コラム

合弁会社のメリット・デメリット、設立手続きを解説

■さまざまな方法を使って生き残りを図る企業

日本には数えきれないほどの会社が存在します。
そのすべてが単独で経営を成り立たせているわけではありません。
この部分の事業はこの企業と提携している、あの部分の事業はあの企業と協力している、といった会社がほとんどでしょう。
ましてや、近年はグローバル化が進み、海外の企業とも競争しなくてはなりません。
そんな中で複数の会社と協力しながら経営を進めるのは、今や会社にとって当たり前の方法とも言えるのです。
そして、今回紹介する合弁会社という会社形態もその中の一つと言えるでしょう。
ニュースなどで名前は聞いたことがあるけれど、実際どんな形の会社なのかよくわからない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、会社として生き残りを図るために合弁企業を立ち上げようかと思っているが、どうやって設立したら良いかよくわからない、という方もいるはずです。
今回は合弁会社とは何か、立ち上げるメリットはどこにあるか、といったことを詳しく解説していきます。

■合弁会社とは何か?

合弁会社とは会社を立ち上げる際の出資金を複数の企業が出し合う形態のことを指します。
株式会社や有限会社のように、日本では正式な会社形態としては認められていません。
日本政府は外資系企業が日本企業を乗っ取ってしまうのを防ぐために、外国企業が100%の出資金を出して会社を設立するのを禁止しているのです。
とはいえ、外国企業にとっても日本の市場は魅力的なものです。
また、日本企業が競争力をつけるためにも外資系企業の参入を完全に禁止するわけにはいきません。
そのため、法律の抜け穴として日本企業が出資金の一部を負担しつつ、外資系企業と共に会社を立ち上げる合弁企業という会社形態が生まれるようになったのです。
基本的に合弁会社を立ち上げるにあたっては、片方の企業が50%、もう一方の企業が50%を出資金として計上するのが決まりとされています。
もっとも、近年では日本企業に比べて外資系企業の力が強くなってきているので、外資系企業が50%以上を負担することが多くなってきました。
ところで、日本では似たような言葉として合同会社というものがあります。
もっとも、合同会社には複数の企業が合同して設立する企業という意味はありません。
合同会社は社員が会社の債務に関して責任を負う範囲が限られている会社のことを指します。
くれぐれも混同しないように注意しましょう。

■合弁会社を立ち上げるメリットはどこにある?

ところで、なぜ近年合弁企業のような会社形態を取る企業が増えているのでしょうか。
メリットの一つとして、複数の企業が協力し合うことによってより大きな利益を生み出しやすくなる、ということが挙げられます。
たとえば、ある商品を製作するにあたって、ある部品を作るにあたって欠かせない特許をあの会社が持っている、という例があったとしましょう。
この場合、出資金を出し合って新しい会社を作れば双方の持つ特許を活用して新しい商品を開発することができます。
また、お互いの会社の社員が交流し合うことによって新たなアイディアが生まれる、といった側面も見逃せません。
アイディアは多くの議論を重ねることによって生み出されることが少なくないです。
その議論が一つの会社の中だけでなく、よその会社と行われるようになれば、より斬新なアイディアが生まれることは間違いないでしょう。
そのほか、お互いが持っている販路をシェアすることによってより効率的な経営を成り立たせる、ということもできます。
片方の会社は日本で営業をしており、もう一方の会社は海外で営業している、といった場合なら、こうした販路の拡大はより幅広くなるでしょう。
外資系企業が日本で事業をスタートする時、あらかじめ市場にシェアを持っている日本企業の力を借りる、というケースは少なくありません。

■リスクを軽減できるのもメリットの一つ

最近はビジネスにお金をかければかけるほど成功しやすくなる、といった世の中でもなくなってきました。
それよりも、コストを最低限に抑えつつ、事業が失敗した時のリスクに備えられるか、といったことのほうが重要になってきているのです。
その点、合弁会社は出資金を2つの企業で分け合えるので、失敗した時のリスクが少なくなります。
また、外資系企業が日本でビジネスを行う際、何かと競合他社と軋轢が生じることが少なくありません。
この業界ではこうするのが当たり前、という不文律を新規参入した外資系企業が破ってしまったら、業界内での評判は悪くなってしまうでしょう。
そうしたことを避けるために、あらかじめ日本企業にアドバイスを受けつつ事業をスタートすれば、不要な波風は立たなくなるのです。

■合弁会社を立ち上げるデメリットとは?

先ほどはメリットを中心に紹介してきました。
とはいえ、デメリットがあることも忘れてはいけません。
まず挙げられるデメリットとしては、利益をどのように配分するか、というものがあります。
たとえば出資金がお互い50%ならば話は簡単かもしれません。
ある商品を販売することによって得た利益は、半分にすれば良いでしょう。
とはいえ、そもそもその商品を開発するためには片方の企業が持っている特許が必要だった、となると話がこじれかねません。
特許を持っている方の企業が利益を多く分配されるべきだ、という話になりかねないのです。
また、利益を新しく立ち上げた合弁会社の内部留保にしておくのか、それともそれぞれの企業の内部留保とするのか、という問題もあります。
この辺りは設立する際に綿密な話し合いを行い、しっかりと契約書を策定しておく必要があるでしょう。

■合弁会社を立ち上げる必要がないケースもある?

先ほどは出資金がお互い50%でも問題は起こりうる、というケースを紹介しました。
一方で、出資金に格差があるケースでも問題は生じえます。
たとえば外資系企業が60%出資金を出し、日本企業が40%出資金を出したとしましょう。
その場合、必然的に日本企業が得られる利益は少なくなってしまいます。
そうなるとなんのために合弁会社を立ち上げたのか、と問われてしまいかねません。
単独出資は確かにリスクが避けられませんが、その分多くの利益が得られる見込みがあります。
この辺りはどちらのほうが利益を得られるか、といったことを熟慮しておく必要があるでしょう。
また、近年問題になりがちなこととして、日本企業の持つ技術が外資系企業に奪われる、ということも挙げられます。
協力する会社が信頼に値するならばともかく、そもそも合弁会社を立ち上げる目的が相手企業から技術を奪うため、といったケースも少なくありません。
事前にお互いの企業秘密を外部流出しない、という覚書を作っておく必要があります。

■合弁会社を立ち上げるにはどんな設立手続きを取る必要がある?

まず合弁会社を設立するには、パートナーとなる企業が欠かせません。
あらかじめ共に会社を立ち上げよう、という企業がいるならともかく、一からパートナーを探す場合は綿密な調査が必要となります。
以前から取引実績があり、複数の社員が向こうの企業の社員と交流がある、という場合ならスムーズに交渉が進みやすくなるでしょう。
そうでない場合、すぐに会社を立ち上げるのでなく、まず簡単な取引をしてどんな会社なのかを調査することから始めるのがおすすめです。
パートナー企業が決まったらお互いの担当者を決め、さっそく会社設立の交渉に入りましょう。
合弁会社を立ち上げるためには無数の契約書を作成しなくてはいけません。
お互いの企業がどのような目的に沿って会社を立ち上げるのか、トラブルが起こった時どういう対応をするのか、といったことは事前に決めておくべきなのです。
この段階の詰めが甘いと、いざトラブルが起こってしまった時に余計な手間が増えてしまいます。
焦らず長い期間をかけて交渉を行いながら、お互いが納得できる契約条件を模索しましょう。

■第三者の目を通すのもおすすめ

一通りパートナー企業と話し合いを行ったうえで、さまざまな事柄に関して決め事を作ることができたけれどもこれで問題がないか不安だ、という場合もあるでしょう。
その場合は経営コンサルタントなどに相談したうえで、これで問題ないかと確認してもらうべきです。
たとえば利益を分配する際、パートナー企業からは五分五分の条件でいこう、と言われていたのに、契約書を見るとそうではなかった、というケースは少なくありません。
お互い後ろ暗いところをなくすためにも第三者に相談するのはより良い経営の一歩です。
契約が一通り締結できたら後は合弁会社設立を宣言しましょう。

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