コラム

遺言書が無効になるケースと注意点

■相続問題を対策する効果的な方法

遺言書を残しておくことは、相続時の揉め事を回避する効果があります。
しかし、正しい書き方を知らなかったことで、せっかく書いた遺言書が無効になってしまうケースも少なくありません。
弁護士に相談し遺言書を作成することが最も得策と言えますが、さらに事前に無効になりやすいケースを知っておくと安心です。

■遺言書の種類

遺言を残すといってもさまざまな種類があることをご存知でしょうか。
近年、故人の遺言がなかったことで兄弟や親戚で揉めるケースが増えています。
そこで相続問題の効果的な対策として挙げられるのが遺言書を作成することです。
正しい方法で法律に沿って作成することで高い効力を発揮します。
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があり、それぞれ規定には違いがあるのが特徴です。
自筆証書遺言は、最も簡単に作成することができると言われており、自署する遺言方式です。
自筆証書遺言を作成する際には、明確に相続内容を記すだけでなく作成した年月日や氏名のほか押印をします。
必ず自署で作成することが決まりとなっており、パソコンを使って作成してしまうと無効となります。
一方で公正証書遺言は、遺言者が口述し公正人が筆記する遺言方式です。
自筆証書遺言は承認が不要で検認が必要とされていますが、公正証書遺言は承認を2人用意し検認は不要といった違いがあります。
最後に秘密証書遺言は、遺言者が署名押印し封印する遺言方式です。
また、公証人が日付を記入するのも秘密証書遺言の特徴です。
秘密証書遺言は、ワープロでの代筆も可能となっています。
証人は2人以上、検認においても必要になるなど、自筆証書遺言や公正遺言証書とは大きな違いがあります。
遺言方式によって作成方法には違いがあるので、作成前にしっかり理解しておく必要があるでしょう。

■特別方式による遺言

自筆証書遺言や公正証書遺言、秘密証書遺言は普通遺言にあたりますが、一般危急時遺言や難船危急時遺言、一般隔絶地遺言など特別方式による遺言作成もあります。
これらは、普通方式とは違い特殊な遺言方法です。
疾病や死亡の危機がある中で遺言を残す方式となっており、決まった数の証人の立ち会いの下で作成するなどさまざまな決まりがあります。
特別方式による遺言は、遺言者の自署で記載されているだけでなく、立会人による署名や押印も必要です。

■日付が記載されていないなど作成された日時が特定できない場合は無効になる

自筆証書遺言で作成した際に無効になってしまうケースが増えています。
その理由として挙げられるのが、日付が記載されていない点です。
せっかく相続内容を明確に記載しているのにもかかわらず、日付を書き忘れてしまっては効力を発揮することはできません。
民法968条1項においても「自筆証書によって遺言をする際には、日付及び氏名を自書し、印を押さなければならない」と規定されています。
そのため、日付のないものは、いかなる事情があったとしても無効となってしまうのです。
基本的に遺言に記す日付は、年月日を記載しなけばいけません。
現在、日付が記載されていなったことで遺言の意味をなさなかったといったトラブルに見舞われてしまう方も少なくありません。
遺言書の効力をしっかりと発揮させるのであれば遺言を書いた日付を明確に明記しておくことが大切です。
「〇月〇日 吉日」など日付がはっきりとわからないものは無効となるため、日付は正しく表記しましょう。
特に自筆証書遺言は、作成方法に細かな決まりがあり、一つでも要件を満たしていないと無効になりやすいので注意が必要です。

■パソコンで遺言書を作成している

遺言書は、自筆で本人が作成することが一般的です。
中には、パソコンを使用して遺言を残すという方もいますが、自筆証書遺言や公正証書遺言の場合、この方法では無効となってしまいます。
たとえ、署名や印を記してあったとしても単独でパソコンにて遺言を作成してプリントアウトしたものは、遺言書と認められることはありません。
しかし、単独で遺言書を作成するのではなく、公正役場などで作成する秘密証書遺言の場合は、ワープロで打ちこんだ遺言でも効力があるとされています。
遺言書にはさまざまな種類があるので、それぞれの注意点をしっかりと把握したうえで作成するようにしましょう。

■明確な内容になっていない

せっかく遺言を残していたとしても記載内容が明確でない場合、無効となってしまうケースが多く見られます。
自身が残した遺言が効力を成すには、内容を確認したすべての人が理解できるように作成することが大切です。
ただ一言で相続内容を記載しても効力はありません。
表現が曖昧なものは、親族はもちろん、他人が読んだ際にも理解することは困難となります。
遺言書を開封した際に遺言者本人は既に亡くなられているため、相続内容を改めて確認することはできません。
遺言が曖昧である場合や不明確な場合は、効力が生じず無効になってしまう可能性もあるでしょう。
せっかく相続対策のために遺言を残したとしても内容が曖昧であったことで、残された者たちがより大きなトラブルに巻き込まれてしまったというケースも増えています。
相続人同士での揉め事をしっかりと対策したいのであれば、誰が見ても理解できるような明確な表記で作成する必要があるでしょう。

■書き間違えた際の訂正方法に不備がある

遺言書を作成する際に書き間違ってしまい、そのまま封をしてしまうと有効性はありません。
遺言を訂正するには、二重線を引けば問題はないと思う方も多いかもしれませんが、ただ二重線を引いただけでは無効になってしまうため注意が必要です。
万が一、書き間違えてしまった場合には、遺言者自身が間違った箇所を示し、その有無を追記したうえで署名しなければいけません。
また、変更した箇所には印を押すことも求められます。
加筆や修正をする際に訂正方法を一つでも間違えてしまうと無効とみなされるため、万が一、間違ってしまった際には新たに書き直したほうが安心です。
自筆証書遺言は、書き間違えてしまった時に訂正ができるのも特徴です。
一方で、公正証書遺言は訂正が認められていません。
もし、自筆証書遺言を作成する際には、形式不備などがあると無効となってしまうおそれがあるので、自筆で正しく書くほか、間違いがないよう注意することが求められます。

■遺言者本人以外の意思が入っている

遺言者自身が認知症などを患っていた場合、遺言を作成した時期によっては本人以外の意思が介入しているとみなされてしまい、無効となることもあります。
相続問題で揉める家庭が少なくありませんが、中には認知症になった親の意思に関係なく、相続人に有利な形で遺言を遺言者以外に勝手に作成されてしまうケースもあります。
万が一、認知症の親をそそのかすような形で遺言書を作成させた場合、遺言者本人には遺言能力はないと判断され無効と判断されてしまうでしょう。
親が認知症になってしまうと遺言を残すことは難しいのではないかと思う方も多いかもしれません。
しかし、認知症の状態にもよりますが、軽度であり意思疎通が図れる場合であれば弁護士立ち会いのもとで作成することや動画で記録しながら遺言書を書くという方法もあります。

■無効を阻止するには?

遺言者の意思をしっかりと相続人に伝え、適切に相続されるように正しい作成方式で遺言を残すことが大切です。
間違った方法で作成してしまうと相続人同士で揉める場合や思わぬトラブルに発展する可能性もあります。
遺言書を作成する際には、具体的にわかりやすく相続内容を表記することが欠かせません。
また、遺言執行者を指定するか付言事項なども付け加えておくと良いでしょう。
さらに日付を明記するだけでなく、契印や封印をすることも忘れてはいけません。
財産目録を作成することも有効な方法です。
財産目録とは、自身がどのような財産を所持しているのかを明確にしたものです。
自身がどのような財産を持っているのかを改めて振り返る機会にもなるでしょう。
現在、さまざまな方法で遺言を残すことができますが、どのような方式を選んだとしても細かな要件が設けられているため、専門的な知識がなければ有効性のある遺言書を作成することは難しいかもしれません。
もし、単独で作成することに不安があるなら弁護士など法律のプロの力に頼ってみると良いでしょう。
弁護士の力を借りることで確実な遺言書を作成することができます。
また、自身にとって最適な作成方式をアドバイスしてもらうことも可能です。
弁護士に依頼する際には、相続問題に詳しく、さらに遺言書の作成が得意な弁護士を選ぶと安心です。

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