コラム

最近増えてきたスポーツ界のトラブルはどう解決したらいいか?

■時代が新しくなるにつれて変わる価値観

昨今はハラスメントを告発する流れが一般化しています。
もちろん、女性が男性から性的な要求をされたことによって生じるセクシャル・ハラスメントなどは昔から告発されていました。
しかし、世の中にあるハラスメントはそれだけではありません。
たとえば上司が高圧的に部下に接することをパワーハラスメントといいます。
そのほかには、無視やいじめなどで精神的に相手を追い詰めていくモラルハラスメントも見逃せません。
これまではハラスメントを受ける側が我慢するほかなかったのですが、誰かに助けを求めやすくなった社会になったことでこうしたハラスメントが表面化することになったのは良いことといえるでしょう。
そして、こうしたハラスメントが表面化するようになったのは一般社会にとどまりません。
スポーツ界もまたその中の一つといえるでしょう。
ただ、一般社会と違ってスポーツ界は独特の価値観によって成り立っている部分が多い業界でもあります。
並大抵の努力では良い成績が残せないので、多少の理不尽な指導は許されるという考え方が一般的でした。
そのため、どこまでがハラスメントにあたるのか、これはハラスメントにあたらないのではないか、という線引きをするのが難しいのです。
ハラスメントを告発する選手だけでなく、告発されるコーチやフロントにとっても難しい問題といえるでしょう。
そこで今重要性を増しているのがスポーツ法務です。
今回はさまざまな事例に即しながら、法務担当がどうやってそれを解決していけば良いかをレクチャーしていきます。

 

■チームと選手の間で生じ得るトラブル

基本的にプロスポーツは厳しい価値観で成り立っている世界です。
良い成績が残せれば莫大な額の収入を手に入れることができますが、そうでなければすぐに引退を勧告されることも少なくありません。
多くの選手はそれを承知のうえでプロの世界に足を踏み入れています。
ただ、そうした覚悟を利用したうえでチームが選手に無理な要求をするという例は後を絶ちません。
たとえば、ある選手がケガを抱えているにもかかわらずチーム状況が芳しくないから、という理由で出場を要求される例はよくあります。
加えて、もしここで出場を断ればほかの選手にレギュラーを奪われるかもしれない、と脅しにも近い言葉でプレイを強要するチーム関係者も少なくないのです。
無理をして出場した結果ケガが悪化し、その後のパフォーマンスに影響するということは十分考えられるでしょう。
その分の補償をチームがやってくれるならばまだ良いのですが、中にはそうした補償を行わず一方的に解雇を言い渡すチームもあるのです。
そのほか、チームのフロントと契約関係で揉めた結果、出場機会を減らされたという選手も中にはいます。
これ以上このチームではやっていけない、と移籍できればまだ良いのですが、ほかのチームに良い選手を渡すと不利になるから、という理由で移籍を拒否するチームもあるくらいです。
そうなると選手にできるのは、契約関係で揉めたことを渋々謝って出場機会を貰うことくらいしかありません。
こうしてフロントへの服従関係を築こうとするのは、一種のモラハラといえるでしょう。
こうしたチームと選手のトラブルを解決するのが法務の役割です。
なぜトラブルは起きているのか、どうしたら双方が納得いく形で問題を解決できるかが要求されます。

 

■コーチと選手の間で起こるパワハラ

パワーハラスメントは今最もスポーツ界を悩ませている問題といえるでしょう。
一般社会における上司と部下の関係と違って、コーチと選手は密接な関係を築かなければいけません。
コーチはどうすれば選手が良くなるかを模索しなければいけませんし、選手はコーチの言うことを理解しそれに従う必要があるのです。
しかしながら、こうした関係性をはき違えたうえで理不尽な指導を行うコーチも中にはいます。
たとえば今は少なくなりましたが、ダメなプレイをした選手を叱るためにコーチが殴ったり平手打ちをしたりするのはその例の一つでしょう。
これはハラスメントどころか、暴行罪にも問われかねない事例です。
こうした明確な形で行われるハラスメントであれば、選手は証拠を残せば簡単にコーチを告発することができます。
ただ、中には証拠を残したうえでも判断が難しい事例もあるのです。
たとえば今度はダメなプレイをした選手に対して、コーチが口頭で注意したとしましょう。
そこで、コーチとしては特に強い言葉を使ったつもりではなかったのに、選手としては深く傷ついたのでハラスメントで告発する、という例が少なくないのです。
こうした事態がなぜ起こるかといえば、当事者間にしっかりとした信頼関係が成り立っていないからにほかなりません。
コーチとしては選手のためを思って言ったのに、選手がコーチを信頼していないから誤解が生じるのです。
こうした誤解は第三者が間に入れば十分に解決され得るでしょう。
法務担当者には双方の言い分を聞いたうえで、可能であれば当事者間の話し合いの場を設けることで円満に和解へと導く能力が求められます。

 

■選手同士で起こるハラスメント

先ほどまで紹介してきたのはメディアではよく取り上げられるトラブルといえます。
しかしながら、メディアではあまり取り上げられていないトラブルも見逃せません。
それは選手と選手の間で起こるものです。
チームスポーツの場合は何よりも選手間の連携が求められます。
ただ、選手同士の思うところが食い違ってしまった結果、言い合いになってしまうことは少なくありません。
お互いの思うところを主張し合って最終的にチームワークが高まればそれに越したことはないでしょう。
ただ、問題がこじれた結果、モラハラに発展する可能性は無きにしも非ずです。
たとえばチームの方針に賛成できなかった選手に対し、リーダーが主体になってその選手を孤立させるよう無視する、という例があります。
まるで学校で起こるようないじめを思わせる行動で、プロの世界でそうしたことが起こるのか、と疑う方もいるでしょうが、実際にこうした事態が起こったこともあるのです。
ここで法務に求められるのはやはり早急な対策です。
できれば選手が孤立する前に、なぜチームの判断に従えないか、といったヒアリングを行っておくことは大切でしょう。
また、モラハラを行うリーダーに対してもその行動を戒めることが欠かせません。

 

■上下関係にまつわるトラブルを解決するには法律を持ち出すしかない

ここまでさまざまなハラスメントの在り方を紹介してきましたが、結局のところは上下関係が原因となって起こるものである、と要約できるでしょう。
スポーツ界においては何よりも上下関係を重視します。
それがなければコーチやフロントはチームをまとめることができませんし、統率の取れたチームワークを育むことはできません。
一方でそうした上下関係を盾に取るとたいていトラブルの元となりやすいのです。
スポーツ界が上下関係で成り立っているからには、それ以上に上の存在、つまり絶対に逆らえない法律を持ち出すしかありません。
スポーツ界ではさまざまなトラブルを想定して顧問弁護士を付けているところが少なくありません。
もしあなたのチームが顧問弁護士を置いていないのならば、自分のチームではそうしたことは起こり得ない、と高を括るのではなく、素直に法律事務所に前もって相談するべきでしょう。

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