■遺贈とは?贈与とは?知らないと将来困るかも?
「遺贈」と「贈与」の違いについてご存知でしょうか?
両者は名前が似ているので、同じような意味だと勘違いをされている方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、遺贈と贈与は共通点もありますが、実は大きく異なる点もあるのです。
この遺贈や贈与は、遺産の譲り受けを行う際に、とても重要なポイントとなりますので、両者の違いや特徴についてしっかり把握しておきたいところです。
本記事で、遺贈と贈与について解説いたします。
■遺贈の特徴
遺贈は、いぞうと読みます。
主な特徴については、以下の通りです。
・法定相続人以外の第三者へも財産を残せる
遺贈は、法律で定められている相続人以外の人へも、財産を残せるようになるのが特徴です。
民法では、亡くなった方の配偶者、子供、父母や祖父母などの直系尊属、兄弟姉妹などが法定相続人として定められています。
内縁関係だった人や友達などは、この法定相続人に該当しないため、亡くなった方とどんなに親密な関係だったとしても、財産を受け取ることはできません。
ところが、この遺贈を行うことで、民法で定められている法定相続人以外の人でも、財産を受け取れるようになるのです。
ちなみに、この寄贈は、特定の人物のほかに、法人に対して行うことも可能となっています。
・遺贈は遺言で行う
また、遺贈には、遺言で行うという特徴もあります。
生前に遺言を残しておくことで、自分の財産を特定の相手へ承継させることが可能となるのです。
なお、遺言については、「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」、「公正証書遺言」の3種類があります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、その名前の通り、自分で作成する遺言のことです。
他人が代筆したもの、パソコンなどで記入したものなどは、無効となってしまいますので、すべて自分で記入しなくてはなりません。
ただし、財産目録に関しては、パソコンでの一部作成が認められています。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、内容を秘密にできる遺言のことです。
公正証書遺言と異なり証人の立ち合いが不要であるため、遺言の内容を誰にも知られたくないといったケースで使われてきました。
ただし、この秘密証書遺言は、手続きがややこしくなってしまうというデメリットもあることから、現代ではほとんど用いられていません。
公正証書遺言
公正証書遺言は、証人の立ち合いによって作成される遺言のことです。
作成する際に高額な料金がかかってしまうというデメリットはありますが、公証役場で遺言書の原本が保管されるため、紛失の心配がありません。
また、不備によって無効になるリスクが少ないうえに、家庭裁判所で遺言の検認手続きが不要になるというメリットもあることから、一番多く使われている遺言となっています。
・遺贈はいろいろな種類がある
遺贈は、条件付遺贈、期限付遺贈、補充遺贈、負担付遺贈など、さまざまな種類がありますが、「特定遺贈」と「包括遺贈」の2種類については把握しておいたほうが良いでしょう。
特定遺贈(とくていいぞう)
特定遺贈は、遺言者の相続財産の中から、特定の財産を特定しておき、指定した相手へ遺贈することです。
この特定遺贈は、特定された財産のみが遺贈されるという特徴があります。
民法では、受遺者が特定遺贈を放棄する権利が認められているので、もしも財産が不要な時には、遺贈を放棄することも可能です。
包括遺贈(ほうかついぞう)
包括遺贈は、相続財産のすべてを指定した相手へ遺贈することです。
「財産の2分の1を○○へ遺贈する」というように、一定の割合で指定して寄贈することも可能です。
この包括遺贈には、相続人と同一の権利義務を負うという特徴があります。
つまり、借金などのマイナスの財産分も引き受けなくてはならなくなるのです。
もしも、受遺者が財産を受け取りたくない場合には、家庭裁判所へ申述を行うことで、遺贈を放棄することができます。
ただし、家庭裁判所へ申述は、相続の開始から3ヶ月以内に行わなくてはなりません。
■贈与の特徴
贈与は、「ぞうよ」と読みます。
遺贈と違って、この贈与はどこかで耳にしたことがあるという方も多いことでしょう。
贈与は、民法第549条では、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と規定されています。
贈与の主な特徴については、以下の通りです。
・生前から財産を譲ったり受け取ったりできる
贈与の特徴は、生前贈与が可能なことです。
遺贈の場合には、遺言者が亡くなってからでないと財産を譲ることができませんが、贈与は生前から財産を譲ることができます。
子供がマイホームを建てる資金を援助するためや将来の相続税節約のために、贈与が行われるケースが多いです。
生前贈与については、後の項目でさらに詳しく解説いたします。
・法定相続人以外の人にも財産を譲ることができる
法定相続人以外の人へも財産の譲り渡しができることも、贈与の特徴です。
同棲相手など内縁関係者、親友、お世話になった人など、法定相続人や肉親以外の人達も、贈与の対象とすることができます。
・口約束だけでも成立する
贈与は、口約束だけでも成立するという特徴もあります。
ただ、口約束だと相手の気が変わってしまった場合に、贈与契約が取り消しになってしまうというリスクがあります。
後から、言った言わないでトラブルにならないように、書面で残しておくのが安心です。
・贈与は3種類ある
贈与は、「生前贈与」と「死因贈与」と「負担付贈与」の3種類があります。
生前贈与
生前贈与は、亡くなる前に贈与を行うことです。
贈与者と受贈者の両者がお互い生きている間に行われます。
死因贈与
死因贈与は、その名前の通り、贈与者が亡くなった時に行われる贈与のことです。
贈与者と受贈者の両方が合意して行うのが特徴です。
受贈者側の承諾が得られない場合には、死因贈与契約は成立しません。
負担付贈与
負担付贈与は、贈与者が受贈者に対して一定の負担を課す贈与ことです。
たとえば、車を譲る代わりに残ったローンを支払ってほしいといったケースが負担付贈与に該当します。
また、贈与者が飼っているペットを引き継ぐことを条件に、受贈者へお金を渡すことも負担付贈与に含まれる場合があります。
■遺贈と贈与の共通点とは?
遺贈と贈与の共通点は、法定相続人以外へも財産を譲ることができることです。
通常の相続の場合には、民法で認められた法定相続人が相続の対象となるので、親族以外は財産を受け継ぐことができません。
でも、遺贈と贈与であれば、同棲相手や内縁関係者、お世話になった人など、血縁関係者以外へも財産を譲ることが可能となるのです。
■遺贈と贈与の違いとは?
遺贈と贈与の大きな違いは、「遺言」と「税金」です。
・遺言状の有無の違い
遺贈は遺言によって行われますが、贈与は遺言なしでも財産を譲ることができるという違いがあります。
なお、遺言は、遺言状を残した人が亡くなった時に効力が発揮されるため、遺贈は財産の受け取りが死後になるのです。
贈与に関しては生前贈与も可能なので、亡くなる前でも財産の譲り受けができるという違いもあります。
・税金面の違い
遺贈と贈与は、税金面での違いもあります。
遺贈は「相続税」、贈与は「贈与税」が課税されるのです。
遺言状によって相続財産を引き継ぐ遺贈は、亡くなった後に行われるものであるため、相続税の対象となります。
ただし、基礎控除の金額に満たない場合には、相続税がかからないこともあるのです。
贈与は、贈与税の対象となります。
贈与税が発生するのは、年間で110万円以上の贈与を受けた場合です。
この金額以下であれば、贈与税はかかりません。
相続税と贈与税のどちらも、基本的に財産を受け継いだ側が支払わなくてはなりません。
高額な遺贈や贈与を行う場合には、受け継ぐ側が税金面での負担がかかってしまうリスクがあることも知っておいたほうが良いでしょう。
■遺贈と贈与に関するまとめ
以上、遺贈と贈与の特徴や違いについて解説いたしました。
両者は法定相続人以外も財産を受け継げるという共通点がありますので、内縁関係者、友達など肉親以外へ遺産をあげたい場合に利用できます。
遺贈と贈与の違いは、遺言状と税金面です。
遺贈は、自筆証書遺言や公正証書遺言などの遺言が必要となりますが、贈与は口約束だけでも成立する場合があります。
また、遺贈と贈与は、それぞれにメリットとデメリットがありますので、その点もよく考えておく必要があります。