コラム

実際にあった3事例~企業間トラブルは他人事ではない

■中小企業こそトラブル対策が必須

企業間取引で訴訟問題が発生などと聞くと、大手企業ばかりが争いっているように感じるかもしれません。
でも実際の民事訴訟は中小企業のほうが圧倒的に多く、法律事務所へ弁護士の仲介を依頼する中小企業経営者が年々増えています。
そうしたケースでは契約書が締結されておらず、決着がつくまでに長い期間を要してしまう場合も少なくありません。
もちろん近年では口約束でも契約が成り立つことは広く知られるようになりましたが、やはり問題を起こさないためには、書面として詳細まですべて記載した契約書を残すことが重要です。
日常をガラリと変えてしまうような訴訟問題を未然に防ぎ、万が一の場合にも速やかに解決を見るためには、日頃から企業間取引には注意を払い、必要であれば法律事務所とも連携しておくことが大切です。
それではケーススタディのために、実際にあったトラブル事例をいくつか紹介します。

 

事例1:請負開発の行き違いによる支払拒否

A社はシステム開発を行う業者で、依頼元であるB社より顧客管理システムの開発を依頼されました。
代金は2,000万円で請負契約を締結し、A社は指定通り納期を守ってシステムを納入します。
ところがB社からシステムの内容が依頼していたものと違うなどさまざまなクレームが入り、それを理由に代金の支払いを拒否されてしまいました。
A社が改めてB社に説明を求めたところ、B社が求めていたものは明らかに請負内容では履行できず、納期もまったく合うものではなかったことが判明します。
もしその通りに履行するなら追加料金が発生することもわかり、双方の認識違いが浮き彫りになりました。
解決を見るためA社は弁護士事務所へ相談しましたが、B社が交渉に応じる気がまったくないため訴訟となり、数ヶ月にも及ぶ裁判の末、和解となりました。
A社はB社の要望を踏まえ追加作業を実施し、完了後にはB社が追加費用1,200万円を支払うという内容で決着しています。
そもそも問題が起こった原因は、契約締結前にB社がA社へ要望を明確に伝えていなかったこととA社が確認をせずに開発を進めたことです。
双方ともに非はありますが、近年こうしたシステム開発契約に関する訴訟は非常に多く、要件定義や基本設計の詰めの甘さが指摘されています。

 

事例2:納入された製品の不良による損害賠償

A社はプラスチック板材を用いて日用品を製造するメーカーで、成形材の供給を行っているB社にプラスチック板材を発注しました。
板材は期日に納入されましたが、A社がその板材を用いて自社製品を製造したところ、板材が契約に定める基準に適合しないものであることが判明します。
結果、製品は強度不足となり、A社は製造した製品すべてを廃棄せざるを得なくなりました。
A社は弁護士に相談し、B社に対して納入されたプラスチック板材の代金返還だけでなく、製品製造や廃棄に要した費用についても損害賠償を求める訴訟を起こしました。
この場合確認が必要なのは、B社が契約違反を起こしたか否かという点です。
つまり合意された契約がどのような内容であったかが重要で、確定すべきは契約書の内容と注文書の内容、加えてA社とB社との間で交わされたすべてのやり取りの記録を洗う必要があります。
この事例ではスペックが比較的明確なため、規格品として判断がしやすいですが、同様の事例でもオーダーメードや無形サービスになると非常に曖昧な点が生じます。
書面が残っていても解釈が一致しない点があると、当事者がそれぞれ自分側に都合が良いように解釈し、最初からボタンが掛け違っていることも少なくありません。
自社内に法務部署があれば詳しく検討できますが、ない場合は業務に精通した法律事務所にあらかじめ相談することが回避策となるでしょう。

 

事例3:コンサルティング費用の未払い

A社はコンサルティングを行う会社で、B社に依頼されて半年間のコンサルティング契約を締結しました。
契約書を提示し、コンサルティングという性質上料金の返金は不可能ですが、分割支払いには対応する内容で締結します。
数ヶ月後、B社から契約期間中ではあるがコンサルティングを中止したいと申し出があったため、A社は速やかに途中解約の措置を取ります。
ところがB社は残額の支払いに難色を示し、それまでに支払った分に関しても返金を求める姿勢を見せるようになったのです。
B社はコンサルティングの内容や費用に納得がいかないと言い出し、困窮したA社が弁護士事務所へ相談しました。
この場合、コンサルティングという明確な基準のないサービス提供であることから、訴訟になっても長引きやすい事例です。
ただ契約書できちんと謳っているため、当然返金に応じる義務はありません。
中にはサービス内容に不満があるわけではなく、実態は資金繰りが厳しくなったというケースもあります。
または最初からノウハウを吸収することだけが目的の場合もあり、態度を急変させたとも考えられます。
難しいのはコンサルティングという業務上、社会的体面を気にして訴訟には踏み切らない経営者も多いことです。
当然残額にもよりますが、場合によっては督促を打ち切る政策的判断を下す会社もあります。
法的に闘うこともできますが、業種によっては法律論とは異なるジャッジを下さざるを得ないケースもあるわけです。
こうしたトラブルを回避するためには、分割支払いには応じないなどの対策も必要ですが、顧客獲得の機会損失も考えられますので慎重に検討する必要があるでしょう。

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