コラム

民事裁判と刑事裁判は何が違うの?

■知っておきたい「民事」と「刑事」の違い

裁判にはあまり関わりのない人でも、民事裁判や刑事裁判といった言葉は耳にしたことがあるでしょう。
ニュースや報道番組などでもよく見かける言葉ですが、いざ詳しい違いを説明しようとすると、よくわからない点が出てくるかもしれません。
また、中には「刑事・民事両面で責任追及」などといったニュースが聞こえてくることもあります。
裁判に種類があることは何となく理解していても、同じ事件を2つの種類の裁判で別々に裁くようなことが実際にあるのか、不思議に感じる人もいるでしょう。
ただ実際には、同じ事案でも別の角度から何度も責任を問われることがあります。
場合によっては刑事事件では不起訴でも、民事裁判で起訴されるといったケースもあります。
こうした社会の制度を正しく理解するために、両者の違いは一度きちんと把握しておいたほうが良いでしょう。
現実問題、社会においてはいつ事件に巻き込まれるかもわかりません。
最低限の法律の知識を身につけるためにも、裁判の種類に関して解説します。

■裁判の対象となる人物について

なんらかの事件が起こると、ニュースなどでは「検察が起訴をした」といった内容が伝えられることがあります。
起訴するというのは、刑事訴訟を起こすことを意味します。
起訴というのは裁判所に訴訟を提起することを指し、特に検察官が訴訟提起することを起訴と言うのです。
裁判を行うためには訴訟提起しなければなりませんので、裁判に必要な段階だと考えれば良いでしょう。
事件に対して検察は内容を精査し、容疑者の罪状を確認して、起訴した結果確実に有罪が勝ち取れるかどうかなどを考慮した上で訴訟か不起訴かを決定します。
ここで重要なのは、「一般人は刑事訴訟を起こすことはできない」という点です。
間違っても冤罪(えんざい)を招くようなことがあってはいけませんので、起訴するためには正確さが求められ、一般人ではそうした正確な捜査が実施できないことから起訴が認められていないのです。
つまり、刑事訴訟において「原告」となり得るのは検察に限られます。
ここが民事との一番の違いといえるでしょう。
民事訴訟においては、もちろん一般人が起訴することが可能です。
というのも、民事裁判では刑罰が科されることがないため、冤罪という間違いが起こる可能性がありません。
定められた刑罰があるわけでもなく、あくまで個人同士の係争を扱うのが民事です。
シンプルにいえば、検察が入る余地はありません。
一般的に、民事裁判では原告も被告も一般人となることがほとんどです。
このように、対象となる人物が全く異なるのが両者の大きな違いといえます。

■弁護士の有無

対象者の違い以外にも、弁護士の有無が刑事と民事の大きな相違点として挙げられます。
結論からすれば、刑事訴訟になれば被告には必ず弁護人が付かなくてはなりません。
前述の通り原告は必ず検察となりますので、被告はプロフェッショナルを相手にしなければならないことになります。
被告が一般人なら法的な専門知識もありませんし、検察に罪状を問い詰められても反論のしようがありません。
裁判は公平性が最重要ですが、プロフェッショナルと一般人とが争うような事態は公平とはいえません。
そこで被告には弁護人を付ける権利が認められており、主張は本人に代わって弁護士が行うのが一般的な形となります。
これに対し、民事では必ずしも弁護人を付ける必要はありません。
裁判の場において原告が自ら主張し、被告が自らを弁護することも可能です。
もちろん原告も被告も法律事務所に依頼することで弁護士を雇うこともできますし、そこは自由に判断することができます。
弁護士の有無についても両者には大きな違いがあるといえるでしょう。

■民事で扱われる内容とは?

民事訴訟では、主に民法と商法に基づいて判断が行われます。
逆にいえばこれらの範疇にない案件の場合は刑事扱いとなり、民事で扱われることはありません。
具体的にどのような内容が民事扱いになるかというと、非常に多いのが離婚問題です。
たとえば婚姻関係にあるどちらかが離婚を提案したときに、相手側も離婚には同意するものの、慰謝料は払いたくない、または親権は渡したくないなど主張が食い違うことがあります。
双方納得がいかない場合、裁判に持ち込み当事者同士が争うことになるわけですが、理由がどちらかの不貞行為だった場合でも、日本の法律においては刑罰があるわけではありません。
刑罰に照らし合わせる必要はなく、双方の主張をぶつけ合い、裁判長や裁判官がそれぞれの主張を見比べながら判断を下すことになりますので、これは民事扱いとなります。
必ずしも勝敗が決まるものでもなく、お互いの主張に折り合いが付けば双方に譲り合い、判決という形ではなく和解や合意に至るのが一般的です。

■刑事で扱われる内容とは?

刑事訴訟では、刑法に基づいて判断が行われます。
有罪か無罪か、はっきりと白黒を付けなくてはなりませんので、ここが民事との一番の違いです。
前述の通り原告は検察ですので、検察が被告の罪状を読み上げ、それに対して弁護人が反論し、双方の主張を繰り広げます。
裁判も何度も行われ、被告を有罪とすべきか無罪とすべきかが慎重に審議されます。
最終判断を下すのは裁判長で、民事訴訟のように和解が行われることはあり得ません。
最後には必ず判決が下され、判決文が公示されます。
事件を起こしたのが被告であることの事実確認、刑法に照らし合わせて罪に問えるかという追及がひたすらに行われるのが刑事裁判です。

■両方の裁判が同時に行われる状況とは?

2種の裁判はその存在意義がはっきりと分かれているように見えます。
事実そうなのですが、実は必ずしも役割分担がきれいに分かれているというわけでもありません。
先にも触れた通り、同じ事件が刑事と民事両面から責任を問われる場合があります。
たとえば交通事故の裁判となった場合、補償金が要求されることがありますが、交通事故自体は刑法での判断になる一方で、補償金については民事での判断になります。
こうした場合、刑事裁判と並行して民事裁判が行われることもあるわけです。
ただ双方の結果が連動するわけではなく、交通事故が刑事裁判で有罪確定したからといって、民事裁判で補償金が受け取れるとは限りません。
大前提として、裁判所はそれぞれが独立した存在であることを理解する必要があります。
それぞれが個別に、公正な判断を下す組織になっていることを理解しておきましょう。

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