コラム

知的財産権を守るために弁護士は何ができるか?

■財産は形あるものだけではない?

普段我々が財産というときは目に見えるものをイメージします。
たとえばコインやお札などといったお金はその一つでしょう。
また、家や土地のような不動産もまた財産に含まれます。
しかしながら、財産はそうした目に見えるものに限られません。
人間が自らの頭脳を使って生み出したアイデアや作品は、知的財産とみなされているのです。
これは法律でも規定されていることで、経済産業省は知的創造活動によって生み出されたものを知的財産と定義しています。
今回は知的財産にはどういうものが含まれているのか、そして弁護士はそれを守るためにどのような活動を行えば良いのかを紹介していきます。

 

■知的財産権の種類は?

知的財産には大きく分けて二つの種類があります。
一つは「絶対的独占権」といって、それを他人が許可なく利用することができないものです。
たとえば特許権、実用新案権、意匠権、商標権、そして育成権などはこれに含まれます。
特許を取ったアイデアなら、それを利用する際は特許庁や特許を持っている人に申請をしなければ転用することは許されません。
もう一つは「相対的独占権」といって、絶対的独占権に比べて許可がなくとも一部は利用できるものです。
これには著作権や回路配置利用権が含まれています。
たとえば本の記述の一部をほかの本を書く際に引用したとしましょう。
それは権利を侵害したとはいえません。
一方で、全文を著作者の許可なくコピーし、複数の人に配布したら明確に侵害にあたります。
このように相対的独占権においてはすべての権利を完全に保護することはできないのです。

 

■特許と実用新案の違いはどこにある?

まずは特許と実用新案について詳しく説明していきましょう。
特許は産業活動において利益を生み出し得る発明をした人に与えられるものです。
特許を得た際には、一定期間関連製品の発明を独占することができます。
たとえばある会社が車を発明し、特許を得たとしましょう。
その車が利益を生み出し続けるのを見て、ほかの会社も自社でも車を作りたいと思ったとします。
その際は正式な申請を出さなければ車を作ることはできません。
この申請を出さなければ、特許法によって罰されてしまいます。
一方で実用新案もまた特許と同じように、新しいアイデアに対して与えられる権利です。
しかしながら、特許と違ってあくまでもアイデアだけで申請することができます。
特許を取るためには相当な審査が必要とされています。
この発明は本当に実現可能なのか、開発に成功したとして利益を生み出すことができるのか、などなどさまざまな基準に基づいて審査が行われるのです。
一方で、実用新案は実現可能性や利益性は問いません。
こういう設計図に基づいて作れば、こういう製品ができるのではないかという提案だけでも実用新案として認められるのです。
よって権利の保護期間もそれぞれ異なり、特許は20年である一方で実用新案は10年です。
それぞれの違いに注意を払いながら、自分のアイデアはどちらに申請すれば良いのかを見極めていきましょう。

 

■デザインにも権利がある?

続いて紹介する意匠権は、簡単にいえばデザインのアイデアを守る権利です。
意匠法では意匠について少々難しい定義をしていまして、物品の形状や模様、そして色彩などが人の視覚を通じて美感を与えるものならばすべて意匠にあたるとされています。
意匠の一例としてはファッションが挙げられるでしょう。
ファッション界においては毎年のようにデザイナーによって独特なデザインが発表されています。
デザイナーが有名であればあるほど、そうしたファッションはブランド価値を高めていくでしょう。
一方でブランド価値を利用するために、偽物を作って売りさばこうとする悪徳業者は後を絶ちません。
こうした人々からデザイナー独自のアイデアを守るためにも、意匠という概念は欠かせないのです。
もっとも、美感をもたらすものであればすべて意匠法の対象であるとは限りません。
たとえば絵画や彫刻作品のような美術に属するものは、著作法の対象となります。
意匠権の保護期間は20年とされていましたが、2019年から25年に延長されました。
情報の更新を忘れた結果権利を疎かにしてしまった、ということにならないよう注意しましょう。

 

■商品の権利を守る商標

商標権はその名から想像できる通り、商品の権利を守るためにある概念です。
もっとも、これは商品の中身ではなく商品のロゴマークなどに付与される権利といえます。
たとえばある会社が従来の業界にはなかったジュースを販売したとしましょう。
ペットボトルの中に詰まっているジュースは、あくまでも特許の対象になるものです。
ペットボトルのラベルであったり、そこに付けられた自社のマークだったりが商標の対象になります。
あるラベルを見たらあの会社の商品だ、とわかるデザインこそが商標であるといえるでしょう。
そのため、ほかの会社が出している商品に似たラベルやロゴマークを作って、あたかも本物であるかのように装って販売している商品は、商標の侵害とみなされます。
この商標の保護期間は10年で、更新することが可能です。

 

■芸術作品全般はすべて著作物とみなされる

最後に紹介する著作権は一番有名な知的財産権といえるかもしれません。
漫画や小説、映像や絵画、そして音楽などはすべて著作物とみなされています。
もっとも、この著作権の取り扱いは少々難しい分野に属します。
たとえばある有名な小説の筋書きと似た小説が発表されたとしましょう。
前者の小説の作者がそれを読んで剽窃だとして後者の作者を訴えたとします。
しかしながら、ここですぐさま権利の侵害が認められるとは限りません。
小説のようなアイデアはきわめて抽象的なものなので、似ているように見えるから即刻罰を与える、ということはできないのです。
そのため、権利を侵害されたと感じても一旦落ち着いて本当に訴えられるかどうかを慎重に見極める必要があります。
また、近年の出版業界や音楽業界においてはどうやって著作物を守るかが焦点になっています。
これまで著作物は小売店で販売され、消費者はそこから作品を買うという手段しか与えられていませんでした。
しかし、著作物のデジタル化などが進むと、漫画や音楽がインターネット上に無断でアップロードされ不特定多数の人にダウンロードされるという事態が横行するようになります。
こうした権利の侵害をいかに対策していくかは、喫緊の課題ともいえるでしょう。

 

■知的財産権を守るのもまた弁護士の仕事

たとえばお金などを盗まれた場合は、警察に行き犯人を捕まえてもらえば戻ってくるでしょう。
一方で、知的財産権は形のないものであるがゆえに、権利の侵害によって生じた損害の賠償を要求するのは大変なことです。
たとえばある特許商品を特許所有者の許可なしに販売したことで、どれだけ利益を得るチャンスが失われたかということは、一般人にはなかなか算出できません。
何よりも、一般人だけでは裁判に訴え出るのも難しいでしょう。
そうした人の助けになるのもまた弁護士の仕事です。
権利の侵害によって生じた被害がどれだけであるか、どうしたら裁判で勝訴を勝ち取れるか、といったことを専門的に考えていくことができる存在こそが弁護士といえます。
知的財産権の侵害にお悩みの方は、身近な法律事務所に相談しに行くようにしましょう。

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