コラム

「あおり運転」厳罰化へ!妨害運転罪を徹底解説

■社会問題となっているあおり行為について解説

近年は、急ブレーキをかけたり、割り込みしたりなどほかの車をあおるような運転の様子がSNS上で拡散されたり、テレビや新聞などのニュースで話題になることが増えました。
このような運転は、ただのあおり行為として済まされる問題ではありません。
中には、原因で死亡事故につながってしまった事例もあり、厳重な処罰が求められるとても深刻な問題なのです。
令和2年6月30日からは、このようなあおり行為の問題に対応するために、道路交通法を改正して妨害運転罪が施行されることになりました。
本記事で、新しく創設された妨害運転罪について取り上げて、どのような行為があおりとなるのかについても、詳しく解説いたします。

■あおり運転とは一体どんな行為を指すの?

まず最初に、あおり運転が一体どんなものなのかについて見ていきましょう。
問題となるあおり行為の具体例は以下の通りです。
・ほかの運転者に対して暴言を吐いたり、クラクションを鳴らしたりする行為
・必要以上に車間距離を詰めたり幅寄せしたりする行為
・ハイビームで威嚇する行為
・物を投げたり、車体を傷付けたり、運転手に暴力を振るう行為
・蛇行運転でほかの車の進行を妨げる行為
このような悪質な運転を行った場合には、法律によって厳しく処罰される可能性があります。

・あおり行うのは女性よりも男性の運転者が多いと言われている

ちなみに、あおり運転の加害者は、男性が多い傾向です。
あおりを行った人のうちの96%が男性だったとも言われています。
なぜ、女性よりも男性のほうが圧倒的に多いのかについては、仕事や人間関係のストレスを抱えている場合やハンドルを握ると気が大きくなってしまう、同乗者やほかの運転手に対して自分の運転のスキルを見せつけたいなど、さまざまな心理が関係しているからなのかもしれません。

・怒りの感情が交通事故の原因になる

また、イギリスでは、交通事故の多くは「怒り」が原因となっているという研究結果もあるようです。
後続の車に抜かされたり、前を走っている車が遅かったり、クラクションを鳴らされたなど些細なことで怒りを感じてしまいやすい方は、その怒り感情があおり行為のにつながらないように、冷静に気持ちを落ち着かせるようにしたほうが良いでしょう。
車を運転する際には、怒りの感情よりも、ほかの運転者に対する思いやりを持つことを心がけなくてはならないのです。

■あおり行為厳罰化への背景と道のり

あおり運転はとても危険な行為であり、誰かの命を奪ってしまうことにもなりかねません。
しかしながら、これまでの法律では、あおり行為を厳しく取り締まる法律がありませんでした。
そのため、道路交通法を改正して、新たに法律を創設する必要が出てきたのです。
過去のあおり行為による事故の例を取り上げながら、道路交通法を見直すキッカケとなった背景について見ていきましょう。

・東名高速夫婦死亡事故

2017年6月の東名高速夫婦死亡事故のことを覚えている方も多いことでしょう。
この事故は、20代の加害者による急減速や直前の車線変更などあおり行為が原因となり、その結果、被害者2人が亡くなるという痛ましい結果となりました。
2017年10月10日に、加害者は「自動車運転過失致死容疑」で逮捕されています。
自動車運転過失致死罪は、最大でも7年以下の懲役・禁固、あるいは、100万円以下の罰金刑にしか問われません。
2人が亡くなっているにもかかわらず、自動車運転過失致死罪では刑があまりにも軽すぎるということで、ニュースやワイドショーなどでも、大きな話題となりました。
なぜ、自動車運転過失致死容疑での逮捕となったのかというと、事故発生当時、加害者側の車が停車状態で速度ゼロだったからです。
停車状態の車が危険運転に該当するかどうかが、その後の裁判の論点となりました。

・茨城県と静岡県での危険なあおり行為

2019年の夏には、茨城の常磐道の守谷サービスエリア付近で、20代男性が加害者の男性から、蛇行や割り込みなどのあおり、暴行や暴言を受けるという事件が発生しました。
その様子を撮影した動画がSNS上で拡散されたため、インターネット上でも大きな話題となりました。
ちなみに、この事件で加害者の車に同乗していた女性も「ガラケー女」と呼ばれて、SNS上でバッシングの対象となってしまいました。
しかも、この事件の加害者は、茨城県だけでなく静岡県の高速道路でも、危険で悪質なあおり行為をしていたのです。

・厳しい法律がなく警察の取り締まりにも限界があった

このように、各地であおり行為が相次いで発生してしまった原因の1つとして、法律の不備があります。
その当時は、あおり行為をする運転手に対して、その処罰を明確に定義した法律が法律がなかったのです。
そのため、警察官の対応にも限界がありました。
しかし、次々に悪質な事件が起こったことで、国民の間からもあおりに対する厳しい処罰を求める声が高まっていったこともあり、道路交通法をようやく見直す動きが出てきたのです。
道路交通法が改正された背景には、このようなあおりによる痛ましい事故があり、法律の盲点を改善して取り締まりをより厳しくするという目的があったからなのです。

■妨害運転罪について解説

最後に、令和2年6月30日から新たに施行されることになった妨害運転罪について見ていきましょう。

・どのような行為が妨害運転の対象となるのか?

妨害運転罪は、他の車の通行を妨害する目的で、妨害運転を行った場合に、厳しい処罰に問うというものです。
どのような行為が妨害運転に該当するのかについては、以下の通りです。
1.通行区分違反
2.急ブレーキ禁止違反
3.車間距離不保持
4.進路変更禁止違反
5.追越し違反
6.減光等義務違反
7.警音器使用制限違反
8.安全運転義務違反
9.最低速度違反
10.高速自動車国道等駐停車違反

・妨害運転を行うと最大で5年の懲役となる

もしも、これらの妨害行った場合には、懲役、罰金、運転免許証の取り消しなどの処罰を受けることになります。
急ブレーキ禁止違反などを行った場合には、3年以下の懲役、もしくは、50万円以下の罰金が科せられるのです。
さらに、25点の違反点数が科せられることや2年間の運転免許証取消となることもあります。
高速道路でほかの車を停止させた場合や著しい危険のおそれがあった場合には、5年以下の懲役、もしくは、100万円以下の罰金となるのです。
違反点数は35点、免許停止期間は3年となりますが、前科がある場合には最大で10年間となる可能性もあります。
このように、道路交通法が改正されたことによって、相手を危険な目に遭わせただけでも、犯罪に問われることになり、厳しい処罰を受けることになったのです。

・そそのかした同乗者も懲役刑または罰金になる可能がある

道路交通法によって、加害者の運転者だけでなく、同乗者の摘発も対象となりました。
もしも、同乗者が運転手のあおり行為をやめさせなかったり、そそのかしたりした場合には、重大違反そそのかしとみなされて、免許取消の処分となる場合があります。
先の項目で茨城県と静岡県の事件の例を述べましたが、もしも、この事件が道路交通法が改正後に起きていたとしたら、加害者の車に同乗していた女性もネットのバッシングだけでなく、罪に問われていたかもしれません。

・厳しい法律だけではあおりを完全になくすことは難しい

しかし、このような厳しい法律を作ったとしても、あおり行為を完全になくすのは難しいでしょう。
もしも、あおり行為を受けた時には、車を降りることや自分で対処しようとせずに、すぐに警察に助けを求めてください。
また、車にドライブレコーダーを付けておくことは、抑止効果になります。
万が一の際には、ドライブレコーダーに記録された映像が有益な証拠となりますので、可能であれば取り付けておいたほうが良いでしょう。

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