コラム

事業承継税制とは?中小企業は知っておきたい基礎知識

中小企業が紡いできた技術や製品、サービスを受け継ぎ、雇用を維持していくうえでは適切な時期における事業承継が不可欠です。
スムーズに事業承継を行うために活用できる事業承継税制の仕組みと中小企業が利用する際のポイント、注意点をご紹介します。

■事業承継税制とは

事業承継税制は中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)に基づいて認定を受けることで、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産に課税される贈与税や相続税の納税を猶予する制度です。
そのうち、中小企業が適用を受けられる法人版事業承継税制は、後継者である受贈者または相続人が、経営承継円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を贈与または相続によって取得した場合に、課税される贈与税や相続税を一定の要件のもとで納税が猶予されます。
後継者が非上場会社の株式を先代の経営者から贈与や相続で取得した際に、経営承継円滑化法に基づき都道府県知事の認定を受けることが必要です。
猶予された後継者が死亡した場合には、納税が猶予されている贈与税や相続税の納付が免除されるのも大きな利点です。
なお、平成30年度税制改正により、2018年(平成30年)1月1日から2027年(令和9年)12月31日までの10年間限定の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等に儲けられていた総株式数の3分の2までの制限が撤廃され、納税猶予割合が80%から100%へと引き上げられる特例措置が創設され、より事業承継がしやすい環境が整えられました。

■特例措置と従来の一般措置との違い

法人版事業承継税制の特例措置は、中小企業の事業承継をより一層後押しするために大幅な拡充措置が設けられました。
大きな着目ポイントは、自社株を承継する際に贈与税と相続税が一切かからない仕組みに改正された点です。
事業承継税制の一般措置では、納税猶予の対象となる株式は発行済議決権株式総数の3分の2に限られ、なおかつ相続の場合の猶予割合は80%という制限が設けられています。
つまり、3分の2×80%=53%の自社株については納税が猶予されますが、残りの47%は相続税を納税しなくてはなりません。
自社株の評価額が高いほど、相続税の負担が重くのしかかります。
ですが、10年の時限措置とはいえ、特例措置を利用すれば、対象となる株式数の上限と猶予割合の制限がなくなったため、自社株承継部分には相続税が課されず、納税負担が軽減されるので、安心して事業承継を行うことができるようになります。

■特例措置のもう1つのポイント

事業承継税制の一般措置と特例措置の違いにおける、もう1つの着目ポイントとなるのが、雇用確保要件の実質的な撤廃です。
一般措置では自社株を生前贈与した場合、承継後の5年間の平均で承継前の雇用者数を80%維持しなければなりません。
もし雇用を維持できなければ、贈与税の全額納付が求められ、中小企業にとっては厳しいハードルとなっていました。
少子高齢化により、業界や規模を問わず人材不足が続いている中で、80%の雇用維持は、人材を募集するのが難しい中小企業においてはハードルが高いからです。
経済状況の変動はもちろん、感染症の拡大によるインバウンド需要の減少や大規模災害で被災するなど、5年間の間には何が起こるかわかりません。
やむなくリストラせざるを得ない事態や給料の支払いができなくなって従業員が離職するリスクも潜んでいます。
不透明な経営環境を考えると、生前承継による事業承継税制は利用しにくいという声が大きかったのです。
そこで、特例措置では雇用が80%を下回った場合でもその理由を記載し、認定経営革新等支援機関による意見を記載した書類を都道府県に提出すれば、猶予税額を支払う必要がなくなりました。

■特例措置の適用を受けるには

事業承継税制の特例措置は10年間の時限立法となっているため、2023年3月31日までに都道府県に対して特例承継計画を提出し、2027年12月31日までに承継を行わなくてはなりません。
2027年12月31日までに申請すれば良いのではなく、2027年12月31日までに承継を完了することが求められますので要注意です。
そのため、近い将来事業承継を予定している中小企業は、節税の面でも有利となる特例措置の適用が受けられるよう、なるべく早い段階で特例承継計画を提出するのがベストです。

■特例承継計画とは

事業承継税制の特例措置を受けるために提出が必要となる特例承継計画は、会社名、先代経営者の氏名と後継者の氏名(最大3名)、事業内容を記載し、承継時までの経営の見直しや5年間に行う承継実施内容を記すとともに、認定支援機関等による所見などを記載する書類です。
A4用紙3枚ほどの簡易なもので良く、あくまでも特例措置の適用を受けるために提出が求められるものですので、実際に特例措置を使って事業承継を行うには、より細かな事業承継計画を立てるようにしましょう。

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