■(1) 民事再生手続きとは
民事再生手続には、事業再生と個人再生とがあります。ここでは、主に法人を対象とする事業再生(以下「通常の民事再生」といいます)について説明します。
個人再生については、経済生活の再生を図ることを目的とした小規模個人再生と給与所得者再生があります。なお、個人再生を選択されるか破産手続を選択されるかについてはご相談に応ずることができます。
通常の民事再生手続(以下単に「民事再生手続」といいいます)は、経済的に窮境にある法人等(以下「再生債務者」といいます)について、再生債務者において再生計画(案)を定め、債権者の同意(債権者数の2分の1及び債権額の2分の1)を得、かつ、裁判所の認可を受けることにより、再生債務者の事業の再生を図ることを目的とするものです。
民事再生手続は、破産手続と違い、手続自体は再生債務者において行い、裁判所と裁判所が選任した監督委員(通常は弁護士)が手続の監督等を行います。
なお、民事再生手続は、会社更生手続に比して、再生債務者の自主再建である点と迅速性に特色があると言われています。手続の詳細につきましては、「民事再生手続の流れ」の説明をご覧ください。
■(2) 通常の民事再生手続の流れ
・民事再生手続開始の申立
民事再生手続開始の申立は、管轄裁判所の対し行いますが、通常、申立前に裁判所との事前打ち合わせが行われます。債務総額と債権者数等により、裁判所への予納金額と監督委員候補者が決定されます。また、申立と同時に、開始決定までに時間を要することから財産の散逸等を防止するため弁済禁止等の保全処分の申立を行います。この保全処分により、支払を停止しても手形不渡処分等が回避することができます。
なお、保全処分により既存債務の支払は停止することはできますが、裁判所への予納金、申立代理人、公認会計士の費用が発生するほか、仕入が現金となるケースがありますので、予め相当額の資金の準備が必要となります。
・債権者説明会と開始決定
通常、申立後の再生債務者主導で債権者説明会が開催されます。通常、監督委員も同席し、債権者の意向等に基づき、監督委員の開始決定が相当か否かの意見等に基づき、裁判所が再生手続開始決定をします。
開始決定後も再生債務者は、従前どおりに事業の継続ができます。但し、事実上、民事再生手続の申立及び開始により、信用収縮が生じますので、資金繰計画を慎重に立案しておくことが肝要となります。
・再生計画(案)
再生債務者において、再生計画(案)を作成し、裁判所に提出します。再生計画は、主に自主再建型、事業譲渡型、所謂減増資型(株式の取得・新株の発行)等があります。
自主再建型の再生計画は、債務を一定割合で且つ平等に免除を受けた上、免除を受けない債務について、一括又は分割弁済することが内容となります。再計計画の認可には、債権者数の2分の1及び債権額の2分の1の同意が必要となりますので、計画案作成は債権者の多数の同意が得られるよう慎重に行う必要があります。事業譲渡型は、事業を第三者(通常スポンサーと表現されます)に譲渡し、譲渡代金等を債権者に支払い、再生債務者は清算することを内容とするものです。所謂減増資型は、再生債務者において株式を取得し、所謂スポンサーに対し新株発行を行うことを内容とするものです。
いずれにしろ、再生計画における債権者への弁済額は、破産の場合より高額である必要があります。
・再生計画(案)の認可手続
再生債務者が提出した再生計画(案)については、監督委員が委任した公認会計士の調査結果を踏まえて作成された監督委員の意見書が添付され、債権者に送付されます。再生計画(案)は、債権者集会において前記の多数の債権者の賛成で決議され、決議を受けて裁判所が認可することとなります。
なお、再生計画(案)が法定の要件を充たしていない場合や履行可能性のない場合並びに債権者集会において否決された場合には、破産手続に移行することになります。
再生計画が認可された場合には、3年間は、裁判所と監督委員の監督下におかれますが、特段の事情がなければ、その後再生手続の終結決定がなされます。