コラム

簡易裁判所ってどんな仕組み?何が出来るの?

■ 低コストでスムーズな問題解決のために

私人間で法律トラブルが生じた場合、法律事務所に相談する方も多いのではないでしょうか。
弁護士は事情や悩みをヒアリングし、最短で最小の労力やコストで問題を解決するための手段を提案してくれます。
その一つとして簡易裁判所における民事手続きがあります。
どのような手続きができるのか、ご紹介します。

 

■ どんな裁判所なのか

簡易裁判所では、民事事件については訴訟の目的となるものの価額が140万円を超えない請求事件に限り、扱うことができます。
簡易かつスピーディーに問題の解決を図る仕組みが構築されており、すべての事件が1人の簡易裁判所判事によって審理および裁判されています。
また、調停委員の仲介のもとで、当事者双方が話し合いによって解決を目指す調停制度が設けられているのも大きな特徴です。
民事手続には民事訴訟、民事調停、支払督促などがあり、争いの内容などに応じて便宜な手続きを選択できるようになっています。
日常生活における紛争を取り扱う身近な裁判所として、裁判所を初めて利用する方や法律知識がない方も裁判所を気軽に利用できるように、手続きについてわかりやすく説明されたリーフレットをはじめ、裁判所に提出する書類が書式に沿って書き込むだけで簡単に作成できる定型訴状や定型調停申立書などが窓口に備わっています。

 

■ どんな手続きができるのか

簡易裁判所で行える主な手続きについてご紹介します。

 

・判決によって解決を図る民事訴訟

民事訴訟手続は財産を巡る争いなど個人の間の法的な紛争について、裁判官が当事者双方の言い分を聞くことや証拠を調べ、判決を通じて紛争の解決を図る手続きです。
簡易裁判所の訴訟手続では、身近な紛争が扱われることから、一般の方の意見を反映して適切で合理的な解決を図れる仕組みが備わっています。
良識ある一般市民から選任された司法委員を審理に立ち会わせて、意見を反映させて判決を言い渡すケースや和解に協力させるケースなどもあります。
また、指定された期日に訴えられた被告が出頭できない場合、答弁書で原告の主張を争わない旨と分割弁済を希望する旨の記載を行うことで、和解に代わる決定が出せるのも他の裁判所とは異なる特徴です。
和解に代わる決定では被告の資力を考慮したうえで、5年を超えない範囲で分割払いを命じることができ、スピーディーな紛争解決が目指せます。

 

・原則1回の審理で済むスピーディーな少額訴訟

60万円以下の金銭の支払いを請求したい場合に選択できる特別な民事訴訟手続です。
少額の訴訟について、原則として1回の審理で紛争解決を図る仕組みです。
なお、即時解決を図るために証拠書類や証人は審理の日にその場ですぐに調べられるものでなくてはなりません。
法廷では一般的な裁判の配置ではなく、裁判官とともにラウンドテーブルに着席して、肩に力の入らないスタイルで審理が進められるのも特徴的です。

 

・調停委員の仲介のもと話し合いで解決を図る民事調停

裁判官または民事調停官と一般の方から選ばれた良識ある2人以上の民事調停委員によって調停委員会が構成され、争いのある当事者双方の言い分を丁寧にヒアリングしながら、話し合いによって解決のための合意形成を目指す手続きです。
合意が成立して、その内容が調書に記載されれば、裁判所がした確定判決と同じ効力を持つのも大きな特徴です。
調停の申立てをするのに特別の法律知識は不要で、申立用紙に記入方法に従って記入をして簡単に申立てができます。
裁判所に納める手数料も訴訟に比べて低額に抑えられているので、話し合いによって低コストで円満解決を目指したい方におすすめです。
訴訟は公開法廷で行われるのが原則ですが、調停は非公開で行われるため、争いが生じていることなどを第三者に知られたくない方にも安心の解決法です。
調停委員のもとでポイントを絞った話し合いが実施されます。
そのため、解決までの時間は比較的短くなるのが一般的です。
事案にもよりますが、通常は2、3回の調停期日で、期間としては3ヶ月以内に調停が成立するのケースが多いです。

 

・書類審査だけで迅速に行える支払督促

申立人の申立てに基づき、裁判官ではなく、裁判所書記官が金銭の支払いを督促する手続きです。
裁判所書記官は裁判所職員として一定期間の勤務経験が必要で、その後、裁判所職員総合研修所入所試験に合格して、研修所で約1~2年の研修を受けなくてはなりません。
法律の専門家として法廷立会や調書作成をはじめ、支払督促の発付などができる固有の権限が付与されています。
金銭、有価証券、その他の代替物の給付に係る請求で、債権者の申立てにより、債権者の主張から請求に理由があると認められる場合は支払督促が発せられます。
ただし、支払督促が行われても、相手方がこれに異議を述べた場合には訴訟手続に移行するので注意が必要です。
債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしない場合、債権者の申立てに基づき、支払督促に仮執行宣言が付されます。
債権者は仮執行宣言に基づいて強制執行の申立てをすることができるようになります。

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