個人間や企業との間でトラブルが発生し、民事裁判を起こしたいと法律事務所に相談すると、弁護士から民事裁判の手続きについて説明や提案があります。
専門知識がない方にもわかりやすい説明を心掛けてはくれますが、やはり、手続き上、どうしても専門的な法律用語を使わなくてはなりません。
そこで、民事裁判に登場する基本的な法律用語を知っておくと役立ちます。
・家庭裁判所
家庭裁判所は全国に50ヶ所あり、離婚や親権を巡る争いなど主に家庭内の紛争の解決を図る裁判所です。
通常の裁判では公開の法廷で審理が行われますが、夫婦や親子などの親族が粗そう場面では傍聴人が気になり、相互の感情的な対立が十分に解決されないおそれがあります。
そこで、家庭内の紛争については家庭裁判所における非公開の手続きで解決が行われます。
・簡易裁判所
簡易裁判所は問題を簡易に処理することを目的にしており、民事事件については訴訟の目的となるものの価額が140万円を超えない、比較的規模の小さな争いの請求事件に限り判断ができます。
簡易裁判所は全国に438ヶ所あります。
簡易裁判所での民事訴訟は口頭ですることもでき、1人の簡易裁判所判事によって審理および裁判されるのが基本です。
中でも60万円以下の金銭の支払いを求める事件について原告の申出があった場合に被告に異議がなければ、原則としてわずか1回の期日で審理が終了できます。
スムーズな支払いを目指して分割払いなどの判決ができるほか、債権者の申立てによって裁判所書記官が債務者を調べずに金銭の支払いを命ぜられるなど手続きが簡素化されているのも特徴です。
簡易裁判所では調停制度も用意されています。
民事調停は裁判官または民事調停官と2人以上の民事調停委員による調停委員会が両者の言い分を丁寧に確認しながら、解決案を示し、話し合いによって双方の合意を目指す手続きです。
裁判より費用が安いうえ、調書の記載は裁判所がした確定判決と同じ効力を持つのが特徴です。
・地方裁判所
地方裁判所は全国に50ヶ所あり、第一審裁判所の位置づけであるほか、簡易裁判所の民事の判決に対する控訴事件についても裁判権があります。
地方裁判所の事件は一般的な案件については単独裁判官によって処理され、控訴事件などに関しては3人の裁判官からなる合議体で裁判が行われます。
・高等裁判所
高等裁判所は東京・大阪・名古屋・広島・高松・福岡・仙台・札幌の8ヶ所と6ヶ所に支部があるほか、特別の支部として東京高等裁判所に知的財産高等裁判所が設けられています。
高等裁判所は地方裁判所または家庭裁判所の判決や簡易裁判所の刑事の判決に対する控訴事案をはじめ、地方裁判所の民事の第二審判決に対する上告および簡易裁判所の民事の判決に対する飛躍上告を審理するほか、地方裁判所または家庭裁判所の決定に対する抗告の裁判を行う裁判所です。
・最高裁判所
最高裁判所は憲法によって設置される日本の唯一かつ最高の裁判所です。
最高裁判所長官と14人の最高裁判所判事によって構成され、最高裁判所長官は内閣の指名に基づき天皇によって任命され、国民による審査によって罷免される制度も設けられています。
最高裁判所は上告および訴訟法において特に定められた抗告に関する裁判権を有し、争いに関する最終審判を行う最高の機関です。
・甲号証、乙号証(こうごうしょう、おつごうしょう)
民事裁判で訴えを起こした原告が提出した証拠書類のことを甲号証と呼び、訴えられた被告が提出した証拠書類を乙号証と呼びます。
・立証(りっしょう)
裁判官が審理を行い、判決を下すために事実関係を証明する責任です。
民事事件では原告に立証責任があります。
立証ができない場合、裁判官は「原告の請求を棄却する。」旨の判決を行うのが基本です。
・訴状、答弁書、準備書面
訴状とは原告が訴えを提起するために裁判所に提出した書面を指します。
訴えられた被告が訴状に対する応答を記した書面が答弁書です。
各自の言い分を記した書面が準備書面を指します。
・認否(にんぴ)
裁判における弁論において、相手方の主張する事実を争うか否かを示すことです。
争わない場合は「認める」、争う場合は「否認する」か「不知(知らない)」と述べるのが原則です。
争う場合には事実を証拠によって証明しなければなりません。
・陳述書(ちんじゅつしょ)
互いの言い分を裁判所や相手方が理解して、争いの経緯や問題の所在を明確にして把握するために用いられる書面です。
民事事件について経験することや認識している事実を時系列に沿って述べることが求められます。
・出頭カード(しゅっとうカード)
出頭期日に裁判所に出向いた際には、裁判所に備え付けてある出頭カードに署名をして出頭したことを示す必要があります。
・訴訟、調停
民事裁判における通常訴訟は個人の間の法的な紛争、主に財産権に関する紛争の解決を求める訴訟を指し、民事訴訟法に従って審理が行われます。
調停は裁判所において調停委員会が当事者の仲介を行い、話し合いによって争いを解決させる手続きです。