コラム

遺産相続で起こりがちな三大トラブル

■さまざまな問題が起こり得る遺産相続

遺産相続が行われる際にはさまざまな問題が起こり得ます。
知ってたのと知らなかったのでは大きく異なりますので、今回は問題の中でもよく起こりがちな問題を紹介いたします。

 

■兄弟間での遺産相続トラブル

どんなに仲の良い兄弟でも遺産相続の話し合いが始まると思いもよらなかったトラブルが発生し喧嘩になってしまったという話も耳にします。
年々、遺産相続のトラブルは増えており、その多くが兄弟間での揉め事です。
特に親に多額の遺産がある場合、取り分で揉めてしまう兄弟も少なくありません。
遺産相続トラブルを避けるためには、事前に兄弟でじっくりと話し合うことも大切です。
また、親が存命のうちに遺産内容を把握しておくこともトラブルを回避する方法といえます。
兄弟間で起こる遺産相続トラブルの多くが不動産です。
不動産は高額なものが多く、遺産のほとんどの価値を占めます。
また、不動産は土地や建物などを指しますが、現金とは違い柔軟に分けることができないのもトラブルを引き起こす原因となります。
不動産の遺産相続は、柔軟な分割が行えないため、トラブルを回避するには事前に兄弟で話し合いの機会を設けるだけでなく親に遺言書を作成してもらうことも解決策です。
土地や建物などの不動産は、生前のうちに子どもたちに相続することは難しいので、不動産の名義変更を行うという選択肢をおくことも間違いではありません。
兄が不動産を相続するのであれば弟は相当額の現金を受け取るなど、分割方法をじっくりと検討する必要があるでしょう。
また、兄弟間での遺産相続トラブルには、親の介護の負担による取り分の差によって生まれることもあります。
たとえば親と同居していた兄が長い間介護をしてきたのに遠方に住んでいた弟と遺産の取り分が変わらないというケースで揉めた事例もありました。
兄弟間で親の介護に関する共通理解が示されておらずトラブルに発生してしまうことも少なくないでしょう。
このようなトラブルが発生した際には、寄与分に注目してみることが大切です。
寄与分とは、親にどれくらい貢献行為をしたかで相続する金額が上乗せされるかが決まる制度です。
親の介護を何年もしていた、親の会社を継いで利益を上げたなど貢献行為が認められる場合、民法904条により遺産相続の取得を増やすことができます。

 

■不公平な遺言書

親が生前遺言書を残していたというケースは多くあります。
しかし、その内容に目を通してみると不公平で納得できないものであったというトラブルも増えています。
本来であれば自分も相続人となっているはずなのに親が残した不公平な遺言書により、相続できなかったという辛い経験をした方もいるのです。
もし、親が残した遺言書があまりにも不公平で納得できない内容であった場合、有効になるのでしょうか。
実は、相続人から見たときに不公平な内容の遺言書であっても有効となります。
あくまでも被相続人の意思によって書かれた遺言書であれば内容はどうであれ有効だと認められてしまうのです。
自身が築き上げた財産をどのように相続人に分けるのかは被相続人が自由に決めることができるため、遺言書が残されている場合、その内容に従わなければいけません。
そのため、兄弟が複数いたとしても長男だけに遺産を受け渡すことや愛人や友人にすべての財産を渡すことも被相続人の遺言書がある限り無効になることはありません。
しかし、あまりにも遺言書の内容が不公平な遺言書の場合、一定の範囲の法定相続人であれば遺留分が認められ適切な相続を受けることができます。
遺留分とは、相続人が必ず受け取れる財産を指し、配偶者や子、直系血族が遺留分侵害額請求を行うことが可能です。
それぞれの相続人の遺留分の割合には違いがありますが、納得できない不公平な遺言書で悩んでいるなら遺留分請求を行ってみると良いでしょう。

 

■負の財産のほうが多い

遺産相続の話し合いを進める中でプラスになる財産よりもマイナスになる財産のほうが多いというトラブルもあります。
遺産と聞くと預貯金や不動産などをイメージしますが、借金も財産として引き継がなければなりません。
中には、遺産よりも債務のほうが多いというケースもあります。
このような場合、相続人が借金を背負わなければいけないのかと頭を悩ませてしまうこともあるのではないでしょうか。
しかし、借金などの負の財産は相続放棄を行えば相続人であったとしても責任を負うことはありません。
相続放棄するとプラスの財産も受け取ることはできませんが、被相続人の債務の責任を負うこともないので、借金に抵抗があるという方は家庭裁判所で手続きを進めてみると良いでしょう。
また、相続放棄のほかにも限定承認という手続きを行うことも可能です。
限定承認とは、相続時に得たプラスの財産の限度内においてマイナスの財産を相続することができる制度です。
相続放棄や限定承認の手続きは、被相続人が亡くなったと知ってから3ヶ月以内に行わなければいけません。
複雑な内容となっているだけでなく手続きもややこしいので、スムーズにトラブルを解決するなら専門的な知識を持つ弁護士に相談してみると良いでしょう。

 

■事例1:兄弟姉妹における不動産相続をめぐるトラブル

すでに父親が亡くなっているX家で、母親のYが亡くなりました。
X家は長女A、長男B、次女Cの3人の兄弟姉妹がいます。
長男Bと次女Cは実家を出て結婚し、それぞれ家族を持っています。
長女Aは独身で実家に暮らしながら、高齢になった母親Yの介護を行い、最後まで看取りました。
Yの遺産は父親から受け継いだ実家の自宅(建物+土地)2,000万円相当のみで、預貯金は介護や医療費で使ってしまい、ほとんど残っていません。
長女Aは自分が介護をして頑張ってきたし、ずっとこの家に住み続けてきたし、我が家は資産家でもないのだから、実家を自分が相続することに弟や妹は同意してくれるだろうと思っていました。
ですが、実際には長男Bは自宅を売って売却資金を分けるべきだと主張し、次女Cは実家に住んでいてもいいから、長女Aが長男Bと次女Cに相続分相当のお金を分け与えるべきだと主張してきたのです。
売却して引っ越すのは負担も大きいと考えた長女Aは、父親が亡くなった際に3人で分けて受け取っていた現金800万円と自分で貯金してきた500万円の合計1,300万円の預貯金の中から、2人に600万円ずつ渡すことで合意を得ました。
遺産分割協議はどうにか成立できましたが、長女Aに住宅は残されたものの、預貯金は100万円しか残らず、不安を抱える結果となってしまいました。

■事例2:全額遺贈する遺言書が残されていた

父親Aが亡くなったY家には妻Bと子どもCとDの法定相続人が3人います。
Aは生前に公正証書遺言を残しており、出身大学に預貯金全額の遺贈を行い、故人の名を冠した奨学金を新設する約束を大学と取り交わしていました。
Aは大学や弁護士などを通じて手続きを行っていたようですが、妻や子どもに対して生前にそのような話はまったくしていませんでした。
父親Aの遺産は老朽化したマンション1,500万円相当と預貯金4,500万円です。
法定相続分に基づいて妻Bが3,000万円、子どもCとDはそれぞれ1,500万円ずつ遺産相続をするつもりであった3人は遺言書の内容に驚き、遺贈相手である大学とトラブルになりました。
遺言の内容は遺留分を侵害していると主張して争いになり、弁護士を立てたうえで、現在も係争中です。
弁護士費用は持ち出しなので、余計なコストがかかり、時間もかかることに悩まされています。

■事例3:多額の借金が残された

Z家の亡くなった父親Aは、小さいながらも社長として会社経営をしていました。
法定相続人となるのは妻Bと息子Cです。
遺産として残されたのは2,000万円相当の自宅、500万円相当の株式、預貯金1,500万円の4,000万円でした。
ですが、零細企業であったために会社としての借り入れが難しく、A個人が借りたものやAが個人保証して借りた借金があり、利息も膨らんで5,000万円相当の借金が残されていることが発覚したのです。
プラスの遺産より、マイナスの遺産のほうが1,000万円多い状態です。
息子Cとしては自宅や株式を売り、預貯金を使って借金の返済も考えましたが、それでも1,000万円が残されてしまいます。
妻Bと2人で相続放棄も考えましたが、自宅に住み続けるために、限定承認をすることにしました。
プラスの財産である4,000万円相当を限度に返済すれば良いわけですが、自宅を売るわけにはいきません。
そこで、まずは500万円相当の株式、預貯金1,500万円の2,000万円分を返済し、妻Bと息子Cが保有していた預貯金を合わせて残る2,000万円を返済することになったのです。
自宅は残されましたが預貯金が減ったことで相続放棄をすべきだったか、今でも悩んでいます。
一度、家庭裁判所で限定承認の手続きを取ってしまった以上、撤回することもできず、難しい判断を迫られた事例です。

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