コラム

事業承継に関する基礎知識~手続きの流れ~

事業承継は、経営者が事業を後継者に引き継ぐことを意味します。
今のままでは存続が危ういと判断した際に、しかるべき手続きで未来へ事業をつなげることができます。
事業承継とはどのような手続きなのか、弁護士に依頼した際の流れについて解説します。

■事業承継とは?未来への期待と実施の難しさ

経営者が会社の事業を後継者に引き継ぐのが事業承継です。
目的は、経営者が育てた事業を後世に正しく承継し、経済を継続的に発展させることにあります。
弛まぬ努力で育ててきた事業や会社が失われてしまうことは、社会にとっても大きな痛手です。
できる限り価値を残したまま存続することができるなら、それは未来への大きな期待となるでしょう。
具体的に引き継ぐのは、培ってきた技術や設備などさまざまな会社の財産ですが、そこには人の承継も含まれます。
たとえば、経営者が独自に発展させた知識や技術などの無形財産を後継者に託すケースが人の承継です。
こうした場合、経営者自身の個性が会社そのものであることも多いため、無形財産の承継は簡単ではありません。
事業を継続するためには、知識や経験などのノウハウのほか、人脈や経営方針、会社の価値観などもしっかりと承継される必要があります。
重要なのは後継者選びであり、スキルだけでなく資質やマインドなども承継することが重要なポイントといえるでしょう。
一方で有形財産を承継するのは法的な手続きのみといえます。
ただ中小企業の場合、経営者個人の資産がかなり事業に投入されていることが少なくありません。
自社株式や土地などの不動産を個人資産の所有権と経営権とで分離するのが法的にも難題になりがちです。
もし遺産相続や財産分与なども起こる場合、後継者以外への資産分散を防ぐ法的な手立てが必須となります。
事業承継で重要なのは後継者選びですが、それだけでなく整理すべきたくさんの問題を抱えることが大半なため、リスクを回避するために早い段階から弁護士など専門家への相談が欠かせません。

■事業承継をスムーズに進めるための流れ

後継者への事業承継を成功させるため、踏むべき手順をまとめておきましょう。
まず大前提として事業承継計画の立案が必要ですので、第三者にもわかるよう計画を立てておきましょう。
そこに後継者の教育方法や時期も明記しておくことも大切です。

1.後継者の発掘

後継者は多くの場合、経営者の親族や信頼できる従業員などから選ばれますが、そうした選択肢がない場合は外部から信頼できる人を招き入れることもできます。
また、中小企業基盤整備機構や商工会議所から支援を受けることもできます。
各都道府県の中小企業基盤整備機構には事業引継ぎ相談窓口が設置されていますし、商工会議所では起業したい人や企業とのマッチングを行っていますので利用すると良いでしょう。

2.自社株の集約と分散阻止

後継者による安定的な運営を確立するため、自社株の買い取りなどで経営権を集約させます。
役員や従業員などに株式が分散している場合もありますが、可能な限り買い取って経営者に集約させるのが一般的でしょう。
経営支配権を確保できれば、将来的な経営に障害が生じるリスクを下げる期待があります。
後継者自身もしくは会社が自社株式を買い取る方法のほか、新株を発行して後継者に割り当てる方法があります。
株式分散阻止の方策としては、生前贈与や相続時精算課税制度などの活用のほか、会社法の活用も可能です。
定款を変更し株式の譲渡制限規定を置くなどの対策を打つことで、第三者へ経営権が移ることを抑制できます。

3. 後継者の資金的負担軽減

経営承継円滑化法に則り、手続きをすることで非上場株式に係る相続税・贈与税の納税が猶予されます。
生前贈与された自社株式を遺留分から除外する除外特例や生前贈与された自社株式の評価額を固定する固定特例などの制度もありますので、これらをフル活用して後継者の資金的負担を減らすことも重要です。
前項で後継者自身が株式を買い取る方法を挙げましたが、経営支配権を確実にするのにはやはり新株発行より個人による買取のほうが高い効果を発揮します。
ただそうした資金的負担が原因で後継者が潰れてしまうようでは本末転倒ですので、こうした制度を検討し、金利や期間も考慮したうえで対処しましょう。
税額は承継する規模にもよりますが、数百万円から数千万円もの支払いが課されるケースも少なくありません。
いずれにしても、こうした方策も含め、法的専門家のアドバイスを受けて十分検討をすることが重要です。

■後継者の有無で未来は変わる

後継者が見つからない場合、M&Aという選択肢もあります。
この場合は他社に買収される形になるため、廃業は防ぐことはできますが経営権は売却することになります。
事業承継は可能ですが、後継者への引き継ぎとは考え方が大きく異なりますのでそこは注意しましょう。
ただ会社を売却することでまとまった金額を取得し、引退して生活費を確保したいと考えるならM&Aは適しています。
M&Aと後継者への事業承継とでは手続きが大幅に変わりますので、あらかじめ認識が必要です。
後継者の育成内容は事業によって異なりますが、一般的に育成期間は最低でも3~5年、長い場合は10年ほどもかかると言われます。
理想的な事業承継を成功させるためには最も時間のかかるプロセスですから、引き継ぐことを考えはじめた段階で、早くからしっかりと未来への道は考えておくべきでしょう。
顧問弁護士契約をしているなら、早くから相談しておくことも有効です。

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