コラム

いまさら聞けない「M&A」の基礎知識や一連の流れ

■「M&A」とは?

M&Aは、会社の合併や買収を意味する言葉です。
一昔前までは、大企業同士が行うビジネス競争のような捉えられ方がされていましたが、近年日本の中小企業間で増加傾向にあります。
その理由は「事業承継」です。
経営者の高齢化と後継者不足に悩む日本では、多くの企業がM&Aを活用するようになりました。
M&Aは買収側はもちろん、売却側にも大きなメリットがありますので、積極的に検討を始める経営者が増えているのです。
2011年以降、M&Aの件数も右肩上がりで、後継者不足による廃業を回避するため、多くの中小企業経営者が実施に踏み切っています。
国も受け継いだ非上場株式にかかる税を軽減するなど事業承継税制の特例措置などを設け、企業の若返りを図る施策を挙げているのです。
こうした動きは今後も進む予測ですが、手段としてはいくつかあり、大きく分けて資本移動を伴うものと資本移動を伴わないものに二分されます。
資本移動を伴う場合は広義のM&Aと解釈されますが、買収や合併などによって経営権を獲得する企業買収、複数の会社が発行済株式を持ち合う株式の持ち合い、合弁会社の設立などがメインです。
ほかにも狭義としては株式取得や事業譲渡なども含まれ、合併や分割も資本移動を伴うM&Aに分類されます。
これに対し、資本移動を伴わない業務提携としてのM&Aは、共同開発や技術提携、OEMや販売提携などが挙げられます。
このように、非常に多くの手段や方法、考え方があり、一言でM&Aといってもその実施内容は実にさまざまです。
検討するのであれば、どのような環境になれば理想的なのかをまず明確にして、それを実現できる最良の手段を講じることが重要です。
経営者が自社をどうしたいのか、事業をどうしたいのか、まずはその思いと骨子を固めることが最優先事項と言えるでしょう。

■M&Aの流れ

M&Aを実行するにあたり、どのような流れでプロジェクトが進んでいくのかを学ぶ必要があります。
細かく見ていく前に、まずは概要を理解しましょう。
ざっくり5つのステップがあります。

ステップ1
M&Aのプロフェッショナルと契約
資料準備
ネームクリア

ステップ2
条件交渉(トップ面談)

ステップ3
基本合意契約締結

ステップ4
デューデリジェンス(DD)実施

ステップ5
最終譲渡契約締結

 

概要としては以上の流れに沿って進めていきますが、それぞれのステップでは必要書類の作成や各種調査、条件交渉など非常に細かな作業が山のようにあります。
先を焦らず一つひとつ確実に進めていく必要がありますので、M&Aを考えるなら時間的余裕を持つことが非常に大切です。
近年増えている事業承継のためのM&Aであれば、現経営者がしっかり実権を握っている段階で将来を見据え、積極的に取り組むべきと言えるでしょう。

■売手企業が踏むべき手順

それでは前述した一連の流れに沿って、売手側が踏むべきM&Aの手順を解説していきます。
実際にはパートナーとなるアドバイザリーによって詳細は変わる場合がありますので、一つの参考としてください。

ステップ1

・M&Aのプロフェッショナルと契約

プロフェッショナルと言える先はさまざまですが、主に弁護士・税理士・会計士などの士業のほか、金融機関や専門業者などが該当します。
それぞれ得意とする分野があり、結論からすればどこと組むのも自由です。
専門業者はトータルサポートを売りにしていますし、会計士であれば企業価値算定に深い造詣があります。
弁護士はもちろんトータルサポートが可能ですし、法律上のトラブルを回避する点やもし何か問題が起こっても即座に対応できる点にアドバンテージがあります。
特に会社法の問題解決に強い弁護士事務所であれば、安心して大仕事を任せられるでしょう。

・資料準備

買手企業が必要とする決算書やM&A専用資料の作成が必要です。
これを基に買収するかどうか相手が決定しますので、正確でわかりやすく、魅力的な資料である必要があります。

・ネームクリア

ネームクリアとは、買収の意思がある相手会社に対して会社情報をすべて開示することです。
先んじて秘密保持契約を締結する必要がありますが、ここに至るまでの間は匿名状態でノンネームシートと呼ばれる資料で打診が進められます。
つまりネームクリアはM&Aの相手として正式に検討対象とする段階となりますが、約定はないのでネームクリア後に破談となることも多々あります。

ステップ2

・条件交渉(トップ面談)

一定の合意が得られた場合、いよいよトップ同士が面談を行います。
トップがお互いにさまざまな疑問を解消していき、相互の信頼関係を築く段階です。
ここでは買収価格、従業員の扱いなど詳細についても基本的な方向性が協議されます。
非常に重要な局面です。

ステップ3

・基本合意契約締結

基本合意契約は、ある程度基本事項の合意に至ったことを確認するための契約書です。
譲渡価格や取引の形態をはじめ、合意事項を明記します。
ただしあくまで基本事項についてのみであり、次のステップで条件が変化することも多々あります。

ステップ4

・デューデリジェンス(DD)実施

デューデリジェンスとは売手企業の詳細調査です。
法務や財務面を中心にあらゆる面から調査が行われ、弁護士や税理士などさまざまな専門家が実施することになります。
実施する意味は、株式関係はもちろん、人事労務関係や法務関係、財務関係上になにか問題点がないかの洗い出しです。
どのような内容で行うかは都度検討します。

ステップ5

・最終譲渡契約締結

詳細含めすべて確定し、最終合意できた際に最終譲渡契約を締結します。
内容には売買条件・遵守事項・保証事項・解除条項などが盛り込まれるのです。
同時に、買収後に浮上する可能性のある問題をどのように解決するかの手段なども明記されます。
M&A成立後も重要な役割を果たすことになる、重要な意思確認の証明書と言えるでしょう。

■法的知識をもってトラブルのないように

M&Aをなんのために実施するのか、その目的は経営者によってさまざまです。
事業拡大のための場合もあるでしょうし、後継者不足による事業承継のための場合もあるでしょう。
いずれにしても、会社という大きな組織の命運を左右する重大な仕事であり、契約交渉にあたっては会社法や契約法などさまざまな法的知識が必要となります。
不備なく、大きなトラブルを招くことなく、経営者が満足できる理想的な会社の未来を築くための行動が何より重要だと言えるでしょう。

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