コラム

実際に起きたネットトラブル解決事例

■ 飲食店レビューサイトを巡る裁判事例

飲食店のレビューサイトを巡り、レビュアーと飲食店の間でネットトラブルが発生する事例が増えています。
たとえば、レビューサイトに「料理が出てくるまで40分も待たされた」と書き込まれた飲食店が、サイトの運営会社に対して削除請求を求めた事例があります。
「40分待たされた」という内容は事実と異なるとして、人格権や不正競争防止法を主張して投稿の削除を求めて裁判を提起しました。
このケースでは裁判所は店側の請求を棄却しています。
その理由として、その飲食店が不正競争防止法が適用されるほど著名ではなく、サイト運営会社にも不正競争の目的がなかったことが挙げられました。
一方、メニューや店の外装などを改装したにもかかわらず、レビューサイトに過去の写真が掲載されているとして、削除を求める訴訟を起こした飲食店がありますが、この裁判では運営会社による情報の削除により、訴訟が取り下げられました。
いずれの裁判も弁護士が代理人として裁判を行っているわけですが、ネットトラブルを巡る事案はまだ新しいこともあり、裁判所がどのような判断を下すか予想が難しい状況です。
今後の判例の蓄積が求められることですが、既に出された判決の傾向を見据え、弁護士もさまざまな解決策を講じています。

 

■ 裁判を踏まえたノウハウ

この点、飲食店レビューサイトに自分の店を掲載したオーナーがいましたが、「おいしくない」、「料理が出てくるのが遅い」といった口コミがなされ、その直後に店を訪れる客が激減したと、レビューサイトに店舗情報を含めて投稿を削除するようサイトの運営会社に求めた事例があります。
運営会社が削除を拒否したため、店舗情報の削除および損害賠償を求めて裁判を提起しました。
このようにサイトの運営会社は、簡単には削除に応じてくれないケースが少なくありません。
そこで、法律事務所ではレビューサイトでの誹謗中傷に対して、どのように対応を採っているのかを見ていきましょう。
まずは、レビューサイトでユーザーに禁止されている事項に該当しないかを検討します。
ある著名な飲食店レビューサイトでは実際に食事をしていない人の投稿や飲食店へ悪影響が及ぶ可能性がある事実確認が困難な投稿、オーナーやスタッフなど個人への誹謗中傷や飲食店への断定的な批判、飲食店に対する個人的なクレームやトラブルに関する投稿などが禁止事項となっています。
もっとも、「おいしくない」という批判は単なる個人の主観に過ぎないとして、認められない可能性が高いです。
一方、「料理が出てくるのが遅い」というのは悪影響が及ぶ可能性がある事実確認が困難な事象として削除を依頼することができそうですが、運営会社が単なる事実と判断すれば削除が難しいものがあります。
明らかに禁止事項のガイドライン違反しているのに削除してもらえないケースでは、やはり裁判が有効です。
個人での申請では対応してくれないケースも、裁判所による判決が出れば、運営会社は即応するのが一般的だからです。
先のケースでは店舗情報を含めた削除を求めたため、裁判では認められませんでした。
ですが、経営に影響を与える特定の口コミだけを削除する訴えであれば、削除が認められる可能性が高いことから、弁護士では誹謗中傷に値する口コミの削除を求める方策を提案しています。

転職サイトに事実無根投稿をした事例

転職サイトに掲載されている求人を募集している企業に対し、事実無根の投稿をしたとして、2017年8月22日に高松地裁はプロバイダーに対して投稿者名開示を命令しました。
訴えの内容は次の通りです。
徳島市にあるとある企業が、「転職会議」という約480万人の登録数がある大手の転職情報サイトにおいて、事実無根の投稿をなされ、社会的評価を低下させられたとして、プロバイダー責任法に基づき、高松市のプロバイダーを相手どって投稿者の名前や住所などの開示を求めた訴訟です。

訴訟に至る経緯

2016年10月のこと、「転職会議」のサイトにおける徳島市のとある企業の口コミ欄に、その企業の従業員を名乗る人物が匿名で「社長はワンマン」、「管理職に管理能力はない」などとの投稿が行われました。
その投稿に不快感を示し、事実無根だと感じた企業側は、訴訟に先立って、東京にある転職サイトの運営会社に投稿者のIPアドレスなどの開示を求める仮処分を東京地裁に申し立てました。
開示の仮処分決定が出されたことで、投稿は高松市に拠点を置くプロバイダーであるSTNetのサービスを経由してなされたことがわかりました。
そこで、STNetに対して、投稿者名などの開示を求めて高松地裁に対して訴えを起こしたものです。
訴えられたSTNet側は「投稿者の意見で、社会的評価を低下させたとまでいえない」と主張していました。
これに対して、高松地裁の木村哲彦裁判官は、「前提となる真実性や相当性が証明されていない」としたうえで、「名誉が毀損されたことは明らかだ」として開示を命じました。
開示命令が認められた訴えを起こした徳島市の企業は、「人材獲得が難しい中で、誤った投稿は採用活動の妨げになる」とし、「投稿者と話し合いの場を設けたい」とコメントしています。
なお、 「転職会議」の投稿を巡っては、投稿によって誹謗中傷を受けた、ブラック企業ではないのに事実無根の投稿をされたなどとして、投稿の削除などを求める掲載企業との間で訴訟に発展するケースが各地で相次いでいます。

ネットでの誹謗中傷を訴えるには複雑なステップがある

ネットで匿名の書き込みで誹謗中傷をなされた場合、すぐに相手を訴えることができません。
相手が誰なのかがわからないためです。
そのため、まずは書き込みをされたサイトに情報開示を求めるとともに、情報開示が得られたら、今度はプロバイダーなどに情報開示を求めるなど、複雑なステップを取らなくてはなりません。
手間も時間も費用もかかる作業となりますので、ネットトラブルに強い弁護士のいる法律事務所に相談し、解決に向けたサポートを受けることがおすすめです。

■ 仮処分でスムーズな解決を

ネットの書き込み削除は、簡易裁判所での仮処分がスムーズな解決の一手段となります。
仮処分とは、裁判で勝ったとしたときの同じ処分を前もって命令してもらえる方法です。
解決の流れとしてはネットトラブルに強い法律事務所に相談をし、仮処分申立書を作成して、簡易裁判所に提出します。
裁判所で削除すべき理由があるかを証明するための審理が行われます。
理由ありと認められれば、担保金を支払い、仮処分命令の発令が出されて、サイト運営会社によって口コミが削除されるという流れです。
重要となるのは口コミの削除に応じるべき理由を、法廷の場で法的根拠を示して立証できるかどうかです。
飲食店のオーナーが単独で立証するのは難しくても、法律のプロである弁護士に任せれば、スムーズな仮処分が期待できます。

 

■ ネットの炎上問題の対処策

近年増えているのがバイトや社員による炎上動画の投稿で、店や企業が批判の的にさらされることや来店数や売上の減少による損失を被る事例です。
通常、従業員などは就業規則などにより、会社に対して誠実に労働する義務を負っているため、義務に違反や会社に対する不法行為として炎上を引き起こした従業員に対して懲戒処分や損害賠償請求が可能です。
従業員らが有名人や特定の個人の情報を洩らすなどして第三者に対する不法行為による賠償責任を負う場合には、店や企業が使用者責任を負わなくてはなりません。
店や企業が第三者に対する賠償を全額支払った場合には共同不法行為者である従業員に対する負担割合を求償できます。
こうした対応を法律事務所が行ってくれますが、炎上トラブルはまた引き起こされる可能性も少なくありません。
そこでネットトラブルに強い弁護士は、起きた事案の解決にとどまらず、今後の未然防止策を講じてくれます。
雇用契約書や就業規則におけるSNSへの投稿に関する規定を設けることの助言やドラフト案の作成、コンプライアンス研修の実施などです。

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