不動産を相続しても、マイホームをすでに所有している場合や別荘や遊休地など使うニーズがないケースも少なくありません。
必要がない不動産を売却したい際や資金ニーズがあるために換金したいとき、どのように売れば良いのか、不動産相続後の売却ポイントと注意点、遺産分割から売却までの流れをご紹介します。
■相続した不動産を売却する際のポイント
不動産相続をし、相続税を支払った相続人が承継した不動産を売却したい場合、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例の適用を受けることが可能です。
相続により取得した土地や建物を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合に、納税した相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる特例です。
特例の適用を受けることで、売却に伴う譲渡所得税が軽減される可能性があります。
特例を利用するためのポイントは相続税を支払っていること、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却することです。
3年を超してしまうと適用が受けられないので、売却のタイミングにも気を付けましょう。
不動産相続をして空き家となっている、亡くなった方の自宅を売却したい場合には、相続税の支払いの有無を問わず、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例が適用される可能性があります。
相続により取得した居住用家屋や居住用家屋の敷地などを、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売却した場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができるため、高く売れた場合でも大幅な所得税の軽減が期待できます。
ただし、特例の適用を受けるにはいくつもの条件を満たさなくてはなりません。
主な条件として、相続の開始の直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋であることが必要です。
その家屋は昭和56年5月31日以前に建築された古いたてものであるうえ、譲渡のときにおいて一定の耐震基準を満たさなくてはなりません。
また、区分所有建物登記がされている建物でないことが必要なため、基本的には一戸建てが対象です。
そして、特に気を付けたいポイントが以下の点です。
相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったことが必要で、不動産相続をしてから譲渡のときまでの間に事業用に使ったり、貸付をしたり、誰かが居住用にしてはいけません。
さらに相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが必要であり、売却代金は1億円以下でなければ適用が受けられません。
亡くなる前に介護などのために通いで看病に通う場合や住民票を移さず、一時的に住み込んで介護するなら問題ありませんが、引越しをして同居してしまうと、この特例の対象にならないため、注意が必要です。
また、近年は空き家の放置が問題視されていますが、だからといって、家族や親族などが一時的にでも居住してしまうと適用ができなくなります。
買い手が見つかるまでの間、少しでも利益を得たいと駐車場に貸した場合や貸家として貸すと、やはり適用が受けられなくなるので注意しましょう。
■相続した不動産を売却する際の注意点
不動産相続をして売却するには、まずは遺産分割を行って、誰のものにするかを決定する必要があります。
相続人全員が承継した不動産を換金して、現金を分割して受け取りたいと考えていたとしても、遺産分割をせずに売ることはしないようにしましょう。
というのは、不動産相続をした段階では相続人が法定相続分に応じて共有している状態です。
遺産分割をしていない限り、1人の相続人が売却できるのは、自己の法定相続分にとどまります。
たとえば、3人兄弟で自宅を不動産相続して、長男が遺産分割前に売ったら、売れるのは3分の1だけです。
残る3分の2は他人物売買となってしまい、買い手と次男、三男の共有となってしまい、自宅を丸ごと買いたい買い手の目的が達成されません。
次男、三男が追認してくれれば良いですが、気が変わって自分が相続したいなどと言い出せば、権利関係が複雑化してしまいます。
買い手とのトラブルを避け、スムーズな売却をするためにも遺産分割をまず行い、誰が取得するかを決定しましょう。
また、遺産分割をしたら登記名義の変更もしなくてはなりません。
どうせ売るのだから無駄な手間や費用はかけたくないと考える人もいますが、亡くなった方どころか、それ以前の所有者名義のままであるケースもあり、スムーズな売却ができなくなるためです。
■売却までの流れ
まずは相続財産の調査と相続人の確定を行い、相続人全員の合意のもとで誰が不動産相続をするかを決めて、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書などを添付のうえで登記名義の変更を行うとともに、相続税が発生している場合には納期限までに納付を済ませます。
その後、特例について条件を確認し、特例の適用を受けたい場合には条件を満たすように、売却の時期などに気を付け、買い手を探しましょう。