コラム

フレックスタイム制と変形労働制の違いは?導入の流れについても解説

■変形労働時間制とは

会社での労働形態は一つではなく、フレックスタイム制や変形労働時間制などがあります。
この2つはそれほど珍しい労働形態ではありません。
しかし、その違いは何かと聞かれると、説明に困る人も多いのではないでしょうか。
フレックスタイム制と変形労働時間制は、異なる労働形態です。
それぞれの特徴や違いを知ることで、企業は条件に合ったほうを、迷わず導入できるでしょう。
この記事では、両者の仕組みや違い、企業が導入する際の流れについて、わかりやすく解説します。

1.どんなシステム?

変形労働時間制は、原則として決められている就業時間(1日8時間、週40時間)にとらわれずに働けるように、1週間、1ヶ月、1年とユニットを決めて働く労働形態のことです。
就労時間を規則正しく決められない業種で働いている人が、最終的に原則の就労時間働けるように調節することを目的としています。
働く時間が不規則になると、その合計が把握しにくく、場合によっては原則の就労時間をオーバーしてしまうことも考えられます。
しかし、期間を決めて、柔軟性を持たせることで、適切な就労時間内で働けるようになるでしょう。

2.1年、1ヶ月、1週間、それぞれの特徴

変形労働時間制は、1年、1ヶ月、1週間というユニットで調節されます。
業種によっては、夜間勤務を必要とする場合や繁忙期・閑散期の差が激しいものもありますが、円滑に事業を進めたい会社の都合に合わせて就労時間の配分を可能にします。

・1年単位の特徴

この制度の特徴は、1年以内の就労時間を調節する点にあります。
1ヶ月ごとに期間を区切り、それぞれ就労時間を決めることができます。
実際に働いた時間が、あらかじめ決めておいた時間よりもオーバーした場合は、36協定と締結し、届け出なくてはなりません。
期間内は、原則の就労時間よりも柔軟に設定できますが、1日10時間以内、1週間52時間以内と制限されています。

・1ヶ月単位の特徴

1ヶ月以内の労働のばらつきを調整する場合に採用されるのが、「1ヶ月単位」です。
実施前に、各日と各週の就労時間を決めておき、それをオーバーした場合は36協定との締結と、届け出が求められます。
週ユニットで就労時間を決定する必要があり、通常は40~44時間以内に収めることが必要です。

・1週間単位の特徴

1年や1ヶ月よりも利用頻度の低い制度ですが、土日も働くことが必要になる業種向けです。
決定できる就労時間は、その日ごとで行います。
一度決定した就労時間は、原則として変更できませんが、やむを得ない事情で変更が必要になる場合は、前日までに書面にて通知することが求められます。

■フレックスタイム制とは

変形労働時間制と一緒に挙げられるのがフレックス制です。
どのようなシステムなのか説明していきます。

1.どんなシステム?

フレックスタイム制とは、社員一人ひとりの就労時間帯を柔軟に変更させて、実質の就業時間に満たすよう調節する雇用形態です。
たとえば、1日8時間の就労時間が必要になる場合、2人で4時間ずつ働くなど、従業員の希望や都合に合わせて働くことができます。

2.特徴

フレックスタイム制は、従業員の都合をもとに調節します。
そのため、従業員にとって、フレックスタイム制のほうが変形労働時間制よりも就労しやすい傾向にあります。
フレックスタイム制の特徴は、出社と退社時間がフレキシブルであるという点です。
あらかじめ1日の就労時間を決めたら、それに合わせて出社・退社できるようになります。
変形労働時間制は、1日・1週間など一定期間の労働期間を精算し、それをオーバーした時間は、時間外労働とみなされるのです。
一方、フレックスタイム制の場合は、精算期間全体から、実際の就労時間を見て、週40時間をオーバーした分は、時間外労働手当の対象となります。

■みなし残業や裁量労働との違い

変形労働時間制やフレックス制を取り入れる際にポイントとなるのがみなし残業や裁量労働です。
みなし残業と裁量労働はどのように違うのか、どのようなポイントがあるのか説明していきます。

1.みなし残業とは

みなし残業は、いわゆる固定残業制度と呼ばれるもので、あらかじめ残業代を決め、一定額支払うことを言います。
よく、雇用契約の中に、「月○○時間の残業代を含む」と書いてありますが、これは、給料にあらかじめ一定時間の残業代が含まれていることを意味します。
その時間内の残業には、追加の残業代は支払われません。
もし、残業が決定した時間をオーバーした場合は、その分が時間外労働手当となります。

2.裁量労働とは

みなし労働の中に、裁量労働という制度があります。
みなし労働とは、たとえば、営業で外回りにおける就労時間は、経営者が実際に確認しているわけではないため、正確な就労時間を把握することが、難しくなります。
出張で会社以外の場所で就労する場合も、同じです。
どのような場合に、みなし労働とみなされるのか、もう少し詳しく見てみましょう。
会社以外の場所での就労時間であることと同時に、就労時間を算出することが難しいと判断された場合に適用されるのが、みなし労働です。
判断の基準には、会社が直接指示を出すのが難しい状況で活動する場合や時間管理する者が業務者の中にいないことなどが挙げられます。
そして、みなし労働を就労時間に換算するときに使われるのが、裁量労働です。
裁量労働には、「専門業務型裁量労働法」と「企画業務型裁量労働法」の2種類あります。
専門業務型裁量労働法は、時間配分が難しい業種(研究開発者など)を対象に、みなし労働に沿って労働時間を裁量するのです。
この場合の就労時間は、労働組合とともに定めた、みなし規定に基づきます。
企画業務型裁量労働法は、管理職向けの裁量労働です。
企画業務型裁量労働法を実際に行うには、労使委員会で決議される必要があります。

■企業が導入する際の手続き方法、流れ、注意点などを紹介

フレックスタイム制、または変形労働制を取り入れる場合、どのように手続きを進めていく必要があるのでしょうか。
各制度について、主な流れや注意点などについて紹介します。

・変形労働時間制

この制度を取り入れる際、はじめにすることは、勤務状況の確認です。
従業員の勤務状況を確認し、何が問題になっているかを明確にすることが、変形労働時間制を取り入れる・取り入れないの判断材料となります。
たとえば、閑散期と繁忙期に波があり、従業員の雇用形態が、それにうまく対応していないことが判明した場合、変形労働時間制の取り入れが必要になると考えられるのです。
現状に合わせた就労時間の配分を検討し、制度を取り入れることで、その問題が解消されると判断されると、進行プランを策定する段階に入ります。
進行プランを策定する際にポイントとなるのは、現状に沿った就労時間を適切に配分することです。
進行プランを設定後は、就労規則の決定へと作業を進めます。
就労規則の決定とともに忘れられないのが、労使協定の締結です。
これは、会社と雇用者の間で発生する、取り決めのことです。
協定の締結は、従業員が10人以下の企業では、概略できますが、そうでない場合は、必ず実施しなくてはなりません。
協定の締結、そして就労規則の作成を経て、労働基準監督署に変更届をします。
もし、明確にした労働時間以外も労働が発生すると考えられる場合は、労働基準監督署に届け出するのと並行して、36協定の提出も必須です。
届け出は、就労規則が変更された時点で、速やかに行う必要があり、36協定も、有効期限以内に届け出することが義務付けられています。
忘れないように、同時に届け出すると良いでしょう。
手続きが終わったら、変形労働制を取り入れたことを、社内に周知します。
この過程をスキップしてしまうと「変更があったことは知らなかった」となり、後のトラブルに発展する可能性が高くなります。
また、社内に周知することは、変更によって新たに生じた業務を、円滑に行うためにも有効です。
変更の程度にもよりますが、導入した後は、必ずと言って良いほど混乱が発生します。
また、実際に実施してみないとわからないこともありますので、取り入れ後は、運用のテスト期間として、PDCAサイクルを回しながら、改善点がないかどうかチェックするようにしましょう。
その際、従業員からのフィードバックは、大いに役に立ちます。
修正できる点は、できるだけ早く修正し、フィットさせていくことが、ポイントです。

・フレックスタイム制

フレックスタイム制の取り入れを決めたら、就業規則に、変更を盛り込まなくてはなりません。
フレックスタイム制の特徴は、出社と退社の時間を従業員に委ねる特徴がありますが、その旨を就業規則に盛り込むことがポイントです。
フレックスタイム制を就業規則に盛り込んだら、労使協定を締結する段階に入ります。
労使協定では、フレックスタイム制が適用される範囲をはじめ、起算日を含む決算期間、コアタイムとフレキシブルタイムなどが、主な取り決めの内容となるでしょう。
フレックスタイム制は、従業員が始業または終業を自由に決められるというメリットはありますが、そうすると、早朝出勤や深夜の出勤も許してしまうなど、会社にとって都合の悪いことも生じます。
そうした問題を避けるためにも、労働可能な時間帯を、あらかじめ決めておく必要がありますが、それがコアタイム・フレキシブルタイムです。
変形労働時間制と同じく、フレックスタイム制でも、決定した就業時間以外は、時間外労働手当の対象となります。
つまり、36協定の締結と届け出が必要になることを、忘れないようにしましょう。
これ以降の手続きは、変形労働時間制とほぼ同じになるため省略します。

■従業員への周知や変更届などを忘れないようにしましょう

変形労働時間制とフレックスタイム制の特徴、制度を取り入れる流れや取り入れる際の注意点について、解説しました。
両者は、社員が原則の時間にとらわれずに、自由に就労できることを目的とした制度です。
時間軸であるか、従業員軸であるかが、大きな違いと言えるでしょう。
どちらの制度も、就業規則を変更し、労使協定に変更を認めてもらい、労働基準監督署に変更届を提出します。
変更したことを社内に正確に伝えますが、具体的にどこがどう変わり、どのように実施していけば良いか、従業員に対して明確なポイントを示すことを忘れないようにしましょう。

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