コラム

女性活躍推進の施策「えるぼし認定」とは?取得のメリット、取得法、くるみんとの違い

■えるぼし認定とは

「えるぼし」は女性活躍推進法に基づく認定制度です。
一定の認定基準を満たし、女性の活躍を推進している状況が優良だと認定された企業が取得できます。
えるぼし認定を取得した企業は「女性がライフイベントの変化を迎えても働きやすい」「男女関係なく活躍できる」というイメージをもたらし、女性の注目を集めています。
女性活躍推進は、仕事で活躍したいと願う女性すべてが社会で輝きながら働ける社会を実現するための施策です。
その基盤となるのが2015年に施行された女性活躍推進法で、えるぼし認定制度は施策の大きな要となっています。
えるぼし認定を受けた企業は、厚生労働大臣よりえるぼしマークが交付され、自社のホームページ、商品、求人情報などでえるぼしマークを掲示することが可能となります。
このえるぼしという名前は、アルファベットの「L」と女性が輝くイメージを表した星を組み合わせたものです。
Lはlady=女性、Lead=手本、labor=労働者などさまざまな意味を含んでいます。
認定制度、認定マークともにえるぼしの愛称で呼ばれ、全国で1,045企業がえるぼし認定を取得してきました。
(2020年7月現在)現在も多くの企業が、えるぼし認定取得を目指して職場づくりに取り組んでいます。

 

■えるぼしを取得する企業のメリット

企業がこのえるぼし認定を取得しておくことで、いろいろなメリットが得られるようになります。
具体的なメリットについて、項目ごとにご紹介いたします。

・知名度やブランド力がアップする

一番のメリットは、企業のイメージや知名度がアップすることです。
えるぼし認定を受けると、厚生労働省のサイト上に社名が掲載されて、テレビ、雑誌、Webサイトなどさまざなメディアで取り上げられる可能性が高くなります。
すると、企業の知名度がどんどん高まっていき、世間に対して優良企業のイメージを植え付けやすくなるのです。
企業の好感度が上がれば、高い広告宣伝費をかけなくても自社の魅力をアピールするチャンスが増えていきます。
営業の成果も出やすくなり、ライバル企業に勝ちやすくなることや新規顧客獲得もしやすくなることでしょう。
企業のイメージや知名度を高めておくことは、資産にとって大事な資産となり得るのです。

・女性の求職希望者が増える可能性

えるぼしの取得は、求人情報を出す際にも有利です。
えるぼし認定企業は、「女性が活躍できる会社」「女性が働きやすい会社」「女性を大事にしている会社」という良いイメージを与えることができるのです。
求人サイトにえるぼしマークを掲示しておけば、女性求職者にアピールしやすくなり、応募者数が増えて、優秀な人材も確保しやすくなることでしょう。
女性を積極的に採用したいと思っている企業は、えるぼしを取得しておいて損はありません。

・公共調達の入札時に加点評価の対象となる

えるぼし認定企業は、公共調達の入札時に加点評価の対象となります。
三つ星評価を受けている企業の場合は、ユースエール認定などよりも高い加点評価がもらえるので、より有利な条件で公共調達を進めやすくなることでしょう。

・日本政策金融公庫を利用する際に低利融資が受けられる

えるぼしを取得しておくと、低利融資が受けやすくなるというメリットもあります。
日本政策金融公庫が行っている企業活力強化貸付を利用する際に、えるぼし認定の中小企業は、基準利率よりも0.65%ほど低い金利で融資が受けられるのです。

・社員のモチベーションアップ

さらに、えるぼしの取得は、社員に対しても良い影響を与えやすくなります。
えるぼし認定の優良企業で働いているという意識が芽生えることで、仕事へのモチベーションが高まることや生産性が向上するというメリットも得られるのです。

■えるぼし認定の取得方法

えるぼしを取得するには、行動計画の策定をし、その旨を都道府県の労働局へ届け出をする必要があります。
届け出とえるぼし認定の申請をした企業のうち、評価基準を満たした企業がえるぼし認定を受けることができます。
このえるぼしマークは3段階に分かれており、5つの評価基準を満たした数(星)によって取得できるマークが変わってきます。
評価基準は次の5つです。
・男女平等に採用していること
・男女とも継続して働いていること
・毎月の労働者法定時間労働・法定休日労働時間の合計がすべて45時間以内
・女性の管理職、女性従業員の割合が一定基準以上
・キャリアコースが多様
評価基準となる「5つの星」のいずれかを満たし、その実績を厚生労働省のサイトに公開している企業で、かつ満たしていない評価基準についても状況を改善する取り組みを行っている事業主は、星1~2個で1段階目、星3~4個で2段階目のえるぼしに認定されます。
また評価基準の5つの星をすべて満たした企業は、えるぼし最上位となる3段階目が取得できます。
さらに2020年6月からは、えるぼし認定を受けている企業の中でも優良な企業を「プラチナえるぼし」に認定する制度が始まりました。
えるぼしは3段階目から2段階目、1段階目と上位を目指して取得していくことが可能です。
また、えるぼし認定の取得後は年に1回、実績の更新が必要です。
もし認定基準を満たしていない場合はえるぼし認定が取り消しになることもあります。
取得後もたゆまぬ努力が必要なのです。

 

■手続きの流れ

えるぼしを取得するための具体的な手続きについて説明していきます。
企業はえるぼし認定取得に向け、その年の認定要件を把握し、要件を満たすための取り組みを行います。
次に「一般事業主行動計画」の策定と届け出が必要です。
まず事業主は行動計画を策定するため、自社の実情と課題、社員のニーズを把握して分析することから始めます。
たとえば、妊娠や出産を機に退職する女性社員の数、産後の復帰率、育児休業や看護休暇の利用者数など、過去5年に遡る調査が必要です。
社員とは面談して要望や不満を聞き出し、女性社員が仕事と家庭を両立して柔軟に働けているか現状も細かく把握していきます。
女性社員の労働状況や抱える課題が把握できたら「行動計画策定指針」に基づいて、それぞれの課題に優先順位をつけ、目標を設定します。
その際は、達成率や期限なと具体的な数値を設定することが望ましいです。
そして、目標を達成するために社員が行う対策を決めます。
行動計画は、各企業の事業内容や社員の働き方によっても異なります。
モデル行動計画を公開している企業もあるので、参照するのも良いでしょう。
行動計画が策定できたら、3ヶ月以内を目安に、自社のホームページ、厚生労働省が運営するサイト、自治体の広報誌などに行動計画を公開します。
あわせて策定から3ヶ月以内を目安に、自社の全社員にも行動計画を周知し、目標を達成するための対策の実践に入ります。
また、行動計画の策定から3ヶ月以内に、都道府県労働局雇用環境均等部へ一般事業主行動計画策定・変更届の提出が必要です。
えるぼし認定を申請する際は、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」に実績を公表します。
次に認定申請書に必要事項を記載し、一般事業主行動計画の写し、行動計画書を公開していることを証明する書類の写し、認定要件を満たすことを証明する実績などを添え、申請を行います。
えるぼし認定の評価基準を満たしていれば、星の数に応じて1段階目~3段階目のえるぼしが取得できるのです。
なお、えるぼし認定は、以下の3点をすべて満たしていなければ取得できません。
・事業主行動計画策定指針に基づき、一般事業主行動計画を適切に策定している。
・一般事業主行動計画を適切に公表し、労働者へ周知をしている。
・女性活躍推進法をはじめ、労働基準法、男女雇用機会均等法などに違反していない。

 

■くるみん認定とえるぼし認定の違い

厚生労働省が、働く女性を支援する制度には、えるぼし認定のほかに「くるみん認定」があります。
くるみん認定は「次世代育成支援対策推進法」に基づいて、行動計画で策定した目標を達成し一定の基準を満たした企業を「子育てサポート企業」と認定する制度です。
妊娠・出産によって仕事の継続が難しくなる女性が多い状況を打破するため、この制度が始まりました。
えるぼし同様に、認定を受けた企業には「くるみんマーク」が交付されます。
赤ちゃんをくるむ、職場ぐるみで子育て支援に取り組む、という意味を込めてその名前が付けられました。
くるみん認定を取得した企業は企業イメージの向上、女性が妊娠・出産を経ても働きやすい職場環境の醸成、くるみん税制の適用といったメリットが享受できます。
また、2015年4月からは、くるみん認定を受けている企業の中で高水準の取り組みを行っている企業を対象に「プラチナくるみん認定」制度も始まりました。
プラチナくるみん認定の取得は、女性が家庭と仕事を両立しながらイキイキ働ける証であり、就活生、転職希望者から高い注目を浴びています。
えるぼし・くるみんを同時に取得している企業も増え、また企業がこぞって認定取得に向けた法務や職場環境の改善に努めることで、女性が働きやすい社会の形成につながっています。
もちろん女性だけが優遇されるのではなく、男女関係なく多様な人材に活躍のチャンスが与えられることが、真の働きやすい職場です。
ダイバーシティのさらなる推進が今後の課題ともいえるでしょう。

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