が働く環境が優れている企業であるとPRできれば、就職希望者数が増えることを期待できます。
・社内外でのイメージアップ
次のメリットは、優良企業であることを社内外にアピールすることができるためイメージアップにつながることです。
取得すると、厚生労働省の公式サイト上に3年間優良企業として社名が掲載されるため、ホワイト企業であるという社会的な信頼性が高くなります。
さらに企業労働局で行われるホワイトマーク授与式に出席すると、各新聞社やテレビ局などのメディアから取材を受ける機会もあります。
ホワイトマークを取得すると『厚生労働省の定める厳しい基準をクリアした優良企業』であることを社会的に示すことができ、非常に高い信頼性を得ることができます。
・受注の拡大
ホワイトマークを取得すると社会的に信頼度が高くなるため、既存の取引先や新規の顧客開拓につながります。
企業のコンプライアンス遵守(企業コンプライアンス)は、社会的にも大きな関心となっている現状があります。
そのため取引をするうえでも企業がクリーンなイメージであることが求められており、重要な判断材料となります。
ホワイトマークを取得している企業であれば、『法令を遵守する優良な企業』であること客観的な指標となるため、取引先に社会的な信頼性をPRすることができるのです。
■ホワイトマークを取得するデメリット
対して、ホワイトマークを取得するうえでのデメリットは以下の通りです。
・厳しい条件をクリアする必要がある
ホワイトマークを取得するうえでのデメリットは、信頼性が高い分認定されるのが難しいことです。
取得することができれば多大な恩恵を得られるホワイトマークですが、裏を返せばそれだけ認定基準が厳しく、審査もシビアに行われます。
ホワイトマークを取得するためには、厚生労働省の定める審査基準を高い水準でクリアする必要があります。
■取得時に審査される項目
審査のうえでチェックされる大まかな認定項目は、以下の3つがあります。
『企業の状況として満たしていること』
『企業の取り組みとして満たしていること』
『企業の積極的な取り組みを評価する』
さらに項目ごとに細かなチェック項目があり、それらをクリアする必要があります。
特に『企業の状況として満たしていること』・『企業の取り組みとして満たしていること』の項目に関しては、すべての項目を満たす必要があるため非常に厳しい審査基準となっています。
3つ目の『企業の積極的な取り組みを評価する』項目に関しては採点方式となっているのが特徴です。
健康管理およびメンタルヘルスに関する分野と過重労働防止対策はそれぞれ6割以上を満たす必要があり、著しく損なっている部分がなくそれぞれを高い水準で満たしているかどうかをチェックされます。
この項目は全体で8割以上のチェックを満たせば基準に達していると認められます。
■ホワイトマークの効果は?
企業がホワイトマークを取得することで、どのような効果が得られるのでしょうか。
まず、労働安全衛生に関する積極的な取り組みを行っていることが認められ、厚生労働省のホームページなどで企業名も公表されます。
これによって安全に働け、従業員の心身の健康に配慮している働きやすい職場ということが社会的に認知される機会が広がります。
ホワイトマークを企業のホームページや企業パンフレットや名刺、商品パッケージなどに表示できることで、取引先や消費者、求職者へのアピールにつながるのがメリットです。
トラブルが起こりにくい信頼できる企業として取引先が増えたり、働き方改革に努めている企業として、消費者が商品を好んで買ってくれたり、サービスを積極的に利用してくれる効果が期待できます。
また、新卒採用や中途採用の求職者もブラック企業ではないと理解し、安全・健康な職場で働けると応募してくる効果もあります。
人手不足の時代には嬉しい効果です。
・実際にホワイトマークを取得した企業の事例
では、実際に安全衛生優良企業認定を受けた企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
ホワイト企業認定を受けた株式会社ケンコー(東京都港区、認定期間:令和2年4月30日~令和5年4月29日)のケースをご紹介します。
2016年度より働き方改革をスタートさせ、外部のコンサルタントによってワークライフバランスに関するセミナーを全社員へ行うとともに、残業ゼロを目標にして生産性の向上にも取り組んでいます。
代表自らが月に1回全営業所へ出向き、全社員とカエル会議を実施し、労務や法務も含めた全社や営業所、社員個人の課題を一緒に考え、早く帰る(カエル)、働き方を変えるためにどうすべきか話し合いも欠かせません。
実際にフレックス制度を導入することや自社内のIT部門で業務を効率化させる自動化ツールを開発し大幅な業務時間の短縮を実現させました。
残業時間の削減とは反比例して、業績は毎年向上しており、社員の生産性の向上につながっています。
■会社の信頼性や有能な人材の確保に有効
ホワイトマーク(安全衛生優良企業認定)は、労働安全衛生規則の基準を満たす優良企業に授与されるマークで、厚生労働省から認定を受けることができます。
取得すると社会的信頼性が非常に高くなる反面、 厚生労働省の定める厳しい審査があり、各項目を高い水準で満たす必要があります。
取得難度は高いものの、認定を受けることができれば、ホワイトマークは優秀な人材を安定的に獲得したい企業と長期的に安心して働きたい求職者の双方にとって大きなメリットを得られるでしょう。
労務や法務に勤めている方、人事を担っている責任者の方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。