■ 法律の専門家なら誰でもどの事務所でもよいわけではない
離婚や親権について相談したい、お金を返してもらいたい、ケガをさせられた、交通事故に遭った、会社からいきなり解雇された、賃金を払ってもらえないなど、なんらかのトラブルを抱え、弁護士に相談したいと思ったとき、あなたならどこに相談をしますか。
損害を与えられることや権利を侵害されるといった法律問題はそう頻繁に起こるものではありません。
法律事務所に相談するのは初めてという方も多いことでしょう。
そのため、街中で見かけた場合やネットで自宅や職場の近くにあった法律事務所に駆け込むという方が少なくありません。
ですが、誰でもよく、どの法律事務所でもよいわけではないのです。
弁護士との相性や新人かベテランかといった熟練度などはもちろんですが、そもそも取扱分野にマッチしていないことがあります。
世の中には多くの法令が存在しており、それを巡って起こる問題も多岐にわたります。
弁護士になるためには憲法や民法、刑法、商法といった六法を中心に法律問題の解決をするエキスパートとして養成されますが、世の中にあるすべての法律を網羅してあらゆる分野でエキスパートになるのは到底無理です。
そのため、一般的には自分の得意分野を中心により学びを深め、その分野での取扱事例を増やしながら、経験値を上げ、解決ノウハウを高めていくことになります。
そのため、自分が解決を望む分野に強い弁護士がいる法律事務所を選ばなくてはなりません。
■ 経験や実績を確認しよう
同じ得意分野を掲げていても、その人によって経験値や実績が異なります。
たとえば、弁護士登録をしたばかりの新人とその道10年のベテランがいたら、あなたはどちらに相談したいと思いますか。
中には若い方のほうが敷居が低く相談しやすそうと、若手を選ばれる方もいるかもしれません。
ですが、問題が複雑な場合をはじめ、スムーズな解決や裁判での勝利を望むなら、一般的には経験豊富なベテランを選ぶのではないでしょうか。
さまざまな事案の解決に取り組むことで得た豊富なノウハウがあるので、よりスムーズな解決が期待できます。
もっとも、単純に年数の長さや扱ってきた案件の数で選んではいけません。
重要なのは解決実績です。
いかに年数が長くても裁判でほとんど勝ったことがない人と比較的若手でも、10件あれば9件は勝てている、負けなしといった方のほうが能力が高く任せて安心といえます。
また、どのような方法で解決してきた実績があるかもチェックしましょう。
交渉によって和解を得たいのに、和解に至った事例が少なく、裁判に発展したケースばかりといった専門家では、あなたとの相性がよいとはいえません。
■ 個人向けか法人向けか
得意分野と不得意分野のすみわけとして、よくあるパターンが個人向けか法人向けかという点です。
企業法務に特化した大型の事務所やM&Aなども手掛ける国際法務事務所では、個人の案件は請け負ってもらえない場合があります。
一方で個人間の離婚や相続などの解決をメインとしている方に、M&Aなどの相談をしても解決はできません。
■ 刑事か民事か行政訴訟か
多くのケースは個人向けまたは法人向けの民事トラブルの解決を得意としています。
刑事問題は相談されれば対応する程度で、小さな事件程度の経験しかない方も少なくありません。
家族が逮捕された場合や犯罪などに巻き込まれた際には刑事に強い専門家を探すべきです。
また、国や国の機関、地方自治体などを相手取って損害賠償請求などをしたいときには行政事件に強い専門家への相談が必要です。
■ 民事事件は様々
相談事例で多いのは民事事件ですが、その内容は多岐にわたります。
そのため、民事事件の中でも得意分野は異なっています。
たとえば、個人間のトラブルなのか、企業などを相手取るトラブルなのかで得手不得手や経験値は異なるため、注意が必要です。
離婚や相続、借金問題を得意とするケース、交通事故を巡る示談や訴訟を得意とするケース、国際結婚や不法就労など外国人を巡るトラブルに強いことをアピールする事務所もあります。
個人と企業を巡るトラブルとしては、公害や各種の契約を巡る消費者トラブルをはじめ、企業内部でのパワハラやセクハラ、賃金や残業代の未払い、過労死などブラック企業関連の労働問題などが挙げられます。
労働問題に強い人もいれば、全く扱ったことがない方もいるので注意しなくてはなりません。
さらに医療事故など高度な専門性を必要とする事案は、いっそう注意が必要です。
過去の医療事故や訴訟の事例をリサーチし、誰が解決に導いたのか、どの事務所が扱った案件なのかを確認してみましょう。
実績が高い法律事務所に相談することが、希望する結果を得るための近道です。
専門性の高い事案の場合、地元で探すというのではなく、全国規模で実績のある専門家を探し、相談するのがスムーズな解決へとつながります。
■特殊な分野の場合
さらに特殊なケースでは、その道に強い弁護士、その分野での解決実績がある弁護士を探すことが大切です。
たとえば、宗教法人関連の問題については、宗教法人法に強く、宗教関連の法律問題やトラブルを解決してきた実績が豊富な弁護士を選びましょう。
新興宗教を巡るトラブルなら、新興宗教に強く解決実績がある弁護士が安心です。
また、寺院と檀家の間でのトラブルや寺院の後継者を巡るトラブルは、僧侶の資格も持っている弁護士が適しています。
プロやアマチュアのスポーツ選手と所属団体を巡るトラブルなどは、スポーツ法務の解決実績が高い弁護士を、芸能人と芸能事務所や芸能人のスキャンダルを巡るトラブル、週刊誌などへの名誉毀損を訴えたい場合にはエンターテイメント法務に強い弁護士がおすすめです。
サイバー攻撃を受けた、個人情報や機密情報を流出させられたといったIT関連のトラブルや損害賠償などについても、ITを不得意分野にする高齢の弁護士などではなく、IT分野を得意分野とする法律事務所を探すのがベストです。
業界で名高い弁護士をはじめ、法律事務所のホームページなどをチェックし、特殊な分野について解決実績があるか、アピールしているかを確認しましょう。