■ユースエール制度とは
ユースエール制度とは、若者の育成や働きやすい職場環境づくりなどを目的として、厚生労働省が認定している制度です。
企業にとって、ユースエール制度に認定されるということには、どんなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、ユースエール認定企業になるために必要な情報をわかりやすく解説します。
■ユースエール認定企業とは?
ユースエール認定制度とは、厚生労働省が中小企業を対象に実施している認定制度です。
若者の採用や育成に意欲的で、若者が安心して働ける環境づくりに取り組む企業と仕事を求める若者とのマッチングを支援することが目的です。
厚生労働省に認められた企業は、ユースエール認定企業と呼ばれるようになります。
平成27年10月にユースエール認定制度が誕生し、徐々に認定企業が増えていきました。
平成29年6月までに認定された企業は、209社にのぼります。
■ユースエール認定制度を受けることのメリット
認定を受けた企業には、数々のメリットが生まれます。
ユースエール認定企業は、若者が働きやすい企業であることを厚生労働省が認めたことになりますので、それが強みになります。
厚生労働省のお墨付きを得たというだけで、若者が求人に応募してくる可能性も高くなるでしょう。
そのほかにもいくつかメリットがありますのでご紹介します。
・認定企業限定の就職面接会に参加できる
ハローワークでは、定期的に就職面接会を実施していて、ユースエール認定企業に対しては、ほかの企業が参加できないような面接会も積極的に案内しています。
就職面接会の機会が増えれば増えるほど、求める人材と出会える可能性も高くなりますので、企業にとっては有利に働くでしょう。
・特定の場での求人PR
全国には、「わかものハローワーク」などの支援拠点が点在しています。
若者の雇用で優良企業に認定されている場合、そうした支援拠点で重点的にアピールできるようになるのです。
厚生労働省は、『若者雇用促進総合サイト』を運営し、利用者に必要な情報を提供していますが、優良企業として認定された場合、サイトのデータベースに登録されることになりますので、より多くの人の目に触れる可能性が高まります。
・自社製品などで積極的にアピール
制度に認定された企業には認定マークが付与され、企業はそれを自社のホームページや商品、求人広告などに表示することが可能になります。
ロゴマークは文字よりも視覚的効果が期待できますので、若者の採用や育成を積極的に行っている優良企業としてのブランディングにも役立つのです。
・助成金活用の場が増える
若者の採用や育成をサポートする助成金にはいくつか種類があります。
ユースエール認定企業になると、「トライアル雇用助成金」や「キャリアアップ助成金」など、各種助成措置を利用する際、一定額加算されるようになるのです。
日本政策金融公庫では、「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」というサービスを実施していますが、こうした公共調達の評価では、ユースエール認定企業という理由で加点されることもあります。
■ユースエール認定企業になるには?
ユースエール認定制度の対象は、従業員300人以下の中小企業です。
加えて、厚生労働省では12の認定基準を設定し、基準をすべて満たした企業を優良企業として認定します。
厚生労働省が公開している12の認定基準を以下にまとめてみました。
1.「学卒求人」(卒業後3年以内の卒業生を対象とした求人)を出し、正社員を募集している。
2.若者の採用や育成に意欲的に取り組んでいる。
3.以下の要件をすべて満たしている企業である。
・過去3年間に正社員として雇った新卒者の離職率は20%以下である。
・「人材育成方針」と「教育訓練計画」を定めている。
・前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間(会社が定めている労働時間)が20時間以下で、月平均の残業が60時間を超えていない。
・前事業年度に、正社員が取得した有給休暇の取得率が平均70%以上であること。
または、年間の有給取得日数の平均が10日以上であること。
・過去3年以内の育児休暇を取得した男性労働者が1人以上いる、女性労働者なら75%以上の育児休業等取得率がある。
4.以下の雇用情報を公開している企業である。
・過去3年間の「新卒採用者数」「離職者数」「平均継続勤務年数」「男女別採用者数」
・社内制度(「研修内容」「キャリアコンサルティング制度」など)
・前事業年度の「月平均の所定外労働時間」「育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)」「役員・管理職の女性割合」「有給休暇の平均取得日数」
5.過去3年間に、ユースエール認定の取り消し処分を受けていないこと。
6.過去3年間に、7~12の基準を満たさないために、認定辞退していないこと。
7.過去3年間に、新卒者に対して内定取り消しを行っていないこと。
8.過去1年間に、従業員に対して会社の都合で退職を迫ったり、退職推奨をしたりしていないこと。
9.事業主が暴力団関係者でないこと。
10. 事業主が風俗業などに関係していないこと。
11. 「雇用関係助成金」を不正に支給していないこと。
12. 「重大な労働関係法令違反」をしていないこと。
認定基準については、厚生労働省のホームページで確認できます(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000100266.html)。
■認定制度申請で準備すること
ユースエール認定制度に申請するには、決められた書類を準備し、必要事項を記入することが必要です。
厚生労働省のホームページによりますと、以下の書類または添付資料が必要になります。
1.「基準適合事業主認定申請書」
2.「新規学卒者等採用実績及び定着状況報告書」
3.「人材育成方針・教育訓練計画報告書」
4.「所定外労働時間等実績報告書」
5.「有給休暇取得実績報告書」
6.「育児休業等取得実績報告書」
7.「関係法令遵守状況報告書」
8.「誓約書(認定申請用」
9.「企業情報報告書」
必要な書類は、厚生労働省のホームページよりダウンロード可能です。
ダウンロードは、ワードまたはエクセル、PDFファイルになります。
ホームページには、記入例についても紹介されていますので、参考にしながら、間違えないように記入しましょう。
申請などについて疑問を持ったり、自分一人では自信がないと感じたりしたら、中小企業法務に強みを持つ弁護士に相談するというのも一つの方法です。
中小企業法務に詳しい弁護士なら、制度のメリットから助成金の活用まで、幅広いアドバイスが期待できます。
■申請の流れ
記入漏れがないかどうか、必要な書類はすべて揃っているかどうか確認したら、申請の手続きに入ります。
申請先は各都道府県の労働局ですが、必ず事業主が住所を置いている労働局に申請しましょう。
労働局から提出書類のチェックを受け、問題ない場合は、認定通知書が交付されます。
書類を提出した後、認定審査に入るのです。
認定審査は通常申請日から30日位以内に結果が出ます。
■ユースエール認定を受ける前に申請条件を確認しましょう
ユースエール制度は、若者の雇用に積極的に取り組む企業を支援する制度です。
認定されるには、いくつかの厳しい条件がありますが、優良企業に認定されることで得られるメリットはたくさんあります。
制度に興味があれば、厚生労働省が公表している認定基準と照らし合わせながら、申請するに必要な条件を満たしているかどうか確認してみると良いでしょう。
不安な場合は、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。