高年齢雇用継続給付について、情報を探している人も多いのではないでしょうか。
高年齢者雇用安定法の改正に伴い、注目を集めた制度ですが、説明が複雑でよく理解できないという人も少なくありません。
ここでは、高年齢雇用継続給付について、その概要や申請手続きの流れ、注意点などをわかりやすく説明します。
■高年齢雇用継続給付とは何か
高年齢雇用継続給付とは、再雇用された高齢者を対象に、雇用保険法で定められた制度のことです。
ここで言う「高齢者」とは、60歳(シニア)以上の人のことを指します。
老齢厚生年金は、これまで60歳から支給されていましたが、65歳から段階的に引き上げられることになりました。
そうすると、65歳までおよそ5年間の空白ができてしまいます。
この空白を埋めるために「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が、2013年4月1日に改正されました。
法律の改正により、シニアの人も継続して働くことが可能になりましたが、賃金の低下という問題が発生します。
その問題を解消するために、活用されているのが高年齢雇用継続給付で、60歳の時点で、賃金が25~70%低下した人に対して、その一部を補充しています。
その他、高年齢雇用継続給付の受給要件は、次のとおりです。
・雇用保険に5年以上加入している人
・「介護休業給付」または「育児休業給付金」を給付していない人
メリット
シニア労働者にとって、高年齢雇用継続給付は、適切な労働賃金を保証してくれるというメリットがあります。
年金を受給するまでの収入が約束されるだけでなく、60歳からの給料が、60歳までのそれとほぼ変わりなく受給できる可能性が高くなるからです。
労働に見合った給料が保証されることで、再び働く意欲が出ることや勤めている会社を継続して勤務しようとする人も増えることが期待できます。
高齢労働者は、ネガティブなイメージがありますが、長年の経験と知識を持っている点で、会社にとって大きな利益になることもあります。
デメリット
高年齢雇用継続給付は、シニアを救済することを目的としていますので、大きなデメリットを心配する必要はないでしょう。
ただし、併給調整が行われますので、老齢年金など、特別支給されているものが減額されることはあります。
これから説明しますが、高年齢雇用継続給付金には種類があり、両方受給することはできません。
そのため、申請する前に、どちらにするか選ぶ必要があることを、忘れないようにしましょう。
支給される給付金の額
高年齢雇用継続給付の支給額の目安は、低下率×15%で算出できます。
たとえば、月の給料が、60歳の時点で30万円、それ以降は12万円に減らされたとします。
この場合、18万円の差がありますので、低下率は60%となり、支給される額は18万円×15%=27,000円です。
支給されるのは、低下率75%未満のケースです。
それ以上減らされた場合は、給付の対象となりませんので、注意しましょう。
支給される金額には、上限額と下限額がそれぞれ設定されていて、原則として毎年8月1日に改定されます。
現時点(2021年4月現在)の上限額365,055円で、下限額は、2,059円です。(参考:https://www.mhlw.go.jp/content/000731645.pdf)
支給される期間
高年齢雇用継続基本給付金は、永遠に支払われ続けるわけではなく、あらかじめ期間が設定されています。
支給対象となるのは、60歳になった月から、65歳になる月までです。
ただし、60歳になった時点で雇用保険に加入5年未満だった場合は、対象外となり、加入5年になった時点で支給されます。
1959年4月1日前に生まれ、以前あった船員保険(現在は雇用保険に統合)に加入していた人の場合、55歳になった時点で受給可能です。(支給期間は60歳に達する月まで)
■高年齢雇用継続給付にはどんな種類がある?
高年齢雇用継続給付には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」とがあり、それぞれ内容が異なります。
各制度について、ざっくりと説明します。
高年齢雇用継続基本給付金について
年齢を理由に、減給されてしまった人を対象に、賃金の一部を支給する、給付金制度です。
定年再雇用などで問題となるのが、「給料を大幅に下げられてしまった」ということで、高年齢雇用継続基本給付金は、60歳時点の給料と60歳からのそれを比較して、低下率が75%未満の人を対象としています。
高年齢再就職給付金について
主に再就職を果たした高齢者に対して支給される、給付金制度です。
失業給付金を受けていて、シニアで再就職し、再就職先の給料が前よりも下がった(75%未満)ことが、受給要件と決められています。
「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」との違いが良くわからない、どちらが自分の条件に合った制度なのかわからない、という人も多いでしょう。
どちらの制度も、シニア労働者を対象としていますが、前者は、高齢労働者として同じ会社で継続して働く人、後者は高齢労働者として別の会社で再出発する人を対象としている、と考えれば、区別しやすいでしょう。
■申請方法と手続きの流れ
高年齢雇用継続基本給付金を受給するには、ハローワークに必要な書類を提出する必要があります。
申込者によって申請することが義務付けられていますが、企業が作成する添付書類も多いため、企業がハローワークへ申請するというケースも少なくありません。
申請の主な流れは、次の通りです。
・ 必要な書類(支給申請書や受給資格確認票など)を、準備する
・身分証明証(免許証など)や、振込先の金融機関を確認できる通帳の写しを準備する
・添付する書類(出勤簿など)
・上記の書類をハローワークに提出する
雇用保険を受給した際に使用した口座を、振込先口座として指定することは可能です。
給付金の申請は、原則として2ヶ月に1度する必要があります。
初めてハローワークに申請して支給が決定すると、ハローワーク側から、次の書類を受け取ります。
・「支給申請書」(次回分)
・「支給資格確認通知書」
・「支給決定通知書」
次回からの提出は、期限が指定されています。
支給を希望する場合は、必要書類を期限以内に、ハローワークに提出しましょう。
高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の支給申請について、それぞれ説明します。
高年齢雇用継続基本給付金の申請について
申請に必要となる書類は、次の通りです。
・「高年齢雇用継続給付支給申請書」
・「払渡希望金融機関指定届」
・「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」(初回のみ)
・申込者の年齢を確認できる書類(免許証の写しなど)
・支給申請書がわかる書類
・賃金証明書に記載されている内容を確認するための書類(出勤簿など)
初回申請には、「高年齢雇用継続給付支給申請書」ではなく「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」を使用します。
申請方法は、ハローワークの窓口に書類を提出するか、電子申請も受け付けています。
初回の申請期限日は、仕事を始めた月の初日から4ヶ月以内に済ませる必要があるのです。
次回からの申請期限日は、「高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書」に記載されています。
高年齢再就職給付金の申請について
申請に必要となる書類は、次の通りです。
・高年齢雇用継続給付支給申請書
・申込者の年齢を確認できる書類(免許証の写しなど)
・支給申請書がわかる書類
申請先は、事業所を管轄しているハローワークと決められています。
申請期限は、高年齢雇用継続基本給付金と同じ条件です。
■申請する際の注意点
給付を受けることによって、老齢厚生年金などこれまで受給していた年金が減らされる可能性が出てきます。
どの程度減らされるかは、受け取る給付金によって異なりますが、停止率は6%が目安です。
高年齢雇用継続給付の給付率が15%とした場合、9%に減ると考えると、大まかな数字を計算しやすくなります。
場合によっては、新たに給付金を受けることによって、前よりも月に受け取る金額が下がる可能性があるのです。
心配な場合は、ハローワークや年金事務所などに事前に相談し、確認してから申請を検討することをおすすめします。
申請期限日を過ぎると、給付を受けることができませんので、期限を厳守しましょう。
1日でも過ぎてしまうと、受け付けてもらえなくなります。
初回は仕事を開始した月から4ヶ月以内と覚えておき、次回からはハローワークから渡される書類に期限日が記載されているので、忘れずに確認しておくことをおすすめします。
自分で直接ハローワークに申し込むのではなく、勤め先に申請を依頼している場合は、特に注意が必要です。
担当者の中には、制度について詳しくない人もいます。
気が付いたら提出期限日を過ぎてしまった、ということも考えられますので、早めに行動することと、あらかじめ期限がある旨を担当者に伝えることで、トラブルを避けることができるでしょう。
2ヶ月に1度の頻度で申請することになりますので、スケジュール帳などに、期限日ともに、何をすべきかを記入して管理することをおすすめします。
■条件に合った制度を選びましょう
高年齢雇用継続給付金について、その概要から種類、各申請の流れや申請の際に気を付けるべき点などについて解説しました。
この制度は、高齢労働者に対して、60歳から年金を受給するまでのおよそ5年間をサポートすることを目的にしています。
シニアになってからも働くことを考えている人は、制度を活用することで、一定の保障を得ながら働くことが可能になります。
制度には2種類ありますので、自分の条件に合ったほうを選び、手続きを進めていきましょう。
注意点としては、すでに年金を受け取っている人の場合、年金が減額されてしまうことです。
場合によっては収入が減ることにもつながりますので、申請前は慎重に検討することが望まれます。
制度を上手に活用して、シニアになっても安心して働ける環境を整えましょう。