コラム

商標権侵害に関するトラブルと対処法

商標権を取っていたのにもかかわらず、類似商品が世に出回ってしまったというトラブルが続出しています。
商標権侵害のトラブルは年々増えており、弁護士に相談するケースも少なくありません。
本記事ではどのように対処することが正しいのかを解説していきます。

■どこからが商標権侵害にあたるのか?

商標権とは、商品を提供者に伝達する標識であり、サービスマークやトレードマークと略称されることもあります。
知的財産権として条約や法律で保護されており、需要者の利益を守る際にも有効であると考えられています。
tade markやTM、service markやSMなどと表記され、日本の商標制度は商標法施工規則17条で守られているのが特徴です。
万が一、商標権が侵害されてしまうとブランドの価値が大きく下がってしまうだけでなく売上を左右するなど、さまざまな問題が発生します。
そのため、自社の商標権が侵害されてしまった際には、法律のプロである弁護士に相談し早期解決を目指さなければいけません。
商標権が侵害されていると判断されれば損害賠償金を請求することも可能です。
また、思わぬ形で自社の商標権が侵害されてしまうことがないように事前にトラブル予防をしっかりと行うことも得策といえるでしょう。
商標権には、専用権と禁止権の2つがあり、独占的に使用することや第三者の使用を禁止できるなどの権利が発生します。
そのため、第三者が無断で商標権を獲得した商品やサービスを使用してしまうと商標権侵害だと認められます。
また、使用するだけでなくコピー商品だと判断された場合にも商標権の侵害にあたるため、注意しなければいけません。
しかしながら、どこからが商標権侵害にあたるのかを判断することは専門家でも難しいと言われています。
商標権が侵害されているのかという判断は、さまざまな観点から見極められます。
たとえば、商標の見た目や読み方で判断されることも少なくありません。
さらに、どのような意味を持つのかといった点からも商標権を侵害していないかを判断しています。
商標権侵害の判断は、総合的に見て見極めなければいけませんが、これまでの具体的な取引の状況を考慮しているケースも見受けられます。
たとえば、どんなに見た目が似ていても呼び名や意味合いがまったく違う商品やサービスであればコピーだと判断されることはほとんどありません。
とはいえ、企業にとって商標権を侵害されてしまうのは、大きなトラブルに見舞われてしまう要因です。
商標権が侵害されていると認められた場合には、刑事罰のリスクもあります。
10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科されることや賠償金の請求を行うことも可能です。
さらに信用を回復するための手続きを要求することや相手側に謝罪を求めることもできます。

■事例1:使用差し止めおよび100万円の損害賠償が認められた事例

医薬品の製造販売を行うA社に対して、複数の顧客より、ネーミングが似ているサプリメントがあるといった通報やこれはA社のグループ会社の商品なのかといった問い合わせが相次ぎました。
自社で調査を行ったところ、健康補助食品などの販売を行うB社がA社の登録商標と類似する名称を用いて、ダイエット効果をアピールする健康補助食品を販売していることがわかりました。
A社は公式サイトで類似名称の商品はA社とは関係ない旨を消費者などに発信するとともに、B社に対して警告を行ったものです。
そして、B社との間に今後、A社の商標を用いた商品の販売中止と謝罪広告を掲載すること、今後もし販売した場合には違約金を支払うことを合意するに至りました。
ですが、B社はその合意を守らず、商品の販売を継続したため、A社はB社を相手取り商標権侵害を理由に自社の商標の使用差し止めと損害賠償請求訴訟を提起するに至ったのです。
裁判所は、「健康補助食品であっても、健康維持のために摂り入れる点で医薬品と並べて宣伝販売されている」などを理由に、「B社の行為は出所の混同を招く怖れあり」として商標権の侵害を認めました。
そのうえで、B社に対して、使用差し止めおよび損害賠償としてA社に対して約100万円の支払いを命じる判決が出されています。

■事例2:5,000万円の損害賠償が認められた事例

洋菓子の製造販売を行うA社は、焼き菓子販売を行うB社が自社の登録商標と類似した名称を用い、店舗表示や広告、包装などで類似した焼き菓子を販売していることを消費者のSNSなどを通じて知るに至りました。
中には完全にA社の商品と間違っている顧客がいることやどちらが元祖かという論争を顧客同士でしているケースまで見られました。
A社は商標はA社が登録しているものであり、B社に使用を許したことはないこと、類似パッケージの商品とは無関係であることをホームページで警告しています。
そのうえで、B社に対して商標権侵害を理由に販売の差し止めと損害賠償を請求する訴訟を提起するに至ったのです。
裁判所は「商品の販売場所やサービスの提供場所、需要者の範囲などから総合的に考慮した結果、B社の行為は需要者に出所の混同を招く怖れあり」と判断をもたらしました。
そして、B社のA社に対する商標権侵害を認め、損害賠償として約5,000万円をA社に支払うよう命じています。
なお、この判決ではB社が訴訟係属中に商号を変更したことから、販売の差し止めは認められずに終わっています。

■事例3:使用差し止めおよび500万円の損害賠償が認められた事例

土地や建物の売買を行う不動産会社A社は、同業他社であるB社が、自社の登録商標と類似する名称を使って、マンション販売用のチラシやパンフレットを作成して配り、看板や垂れ幕にも類似名称を用いてマンション販売を行っているのを突き止めました。
A社のマンションに興味を持っている顧客より、B社が販売しているマンションの資料請求やモデルルームの見学予約などの問い合わせが相次いだことから発覚したトラブルです。
A社はB社のマンションはA社が建てた物件ではなく、無関係であることをホームページ上で警告するとともに、商標権侵害を理由に使用差し止めと損害賠償をB社に請求する訴訟を提起しました。
裁判所は「A社とB社の需要者は一致しており、B社の行為は出所の混同を招きかねない」と判断を下しました。
そのうえで、B社のA社に対する商標権侵害を認め、使用差し止めおよびA社に対して約500万円の損害賠償を支払うように命じています。

■商標権侵害のトラブルに見舞われてしまったときの対処法

万が一、商標権侵害のトラブルに遭ってしまった際には、まず確実な証拠を集めることから始めてみましょう。
ただ自社の商品やサービスと似ているという自己判断だけでは、商標権が侵害されたと訴えることはできません。
たとえば、類似商品やサービスの広告やパッケージなども証拠として挙げられます。
自社の商品やサービスの商標権が侵害されていると判断できる確実な証拠を集めた後は、相手側に警告書を通知しましょう。
警告書には、侵害の事実を伝えるだけでなく、被害者側の要求を記載します。
警告書を相手側に通知しても反応がない場合やその事実を認めない場合には裁判を起こすことも可能です。
実際に警告書を通知したケースでは、弁護士を交えて交渉を行い示談で解決した事例も多く見られます。
しかし、中には示談で解決することができず裁判まで持ち越すケースもあります。
商標権侵害のトラブルが発生してしまった場合、相手側の対応によっては長期間にわたり問題が解決しないことも予想されるため、できるだけ早急に解決するには、専門的な知識を多数持ち合わせている実績豊富なプロの弁護士に相談すると良いでしょう。

■自身が商標権侵害を警告されてしまった場合の対処法

商標権侵害トラブルには、被害に遭うだけでなく、自らが警告されてしまうこともあります。
他社から商標権侵害に関する警告書が届いた場合、やはり弁護士のサポートを受けることが解決の近道です。
相手側の主張内容に信憑性があると判断されてしまうと刑事罰を受けることや賠償金を支払わなければいけません。
思わぬ商標権侵害トラブルの被害に遭う場合や知らず知らずのうちに加害者にならないために、事前にすでに類似した商品やサービスが商標登録されていないかを確認することが大切です。
また、必ず契約書を作成し、できるだけ早く商標登録を行うようにしましょう。
契約書を作成しておくことで利用範囲を定めることができ、後々のトラブルを防ぐことができます。
自身で判断することが難しいという場合には、商標法に詳しい弁護士の力を借りてみることも大切です。

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