コラム

相続法改正!何がどう変わったのか?適応対象は?

■相続法を解説

40年ぶりに改正された相続法は、より時代にあった公平なものとなりました。
気になるのは何がどのように変わったのか、ということではないでしょうか。
今回の改正では、変更・新設あわせて8項目あります。
ここでは、8つの改正ポイントから、相続法がどう変わったのか解説します。

■相続法改正8つの項目

今回改正された相続法の特長は、改正または新設された、以下の8つのポイントです。
1.配偶者居住権(新設)
2.財産目録の作成の緩和
3.法務局による自筆証書遺言の保管(新設)
4.預貯金払い戻し制度(新設)
5.遺留分制度の見直し
6.遺言の活用
7.特別寄与の制度(新設)
8.自宅の生前贈与が特別受益の対象外に
従来の相続法では、対応できないケースが生じたり、法律によって相続人が不利な状況になったりすることもありました。
さまざまな問題を解消するために改正が行われましたが、次の章では、改正ポイントや変わったことについて、項目ごとに解説します。

■8項目の改正ポイントと変わったこと

相続法改正によって何がどう変わったのか、8項目別に見ると理解しやすくなります。
各項目の施行日はバラバラですが、2020年7月10日までにすべての項目が施行されました。

・配偶者居住権(新設)

被相続人の配偶者が、被相続人亡き後も同じ場所に住み続けられる権利です。
従来は、遺産分割などで配偶者は住宅を相続したものの、現金は相続できず、配偶者の生活が保証されないケースもありました。
配偶者居住権新設後は、居住権と所有権を分けることで、配偶者は無償で自宅に住めるようになりました。
また自宅とともに現金の確保も可能になるため、相続後の生活が安定します。

・財産目録作成の緩和

財産目録は、自筆証書遺言に添付されるもので、すべて手書きによって作成されていました。
従来の相続法では、「全文の自署」という要件が付けられたため、手間がかかることはもちろん、認知症などで文字を書くことが難しい人の場合は、作成がさらに困難になっていました。
制度が改正されたことにより、財産目録をパソコンで作成することができます。
書遺言は、自筆であることが条件ですが、一部緩和されたことで、これまでよりも負担が軽くなりました。

・法務局による自筆証書遺言の保管(新設)

新たに新設された制度で、法務局で自筆証書遺言を保管する選択肢が増えました。
これまでは、法務局は遺言書を管理しておらず、ほとんどの人は自宅などに保管していたのです。
ところが、遺言書が紛失したり、悪用されたりなどトラブルに発展し、遺言書の執行がスムーズにいかないというケースも少なくありませんでした。
法務局が自筆証書遺言を管理することで、故人の意思を尊重した遺言書の執行が期待されます。

・預貯金払い戻し制度(新設)

預貯金の払い戻し制度は、相続法改正後に新設された制度で、被相続人の口座からお金の払い出しが容易になりました。
現行の法律では、遺産分割が終了するまで故人の口座からお金を引き出すことはできず、遺族にとって悩みのタネとなることもありました。
複数の相続人がいる場合、単独で故人の口座から引き出せないため、誰が葬式代を負担するかなどのトラブルが発生します。
特に相続人同士の仲が悪いと、問題がこじれる傾向があります。
預貯金払い戻し制度では、遺産分割の協議中であっても、必要であれば故人の口座から一定額引き出すことが可能で、すべての相続人の同意を得なくても、引き出せるようになりました。

・遺留分制度の見直し

今回の改正では、従来の遺留分制度が見直され、新たなルールが設定されました。
変更されたのは、「遺留分請求権が目的物から金銭になった」「遺留分算定方法がより具体的になった」の2点です。
遺留分とは、相続人に最低限保証されている遺産の権利ですが、それが侵害された場合、目的物の請求として権利を主張していました。
ところが目的物請求だと、不動産など同一のものを共有することになり、それをキッカケにさまざまなトラブルが発生していました。
たとえば遺産で共有することになったマンションを相続人の1人が売却したいと考えても、残りの権利を持つ相続人に反対された場合、売却することはできません。
そこで目的物から金銭に請求権を変更したのです。
制度が見直しされたことで、相続人が請求できるのは金銭のみとなり、物の共有という問題が発生しないようになりました。
さらに、制度が見直しされたことにより、これまで呼ばれていた「遺留分減殺請求」は、「遺留分侵害額請求」という名称に変更されました。

・相続の効力等の見直し

相続が法的相続分を超えた場合の相続の効力について見直され、改正が実施されました。
新たな制度になってからは、法的相続分を超えた場合、登記や登録することが必要です。
たとえば不動産を相続した場合、改正前はほかの相続人が第三者に売却しても、財産の所有権を主張するための要件(対抗要件)が異なりました。
遺言執行人が、相続人から執行の妨害を受けることもあります。
改正後は登記や登録が義務付けられますので、相続人が第三者に対して無効を主張することができなくなりました。
この改正は、相続人ではなく、第三者を保護するためのものと考えて良いでしょう。

・特別寄与の制度(新設)

特別な寄与とは、生前の故人に対して行われた、無償の介護やお世話のことを言います。
特別寄与の制度は、改正後に登場した制度で、特別寄与がより公平に行われることを目的としています。
従来の制度では、特別寄与はあまり考慮されず、たとえ個人に手厚い看護をしていなくても、子供や配偶者であれば、当たり前のように遺産を相続でき、そうでない場合(たとえば長男の嫁)は、故人に対してどんなに親身になっても遺産を相続する権利は発生しませんでした。
新しい制度では、特別寄与が考慮され、相続人以外の人(貢献者)も、相続者に対してそれ相応の金額を請求することが可能になりました。
寄与料と呼ばれるもので、もし相続人が寄与料の支払いを拒否した場合、貢献者は家庭裁判所に申し立て可能です。

・自宅の生前贈与が特別受益の対象外に

結婚期間が20年以上の夫婦間で生じる相続が対象になります。
これまで配偶者に対して生前贈与された自宅は、原則として特別受益の対象となり、被相続人が亡くなった後、相続財産として計算されていました。
通常生前贈与は、被相続人亡き後、遺された配偶者が生活に困らないように行われる傾向がありますが、特別受益として計算されたことにより、相続する遺産が十分ではなく、配偶者が生活に困るというケースが発生したのです。
この問題を解消しようと、改正後は自宅の生前贈与が特別受益の対象外になりました。
対象外となることで配偶者は、自宅を除いた財産の相続が可能です。
自宅と加えると、配偶者は改正前よりも多く財産を相続できるようになります。
自宅が特別受益の対象外とされるのは、結婚期間が20年以上と決められていますが、制度が適用された配偶者は、より安定した生活が送れるようになります。

■法改正を確認しましょう

相続法改正によって、相続の問題が解消されることや問題解決の労力が軽減されることが期待されます。
相続の問題が持ち上がる時は、被相続人を亡くした悲しみや相続についての手続き、ほかの相続人とのやり取りなど疲労がピークに達しやすい時期と重なるのです。
相続の問題が発生してから改正ポイントについて理解しようとすると時間がかかることが考えられます。
将来相続の予定がある場合は、早めに改正ポイントを確認し、いざという時に備えておきましょう。

あなたの「不安」を取り除いて、「安心」へ。
まずはお気軽にお問合せください。

お問合せフォームへ

【受付時間:平日午前10時から午後5時30分まで】