コラム

財産を適正に管理・保護するための「成年後見人制度」とは?

■知っておくべき成年後見人制度

成年後見人制度は、今後のために知っておくべき制度です。
近年、この制度の利用者が増えており、それは高齢化社会ということも関係しているでしょう。
そして、今後も高齢化社会は進むとされているので、さらに重要になってくる可能性のある制度です。
今回は、この制度の詳細を説明したうえで、メリットやデメリットなどについても触れますので、ぜひ確認しておいてください。
成年後見人を決めておくことによって、本人に何らかのトラブルがあった場合の対応がとてもスムーズになることが多い魅力的な制度です。

■成年後見人制度とは

成年後見人制度とは、なんらかの理由で財産管理ができなくなってしまった人たちを救済するための制度になっています。
代表的なものに認知症などがあり、認知症によって財産管理能力がなってしまうと、時に生命に危機が及ぶこともあるのです。
そんな時は、成年後見人制度を利用して、本人の代わりに財産の管理を任せることができます。
今後は、高齢化社会がさらに進むと見られているので、その意味でもこの制度は重要になってくるのです。
また、すでに年々、使用するケースが増えており、このことからも重要度の高い制度であることがわかります。

■成年後見人制度には2つの分類がある

この制度には2つの分類があります。
一つが、法定後見と任意後見というものです。
法定後見というのは家庭裁判所が決定した成年後見人のことを指しています。
本人の財産管理能力が失われたら自動的に選出されるわけではなく、配偶者などの家族が裁判所に申し立てることによって手続きが始まるのです。
任意後見人は、本人に財産管理能力があるうちから後見人を選出しておく制度になっています。
その後、実際に財産管理能力がなくなった状況で、裁判所に申し立てることによって、手続きが開始されます。

■法定後見人になれない人

法定後見人には、なれる人となれない人がいます。
まず未成年者はなることができません。
また、家庭裁判所で解任された法定代理人や保佐人、補助人もなることができません。
さらに、破産したことのある人も、財産管理能力が不足しているとみなされるため不適格とされています。
本人に対して、訴訟をしている人も、その利害関係から不適格です。
また、訴訟をしている人の配偶者や直系の血族も同様だとみなされてしまいます。
ほかにも行方知れずの人を法定後見人にすることはできないのです。

■任意後見人になれない人

任意後見人になれない人は、基本的に法定後見人になれない人と同じような条件となっています。
それに加えて、なんらかの不正な行為が見受けられる人物は任意後見人に不適格とみなされてしまいます。

■成年後見人にできること

成年後見人にできることは非常に重要になっています。
本人の代わりに財産管理をすることになりますので責任は重大です。
また、このような目的のための制度なので、成年後見人の権利は保佐人や補助人に比べると、より大きなものになっています。
まず、本人の財産を管理して、必要な行為があれば、そのために必要な費用の支払いや契約をすることができるのです。
認知症によって成年後見人を決めた場合は、介護施設への入居を決定することもできますし、その施設に入居するための支払いも実施することができるのです。
ほかにも本人の代わりに税金を支払うこともできますし、医療費を支払うこともできます。
さらに、本人の代わりに財産の管理をするということは、本人が所持している預貯金や不動産などについての管理する権限があるということです。
預貯金や不動産のほかに、生命保険を管理する権利もあります。
また、本人の所持している財産について目録を作成して、それを裁判所に報告するといった義務もあるのです。

■成年後見人にできないこともある

成年後見人には、さまざまな決定権が与えられるので、かなり権利が広範囲に及びます。
しかし、すべての行為を代理できるというわけではなく、中には権利が与えられていない項目もあるのです。
これを知らなければ、禁止行為をしてしまいトラブルに発展することもあるので、できることとできないことを明確にしておくのも重要です。
具体的には、戸籍に関する契約についてはタッチできないことになっています。
婚姻や離婚を決定することはできませんし、養子縁組をすることも、もちろんできません。
さらに、遺言書を作成する権利も認められていないので注意しましょう。
ほかには、本人に対しての医療行為への同意も認められていないのです。
しかし、軽度の診察の場合や緊急を要するものは例外に指定されているので、すべてが禁止されているわけではありません。

■成年後見人制度のメリット

この制度のメリットは、家庭裁判所によって認められた人物が成年後見人となるので、ある程度信頼できる人物が成年後見人になるのがメリットの一つです。
本人の生命にかかわる権利を預けることになりますので、信頼できる人物が選ばれるというのは非常に重要になってきます。
また、成年後見人を決めておくことによって、本人に判断能力がなくなった場合に取引を円滑に進めることができます。
成年後見人を決めない状況で、本人の判断能力が失われてしまうと、さまざまな取引に支障を来すことになるのです。
特にお金に関する取引については難航することが多いでしょう。
そういったトラブルを未然に防ぐことができるのがこの制度のメリットの一つなのです。
また、この制度を利用している場合は、成年後見人が本人の資産をしっかりと管理しなければなりません。
そのため、いざという時にスムーズに資産を把握することができるというメリットがあります。
本人に判断能力がなくなってしまうと、いざの時に資産を十分に把握できないことも多いので、このメリットも大きいと言えるでしょう。
さらに、任意後見制度の場合は、被相続人が後見人を選べるというメリットがあるのです。
また、複数の後見人を選び、それぞれの別々の権限を与えるといった柔軟な対応をすることもできます。

■成年後見人制度のデメリット

この制度のデメリットは特にこれといったものがありません。
リスクとしては、後見人に決まった人物が不正などによってトラブルが発生するものです。
ただし、そういった不正が発生しなければ、デメリットについてはほとんどないと言っても過言ではないでしょう。

■成年後見人の報酬

成年後見人は、ある意味仕事のようなものです。
そのため、報酬を受け取ることが認められています。
しかし、家庭裁判所の判断によって受け取れるか、受け取れないかが決まるので、無制限に報酬が与えられるというわけではなく、ある程度決められた範囲の中から報酬を受け取ることができるのです。
成年後見人の報酬は、管理する財産によって違ってきます。
これについては、住んでいる地域によっても微妙に違ってきます。
具体的には、1,000万円以下の資産に対しては、月に2万円程度の報酬が一般的とされているのです。
1,000万円を超え、5,000万円以下の場合には月に3万円から4万円程度の報酬が一般的とされています。
5,000万円以上の場合には5万円から6万円くらいが適正というように、しっかりと定められているのです。
このほかに特定も認められており、財産管理が煩雑になる場合には、それに見合った報酬が上乗せされることもあります。
ほかにも親権者の間で対立があった場合に、調整が大変になるような時にも追加報酬が認められているのです。
成年後見人の報酬については、一つ注意する部分があり、それは報酬を家庭裁判所に申し立てしなければならない点です。
家族が後見人になっているような場合には、申し立てをしないことが多いので、この場合は報酬は発生しません。

■弁護士などにも依頼できる

成年後見人については、弁護士などにも依頼することができます。
弁護士などの場合、より第三者的な目線から事態を把握してくれるはずなので、信頼性が高まるでしょう。
しかし、弁護士だからといって、すぐに後見人になれるわけではなく、しっかりと家庭裁判所が判断をしたうえで決定されます。
報酬などについても裁判所が間に入ることになっているのです。

■成年後見人を裁判所に申し立てた後

成年後見人を裁判所に申し立てた後には所定の手続きが行われます。
まずは、申し立ての後に調査官による調査が行われるのです。
これは、成年後見人として適格かどうかの調査でもあります。
その後に成年後見人としての可否が決定し、通知と共に法定後見が開始されるのです。
以降は、なんらかの理由で成年後見業務が終了するまで法定後見をすることになります。

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